表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

何気ない日常の一コマ

なんてことのない日常。


いつも通り友人たちとバカやって、適切という意味のほうの適当で授業を受け、よく食べよく遊びよく眠る。

なんて平和で、素晴らしく平々凡々な毎日。


でも彼女はいない、作る予定はない、そもそもモテない、できる気がしない、ないないななない。容姿は決して問題があるわけではなく、「普通のイケメン」と人には言われる。整った顔立ちに女に生まれたら整形の必要がなかったとか言われてる二重の瞼、瞳の色はこげ茶に近い黒。まあ、それらすべてを台無しにするほど中身に問題があるってことはばっちり把握している。


「爆発しろリア充!」


意味もなく叫び、叫べど叫べどわが暮らし変わらざれり。じっと右手を見る。


自己紹介をしようか。

僕の名前は黎明 来星。読みはレイメイ・ライセイ。ボッチではないが友達が多いわけでもない、身長は173㎝、体重51㎏っていうのはこの前の健康診断で分かった。前と比べてちょっと太ったかもしれないけど、体形は中肉中背から変わってないからセーフだと思う。

割とどうでもいいことを話したな。従兄弟に同い年で弟分の黎明 望(れいめい のぞみ)がいるが、あいつは元気でやっているだろうか。


なんで急に自己紹介を始めたかって?それは・・・今日から高校生だからだ。高校1年、誕生日は夏だから年齢をわざわざ言う必要はないだろう。同じ高校に進学した友人たちとのバカ騒ぎもしばらくお預けだ。

おっと、もう少し急がないと始業式に遅刻する、ここからは速足で行こう。自慢じゃないが体力は並の帰宅部よりはあるつもりだ。運動部には負けるけどな!帰宅部だからな。


少しだけ上がった息を整えつつ、上履きに履き替え・・・あれ?上靴どこやった?鞄の中にない、靴箱の中にはあるわけがない、左手に‥あった。ビニール袋に入れて手に持ってきていたんだった。入学早々やらかしたかと思った、危ない危ない。

周りから聞こえる笑い声はきっと僕を嘲っているものじゃない、そう信じたい。


エヘンエッヘン、気を取り直して大階段へ行こう、1-3教室は2階だから一つ上らなくてはならない。パルクールで2階の窓からダイナミック登校して、案の定事故って病院送りになる馬鹿がいるらしいが、普通に1段ずつ階段を上っていればそんなことにはならないってやばい新品の上履きが滑るのおおお!?

ふう。

間一髪で手すりにつかまって事なきを得た。


察してくれた方も多いと思うが、普段の僕はポンコツだ。「やるべき時にはちゃんと動けるのだが、それ以外の時の様子で全部台無し」旧友談。否定できないのが悲しい。


とにかく教室について、まずやることは。なんだろう。


待て待て待て、あるだろ自己紹介とか・・・そういう空気でもないのに一人話し始めたりなんてしたら事故紹介、初日に大事故やらかした様子を実況する羽目になるから却下。本を読むにも家に忘れていることが鞄を漁ったときに判明。・・・そうだ同じ中学だった奴を探そう。良くも悪くも変わったやつばっかだったからなあ、天才から問題児まで生徒一人一人のキャラ?人柄?がとにかく濃かったんだあの学校。何なら全員覚えてるまである。


いたいた、中臣 美伽(なかとみ みか)さん。通称イカちゃん。イカが大好きで休み時間になると口の端からよくイカの足が見えてることがあって、いつも鞄にさきいかと駄菓子のイカソーメンがあることで有名だった。高校になってから給食がなくなり弁当になるが、イカと大根の煮物とか北海道は函館名物いかめし、イカ焼きのうちどれか一つは持ってきているはずだ。

「!」

口をむぐむぐ動かしながらこっちにアイコンタクトを飛ばしてきた。

(一ついる?)

(今はいい、後でな)

(分かった)

(・・・)

((イカおいしい))

((こいつ、直接脳内に・・・!))


くだらないやり取りをしてふざけあい、イカ料理を交換するくらいの仲ではある。

ちなみにだが友達にしかイカをあげるなんてことはしないらしく、僕以外の男子がイカをもらっているのを見たことがない。一応海産物系全般行ける海野って漁師の家の奴が話しかけていたが、怒涛のイカトークを前についていけず、すごすごと退散していった。そんなことがあった。他校のヤンキーが殴り込んできたときにイカを奪おうとして返り討ちにあったという伝説もある。

イカがゲシュタルト崩壊してきた、ほかの人を探そう。



一番の友と目が合った。軽く手を振って声が通らないざわざわの中communicationを取る。下田 空也(しもだ くうや)、悪友?親友?親友だな。ニックネームはソラ、基本的にいいやつだ。たまに悪乗りしてはっちゃけるし、言動の一部がシャレにならないブラックジョークだったりするけど、一緒になってやれ地球の滅ぼし方だのやれ学校のシステムハッキングだのいろいろ口を出してる僕も僕だからね。こと化学に関しては天才だ。だからこそ冗談の内容にリアリティーが出て先生に目を付けられるんだが。

ちなみにリア充。爆ぜろ!とトリニトロトルエンを合成しかけたけど設備が整う前に破局したらしい。命拾いしたな、ソラ。



あともう一人、バカ騒ぎする友人がいた。体育会系のお祭り好きかと思いきや中間でいっつも上位にいる、円刃 鋼輝(えんじん こうき)。あだ名はコウ。ちょっと席が遠いのと周りに人だかりができていて話しかけられそうにもないんでどうしようもないな、仕方ないソラとしゃべるか。


「おいライセ、放課後、鋼来之空(こうらいのそら)で集合な!」

ちなみにライセは僕のあだ名で、鋼来之空は僕らで立ち上げたネットゲームのギルド本部である。別ゲームのフレンドに外山 健一、ゲームネームKen101、ケンを加えて端末の都合でできないソラを外したのが“来世の貢献”というクランがあったりするがこの名前、変えてもいいよな?


「おう、今日は大漁だといいな。」

これは水系列のクエストに挑むときの合言葉。ほかにも「TAKEOFF(テイクオフ)FULL(フル)THROTTLE!(スロットル)」なら空系クエ、「竜を狩るものの出番だな。」ならドラ〇エ。おい待て最後別ゲー入ってたぞ!?


しばらくゲーム談議で盛り上がったが、先生が来たのでお開きとなった。足音が二人分廊下から近づいてくる。


二人分?そんなわけないだろう。研修生だろうか?なんだか嫌な予感がするが・・・

「こんにちは~はじめましての人には初めまして。千歳 琥珀(ちとせ こはく)といいます!研修1年生、初めて同士よろしくお願いします!」


「千歳先生!その言い方は誤解を招くと思います!!」

あ、言っちゃったよ。ってコウ!?ま た お 前 か。前にもこんなことはあったんだよ。。

「・・・」

こてんと首をかしげたと思いきやみるみるうちに顔がリンゴみたいに赤くなっていく。年上なのに第一印象が“可愛い”でいいのだろうか?

実は、この人と僕の間には面識がある。近所に住んでた面倒見のいいお姉さんだ。大学生あたりなのは知っていたが、教職を目指していたとは知らなかった。ただ、僕のほうを見て時折チロリと舌を出すのはやめてほしい、反応に困る。端的に言うとエロい。あとそのたびに背筋に悪寒が走るんだが、何でだろう。


いろいろあったが恙無く・・・つつがなく?入学式は終わった。

~回想~

ソラ!こっち見て体育館の爆破に必要な火薬の量計算するのやめなさい!そっぽ向いてても手元で何やらメモしてるのはわかってるんだから!!・・・後でシュミュレーション結果見せてくれ。


イカちゃん!今後ろに隠したのイカソーメンだよね?休み時間に好きなだけ・・・いや適量食っていいから!食ってい()()ら?やかましいわ!

~~

ま、まあいい。

何時も通りバカやって騒いだだけだ。今更気にすることでもないだろう。

HRで委員と当番、日直のまわり方などを決めて一日が終わった。

そのまま帰宅部の名と意地と誇りにかけて直帰して、友人たちとゲームでもうひと騒ぎしよう。


――――その日、鋼来之空は様々な記録を樹立し四月の空、鋼来の春などの異名がついたこと、そして明日以降ぱたりと(・・・・・・・・)音沙汰がなくなって(・・・・・・・・・)都市伝説と化すことを僕たちはまだ知らない――――


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ