村営浴場
その提案に文句もなく、半時後、タマキちゃんとミサトちゃんの3人で大浴場へ。
村の宿泊者ということで、何かと優遇してくれる。有難いことです。
タマキちゃんは、服を脱ぐやそのまま駆け出し湯殿に入ろうとする。
「タマキ、掛け湯が先でしょ!」
怒鳴りながらタマキちゃんが脱いだものを片づけるミサトちゃん。その迫力にタマキちゃんも思わず掛け湯をする。うんうん、君はいいお姉さんだね。
夜間は男女別になっているが、今の時間は混浴。どうせ年寄りばかりと思っていたら、何やら若い人もいる。何気に視線を送ると慌てて出ていく。その後ろ姿に刀傷の跡が・・・、悪いことしちゃったかな、ごめんなさい!
隅の方で掛け湯をして、湯殿にそっと浸かる。とろりとしたお湯は透明で、心と体の傷を癒してくれそうだ。
「ん~、まさに極楽!」
しばらく堪能しているとミサトちゃんが近づいてきた。
「いい温泉でしょ。ここ結構評判いいよ」
「うん、素敵ね。遠くから来たかいがあったわ」
こん素敵な場所に巡り合えたということは・・・一応幸せってことかしら。
湯殿に深く浸かり、体が緩む感覚を味わう。
「姉様、見っけ!」
振り向くと、腰に手を当て仁王立ちのタマキちゃんが・・・ってあれ。
「あの~、もしかしてタマキちゃんって男の子?」
「「・・・・・」」
「んあ~、ちょっと事情がありまして。タマキには女の子のカッコをさせておけ、という決まりが・・・」
あわてて、言い訳をするミサトちゃん。
「べー、タマキは女の子だもん!それに、姉様みたいに毛深くないし」
「ば、バカー!」
そっか、タマキちゃんはこの年で女装子に目覚めたのね。うんうん、お姉さんは全力応援だわ。
一方、涙目のミサトちゃんは、真っ赤になってなかなか湯殿からあがろうとしませんでした。
脱衣所で、飲み物を片手に一服しているとおばさん連中から声をかけられた。
「あんた、ここ初めてかい?湯治?ああ、ここのお湯はいいよ、何にでも効くって話さ。私も膝が痛くなる度通ってねえ、旦那?さあ?あははは(笑) あんた仕事は何だい?え?歯科医衛生士?へ~、たいしたものだね、今度時間があったら、私も見ておくれよ。」
ラシルさんの仕事は、歯科衛生士!それを聞いたミサトちゃんの口からふっふっと怪しい笑い声が聞こえました。ミサトちゃん、お主も悪よのお!
ミサトちゃんもラシルちゃんも10歳。難しいお年頃です。次回はラシルさんお仕事無双の予定。