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エマージェンシー  作者: 渚
1/8

プロローグ


 ナイフによる連撃が空気を割き、幾重もの光の帯が伸びる

 修人は寸ででかわし、後ろへ飛びのくが

 じわじわと壁に追い詰められ、逃げ道を奪われていくのも確かだ

 

 ジャリ


 「修くん!」

 

 その声に振り向くと、そこには雪の姿が


 「ダメだ、来るな!」

 

 ガチャ

 

 気づいた時には遅かった、銃口は既に雪に向けられていた

 間に合わない

 修人は、地面を蹴り脱兎のごとく雪にかぶさる

 

 ドン

 

 鈍い痛みが肩に走り、弾丸は無情にも俺の肩を抜け雪の頬をかすめた

 鮮血が宙を舞い壁や床に血痕が飛び散る


 それを見た修人はもはや冷静ではいられなかった

 腹の底から抑えきれない怒りがこみ上げていくのだった――――

 


 ――――エマージェンシー



 眼下には海が広がり、陽の光を反射してゆっくりと揺らめく

 風の吹き抜ける浜辺では鳥が遊び、何かしらついばんでいるようでもあった

 

 その風は、やがてこちらへ到達し、汗ばむ体を癒してくれた

 陽がジリジリと照り付けるけど、それほど熱いという感じはなかった


 海の音はいつも穏やかで、心癒された


 しばらくそこに留まったのち、自身に立ち戻り頭を巡らせた


 ……ここ、どこだ……


 それが今の自分にとって一番の問題だった

 日常の息抜きにと出かけたはいいものの、すっかり迷子になってしまったようだ


 振り向き、眺めるもその光景には覚えがあるはずもなく

 陽光さす青瓦の木造住宅が所狭しと並んでいた


 その間には車一台通れるかといったほどの広さの道が

 曲がりくねるように続いていた


 ここにいても仕方ないと思い、ひとまずその道を進んでみることにした

 進んでいくうち、駅などに当たれば帰れるだろうと考えたからだ


 薄暗い街路の端には、色とりどりのガーデニングの花々が並び

 よく見ると、日に焼け少し痛んでいるようにも見えた


 その家の古びたドアや窓はしっかりと閉められ

 まるで侵入者を拒んでいるようでもあった


 すっかり痛んだ外壁からは、猫が飛び出し

 道路の中央で止まると、こちらを一瞬振り向き、またどこかへと走り去っていった


 俺は相原修人

 どこにでもいる普通の大学生で、休みを利用してここにきていた


 ……考えても仕方ないっか……


 修人はすっかり考えることをあきらめ、膝を曲げ地面にばたりと大の字になった


 形ない柔らかそうな雲が流れ、小鳥が気持ちよさそうに滑空する空は

 どこまでも青かった――――


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