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星を見つめる空に  作者: 神崎 漓莉
8/13

against dawn

こんばんは、神崎です。

今週も、七夕のお話です。夏がそろそろ終わろうとしていますね。夜は少しだけ涼しいです。


よろしくお願いしますっ!

 紗菜(さな)の周り数センチの範囲に、薄くて柔らかい――あることなんてわからないくらいなのに破れない膜みたいなものがあるような気がした。


 たぶん、そういうものを作った中には、わたしもいる。


 紗菜の心に()いた穴を埋めたものは、何だったんだろう?

 それともまだ、わたしなんかじゃ埋められないほど大きく穴が空いてるの?

 だけど、それでも、今わたしは紗菜の前にいるんだよ?

 手が届くところにいて、こうして抱き締めていられるくらい近くに。


 そう言ってもきっと、説得力がないのはわかってる。わかってるけど……っ! 気持ちをどうやって伝えたらいいのかわからなくて、だから。


星音(せいね)、ちょっと痛いかも」

「えっ!? あっ、そっかごめんね!?」


 思わず、強く抱き締め過ぎてしまっていた。本当に、少し痛そうに顔を歪めてしまっている。あぁ、やっちゃったかな……。

 平気だよ、と言いながら軽く微笑みながら、紗菜は小さく「ありがとう」と返してくれた。それから、小さな声で話し始める。


「私はね、今こうやって星音が帰ってきてくれて、本当に嬉しかったよ? こんな風に一緒に話していられるのも、たぶんこの1年半の中で、いちばん楽しいの。

 ……七夕の夜ってさ、離れたひとたちがこうやって巡り逢える日なんだね。あの頃はただの綺麗なお話だって思ってたけど、今ならわかるよ。カササギの橋の上で逢えた彦星さまと織姫さまは、きっとこんな気持ちだったんだな、って。

 いつか、言ってたよね? 七夕の日に逢えた彦星さまと織姫さまがどんな顔をするのか、見てみたいって。そんな星音のことが可愛いな、って思ってたけど……。それって、きっとこんな顔なんだと思う」


 そう言って笑った紗菜の顔は、とても綺麗で。

 夜の木々を揺らすように、強い風が吹いた。


 一瞬だけ閉じた目を開けると、そこには誰もいなかった。

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