starry view
こんばんは、神崎です。
毎週土曜日はりりの七夕祭り……ということで、その話はもう少し続きます。
よろしくお願いします。
「わぁ……、」
「なんか、久しぶりでしょ。随分前から来なくなってたもんね、星音は」
展望台から見下ろす町並みは、夜だからということもあるんだろうけど、子どもの頃に見ていた景色とあまり変わっていないように見えた。強いていうなら、ちょっとだけ夜が明るくなったのかな?
ちょっとだけ誇らしげに展望台からの景色を見せてくれる紗菜。何だかその嬉しそうな様子の方に目がいっちゃうんだけど……。
でも。ん?
「紗菜こそ、あんまりここ来てなくなかった? ていうか、たぶん来なくなったのって紗菜の方が先だったような気がするんだけど……」
「子どもだった頃はね~。だって、ここから見られる景色っていつも一緒でさ、なんかつまんないな、とか思っちゃってたし」
「ふぅ~ん……」
考えてみると、紗菜は昔からそういうところがあった。
わたしにはべったり甘えてきていたけど、それ以外のところでは妙に冷めたところがあったというか、感動が薄い子どもだったというか。わたしと一緒に食べたシュークリームとかはおいしいおいしいって太陽みたいに笑ってたけど……。
ん、紗菜ってわたしと一緒のとき以外笑ってたっけ?
そんなことを思ってしまうくらい、紗菜の感動には差があったような気がする。たぶん、今がちょうどよく中和されているような状態なんだと思う。
「でもね、最近はよく来てるんだよ?」
「えっ?」
ふっ、と。
夜風に溶けてしまうくらい静かに落とされた紗菜の声に、何故か身構えてしまう。
「だって、ここに来るとさ。いろんなこと思い出せるから」
「いろんなこと?」
「うん、星音と一緒によく来てたときのこととか、ここ以外のことでもさ、いろんなこと、思い出せるんだぁ。孤独な日々を過ごす紗菜ちゃんには、最高の癒しだったりしてたんだよ?」
一瞬、返す言葉に困る。
言葉の外に、この1年半の、“わたしの知らない紗菜”が見えてしまいそうになったから。
待ってよ、やめてよ。
まだそんなの見る余裕ないよ。
心の準備をさせて。
そんな甘えた言葉が、口から漏れそうになる。
「でね、思い出すんだ」
「え、」
「後悔してることとかも、ね」
七夕祭りの熱がまだ残る、夜の街を見下ろす展望台の上で。
にっこりと笑ってみせた紗菜の顔は、寂しげで切なげで、わたしは心を奪われた。