出会い2(改)
「ありがとう、でも迷惑じゃない?」
そう尋ねると、タマキちゃんがあっけらかんと答える。
「お家は、街道沿いの宿屋なの!」
「あ~そっか。う~ん・・・」
「ちょっと! タマキいい加減に・・・」
ミサトちゃんは、慌ててタマキちゃんを諫めるが、話が進んで行く。
「じゃあ、決まり。母様のご飯おいしいよ」
「あはは、じゃあ、お部屋が空いていたらお願い」
「もう、勝手に決めて。すみません、ご迷惑でなかったですか?」
ミサトちゃんは、済まなそうにこちらを見る。
(母様、姉様か。良家のお嬢様かな。だったら宿もそんなにひどくないよね)
その時、「キーキー」と鳴き声が辺りに響く。
「猿王キター!」
「?」
次の瞬間、後ろから声がする。
「お嬢、参上しました」
振り返ると、茂みから大きな猿が現れ微笑んでいる。深い色の目、でもどう見ても猿。3度びっくり。
「猿王、その人ラシルさん、家に泊まるお客さんだよ。へんなにおいしないの」
再度、クンクン。多分大丈夫だけど。
「そうですか。猿王といいます。よろしく。ところで、お嬢。大物を仕留めましたな」
「えっとね、タマキが誘導して、姉様が捕まえたの」
タマキちゃんはご満悦だ。
「危なくなかったですか? こいつはなかなかお目にかかれない代物ですよ」
猿王と呼ばれたそれは子供たちに笑顔で答え、網にからめとられた虎の前へ。
慣れた手つきで前後の足を縛りあげ、下あごを押し下げ白い玉を口に放り込む。頭から大きな袋をかぶせ、さらにロープで縛り担ぎ上げる。子供たちは、身支度を始めた。
(長い手、それに猿って笑うのね、っていうか猿が喋る?)
「ラシルさん、私たちこれから家に戻ります。宿までご案内しますよ」
ミサトちゃんにそう言われ、気を取り直し一行について行く。
ここが街道に出る近道と言われ森に入る。踏み固められた獣道。これなら、意外と楽に街道まで出られるかな? 女性3人の他愛もないお喋りに加わらず、黙々と先頭を歩く猿王。背中の荷物はさっきの虎だよね。
「あの~、お二人が仕留めた虎ですけど、私初めて見ました。あんなすごい牙」
「ん~、確かに滅多に出会わないけど珍しいのかな? よくわからないです」
ミサトちゃんは、こちらをちらりと振り返りながらそう答える。
「あのね、もっと珍しい動物いっぱいいるよ、陸クジラとか、ドラゴンもどきとか」
タマキちゃんは、獣道を進む私たちの周りをくるくる回りながら進んでいく。
「え? 陸クジラ? ドラゴンもどき?」
私、ラシルとミサトちゃん&タマキちゃんのからみが続きます。もうしばらくお付き合いください。