a new encounter
こんばんは、神崎です。
夜がいつか明けるように、この七夕のお話もそろそろ終盤に差し掛かっています。
最後まであと少し、お付き合いください。
「紗菜……?」
どこに行ったの? 探してみても、辺りに紗菜の気配はない。ただ、涼しい夜風がざわざわ木々を騒がせているだけ。声も聞こえなければ、息遣いすら耳には届かない。
「紗菜? ねぇ、紗菜! どこ行ったの、ねぇ!」
呼んでも、紗菜が答えを返してくれることはなかった。
ただ星空がとても綺麗で、急に寂しさを感じるような輝きを見せているだけだった。
「紗菜? ねぇ、いたずらとかそういうのいいから! そういうの笑えないからさ、ねぇ、もう出てきてよ! こんなところに置いてかれたら怖いし、寂しいし……っ、わたしがそういうの嫌いなの知ってるでしょ!?」
………………………………。
何も聞こえてこない。
こういういたずらをするときって、隠れて様子とか見てるよね?
ねぇ、いないの?
「まさか……っ!」
展望台から落ちたの、まさか、今の風で落ちたとか!? 下を覗いても、夜の街並みが見えるだけ。それに、あんまり明かりも少ない辺りだから、紗菜の姿はやっぱり見えない。
「紗菜! 紗菜!? ねぇ、返事してよ、出てきてよ、紗菜! 紗菜ぁ……っ!」
辺りからは、何も返ってこない。
涙まで滲んでくる。心細いし、信じられないような気持ちになってくる。どういうこと? 展望台から落ちたの? 帰ったの? それとも、まだ隠れてるの? だとしたら何で?
いくら考えたって、答えなんて出てこない。
頭がグルグル回って、痛くなってくるくらい。
紗菜、ほんとにどうしたの……?
立っていることもできなくなってきて、思わずその場にしゃがみこんでしまう。やっと足音が聞こえてきたのは、そんなときだった。
「あのー、大丈夫ですか~? あれ、星音ちゃん?」
「えっ、」
歩いてきたのは、モデルさんみたいにスラッとした細身の長身が綺麗に見える女の子。でも、どこかで見覚えがあるような……、ん?
「もしかして、由奈ちゃん?」
「久しぶり、星音ちゃん! 戻ってきてたんだね!」
笑った顔が少し幼く見えるその子は、中川 由奈ちゃん。
3つ離れた、紗菜の妹だった。