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嫌い

作者: 池田

 僕は嫌われている。

 それを実感したのはかなり最近であった。

 

 確かあれは2日前だったと思う。


 6月12日金曜日

 今日は金曜日ということもあり6時間目の授業が終わった途端に「終わった~」「やっと帰れる」などと皆の口から気の抜けた、そして楽し気な声が漏れる。

 対して僕は淡々と帰り支度をすませSHRまでの時間を本を読んで待つ。これは入学してからのルーティンなのだが、周りの人達の騒音のせいであまり集中できない。

 しばらくすると担任の少し小太りのおばさん先生が教室に入って来て「はい静かに~」と柔らかな口調で言うが一回目の呼びかけでは騒音は止まない。二回目でもまだ止まない。三回目にしてようやく騒音は徐々に消えていき、担任の先生が入って来てから約2分後にようやくSHRが始まった。

 SHRが終わった瞬間に教室を後にする。今週は掃除の当番が無い為廊下を小走りで下駄箱に向かい、靴を取り出している最中に本を自分の机の中に忘れた事を思い出した。

 少し悩んで今日が金曜日ということもあったため取りに戻ることにした。

 下駄箱に向う速度より少し遅い速度で教室の前まで来たところで足を止める。

 丁度掃除が終わったらしく”彼ら”は教室の真ん中で会話をしていた。”彼ら”はこちらに気付いた様子もなく会話をし続け僕が教室に入ろうとした瞬間「あいつマジできもいよな」そこで僕はその発せられた言葉に体が急に動かなくなった。

 その話がまだ僕であるという確証はないのだが”彼ら”が話しているのは僕なのではないかと不安に包まれるになる。すると”彼ら”は続けて「あいつだろ?あのくそ陰キャ」「あいつ絶対やばいだろwwww」その言葉を聞いた瞬間「これは僕のことなんだなと」確信する。

 ”彼ら”、いわゆる陽キャというものはどうやら自分と対をなす存在、陰キャが嫌いらしい。

 多分だが、陽キャが陰キャを嫌いな理由は明確ではなく”なんとなく”なのであろう。陽キャは陰キャがそこにいるだけで不快になるのだろう。だって実際には何もしていない。


 ただそこにいただけ。


 そんな分かり切ったことを考えていたら、さっきの言葉のダメージが遅れてやってきて、胸がズキズキと痛む。自分自身では大丈夫だと思っていたのだが、案外他人に悪口を言われ嫌われるというのも辛く、苦しいものだなと思う。

 友達だって少しでいいと思っていたし、何ならいらないとまで思っていた。「人は一人で生きて一人で死んでいく」こうやって割り切ってしまえば何だかどうでもよくなっていく。

 そして本なんかもどうでもよくなって踵を返す。


 そして静かな廊下でもう一度実感する。


 僕は嫌われている。




 


 

 




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