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星を見つめる空に  作者: 神崎 漓莉
7/13

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こんばんは、神崎です。

新しい話の公開です! 七夕の夜は、更けていきます。


よろしくお願いします。

「今までなら当たり前だったんだよね、こうやって話したり、こうやって触れたり。もし今日そんな気分じゃなかったら明日にすればいいや――なんてことだってできたのに」

「…………うん、」


 星に見下ろされた展望台で、景色なんて見ることすらせずにわたしたちは抱き合っていた。夏の蒸し暑い夜だから、できるだけ身体を夜風で冷ましたいと思っていたのに、たぶんそれはお互いに同じはずなのに。

 それでも、わたしたちは互いに離れることなんて考えられなかった。

 だって、こうしていられる時間は当たり前(・・・・)じゃない。


 七夕が土曜日だからこうして帰ってこられた。

 でも、月曜日にはまた、いつもの日常が始まることになる。


 紗菜(さな)はこの街で。

 わたしは上京先(むこう)で。


 遠く離れた毎日を送ることになってしまう。

 もちろん、それを選んだのはわたしだ。

 それを伝えたとき、勝手に引き止められることを期待した。笑顔で見送られたことが、痛かった。今となってはそれが本当に笑顔だったかもわからない。けど、その痛みがわたしをずっと遠ざけていた。

 もし、またいま伝えたらどうなるんだろう?

 お互いわかりきっていることだとはわかっているけれど、言いたくなった。きっと、それでやり直しにはならないけど、意味はないけれど。

 あの頃ほしかったものをほしいわけでもないし、そんなの今更だ。


 それでも。

 どういう意味があるとかじゃなくて、言いたくなったから。


「あのさ、紗菜」

「ん、」

「わたしさ、明日には帰るんだよ、向こうに」

「……そっか」

「うん」

「そうだよね」

「そうだよ」

「……うん」


 紗菜は、わたしの腕の中で何度か頷いた。

 …………別に、引き留めてほしかった訳じゃない。だって、今そんなことされたって、もうわたしには向こうでの生活がある。それを崩すことだってできない。

 それでも、まだわたしは大人になりきれていないみたいだった。


「――――っ、星音(せいね)、痛いよ?」

「痛くしてるから」


 腕の中で苦しそうな声を上げる紗菜に、今度ははっきり言う。

「は、」

「今『離れたくない』って言ってくれても、今更なんだよ、星音?」


 その言葉は、重くのし掛かった。

 こんなに身体はくっついているのに、まるで空気が違うみたいに、壁みたいなものを感じる、嫌な重さだった。

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