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星を見つめる空に  作者: 神崎 漓莉
4/13

our roundabout way

こんばんは、神崎です。

今回は時間通りに投稿できました!(*´▽`*)

もう8月ですが、星音たちの七夕はもうちょっとだけ続きます!

「ねぇねぇ星音(せいね)、なんて書いたの?」

「うーん、内緒」

「え~? そう言われちゃうと気になるなぁ~」

「そんなに? じゃあ、明日になったら言うよ」

「おー、じゃあ楽しみにしとこうかな!」


 さすがに、書いてすぐにお願い事の内容を言ってしまうのは何か違うような気がしたし、たぶん紗菜(さな)はわたしの気持ちまで察してしまうに違いない。それできっと、「ふふふー、そんな風に言ってくれるなんて嬉しいなぁ~♪」なんて言うんだ。

 それが何となく恥ずかしかった。

 だから、明日まで待ってほしいな、なんて思った。

 短冊を笹にかけて、まだ少しだけ残っていた屋台で1匹の金魚を(すく)って、わたしたちの七夕祭りは終わった。最後にちょっとお酒が入っていそうな地区会長さんが閉会の挨拶をするのを聞いて、その帰り道のどこか賑わいと熱の残った静けさに心が落ち着かないような感じになって。


 まだ蝉の声がそこかしこから聞こえる、細い夜道。

 白い電灯には、明かりに誘われた羽虫が集まってはジジッ、と音を立てている。遠くから聞こえる数人の集団の笑い声よりもそっちの方が耳についた。


「ねぇ、紗菜」

「ん?」

「ちょっとだけ遠回りして帰りたい」

「いいよ」


 何だろう。

 今日の――久しぶりに会った紗菜に、わたしずっと甘えっぱなしのような気がする。それはわかっているけど、あの頃より大人っぽくなったその笑顔に、つい無防備になってしまって。

 つい、言わずにおこうと思っていたことを言いたくなってしまう。

 たとえば、今言ったみたいなことだって、いくら甘えていたと言っても、ここを離れる前のわたしならきっと言わなかったと思う。何となく、特に理由はないけど、紗菜の面倒を見る(・・・・・・・・)わたし(・・・)というのが、わたしたちの中でちょうどいいバランスになっていたんだと思う。

 紗菜にとっても、わたしにとっても。


「じゃあ、あそこ行こっか」

「うん」


 だから、あの頃ならこんな風に提案してもらっても、たぶんわたしの方がリードしようなんて必死になっていたに違いない。

 たぶん、大学に戻ってからもそれくらい気を張ってしまう日々だ。

 こんな風に、提案してもらって付いていくなんて、もう随分ないことだった。

 まさか、久しぶりにそうするのが紗菜相手だなんて思ってもなかったから、何だか気恥ずかしくて。それに、何だか紗菜がちょっと遠くに行っちゃったみたいで少しだけ寂しくて。


 ふと思った。

 わたしがいなかったこの1年半の間、紗菜にはどんなことがあったんだろう? どんなものを見て、どんな人と出会って、どんな経験をしたんだろう?


 そんなこと知りたいなんて、思ったことあったかな。


「ん、どったの星音?」

「ううん、別に」

「そう?」


 わたしの視線の意味に気付かずに首を(かし)げる紗菜。

 そういうところは昔と変わらないんだね。

 とか、そういうことを思っているうちに、あそこ(・・・)――――街を一望できる展望台に着いた。

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