第一章 激動の始まり その1
初めての投稿ですので温かい目で見てくださると嬉しいです。
太古の昔 大陸は5つの大国に分かれ それぞれが善政を敷いていた
しかし光があれば影があるように 水面下では混沌が蔓延っていた
この物語は激動の時代を生きた名もなき戦士たちの物語である
<カルドニア王国>
この国は5大国の中でも随一の経済力、軍事力を誇り、対等関係である5大国のまとめ役でもあった。
そして今日、カルドニア王国では国王クルペが王子タシュケントに王位を譲る日である。
この晴れがましい日に各国からは国王一族が王城に来賓し、カルドニア国民も王城に詰めかけていた。
<カルドニア王国 王城 玉座の間 王位譲渡の儀式直前>
玉座の間には、国王、王子、そして国王の護衛2人がいた。
護衛の片方、筋骨隆々な壮年の男は名をガウスと言い、国王直属の軍団「王の刃」の軍団長である。もう一方、小柄で歳の若い男は名をハンスと言い、「王の刃」の副軍団長である。
玉座の間に2人の男がやって来た。1人は国王クルペの子にして王子タシュケントの兄スタイン、もう1人はその側近タリスである。
「ご機嫌麗しゅうございます、父上。」
スタインは丁重に挨拶をし、笑みを浮かべて、
「父上、儀式にはまだ時間がございます。久々にチェスでもいかがですかな。」
といった。国王はうむと頷き、ガウスに、
「チェス盤をここへ。」
と指示したが、すかさずスタインが
「父上の部屋で良いではないですか。」
といった。国王は一瞬躊躇いを見せたが、
「では、そうしよう。」
と言い、自室へと向かっていった。
その姿を見ながらスタインは弟タシュケントに、お前もどうだと声をかけ、有無を言わさず連れていってしまった。
暫くして、国王たちが戻ってこないことにしびれを切らしたガウスは呼び出そうと国王の部屋に向かっていった。玉座の間にはハンスとタリスだけが残っている。タリスはハンスに不敵な笑みを浮かべて、
「大変でしょうなぁ。国王の護衛は。」
「いえ、さほどは…。」
ハンスは苦笑いした。
「しかし、これからはあなたも楽でしょう。ねぇ。」
「国王が変ろうとも私の役目はかわりませんから…。」
タリスは高笑いをして、
「何を仰る!もう王はいないではないか!」
「?」
タリスは鈴を取り出し鳴らした。するとどこからともなく鎧を身に纏った騎士たちが数人現れ、ハンスを囲んだ。ハンスは剣の柄に手をかけ、
「なんの真似です?」
「反乱ですよぉ。スタイン王子によるねぇ。」
タリスは悪魔のような笑みを浮かべた。玉座の間にスタインが走ってやってきた。
「ガウスが王と王子を連れて逃げた、我々も追うぞ!」
スタインとタリスは中庭に向かって行こうとしている。
「待てっ!」
そうハンスが言った瞬間、周りの騎士が一斉に剣を振り下ろした。
ハンスはそれを盾で防ぎ、剣を抜き目の前の騎士の喉元を突いた。
そしてすかさず剣を手放し脇に差している短剣を抜き隣の騎士の腹へ刺した。一瞬の出来事である。
ハンスの囲いが崩れ、残りは3人となった。1人はハンスの腹を刺そうとし、2人は脳天めがけて剣を振り下ろした。しかし、目にも留まらぬ速さで避けられ、また1人喉元を突かれた。残り2人。流石にまずいと思ったのか、騎士2人は守りの態勢をとった。ハンスは攻撃が止んだと気づいたや否や、騎士2人に背を向け中庭に走り出していった。
中庭ではすでにカルドニア国軍と反乱軍とが争っていた。あちこちで悲鳴が聞こえ、地獄の様相と化していた。中庭に出てきたハンスは大声で国王を呼ぶがその声は悲鳴でかき消された。一瞬国王らしき人影が見えた。その人影を追おうとすると、突然自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。その声の方を向くと、タリスがいた。何か本を持っている。それを見た途端、ハンスは足が重くなるのを感じた。
足を見てみると、なんと足先が石になっているではないか。
「タリスゥ!貴様ぁ!」
そう叫んでいる間にも太もも、腰、腹と段々体が石になってきた。
そしてついに体全身が石となってしまった。ハンスの意識は薄れ、深い眠りについた。