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鯨剣  2

 イカリをおろし、クルーザー船は港につながれていた。

 アップル大尉をともない、甲板へ通じる鉄の階段をチェリー少佐は登っていった。

「これはどういう船なんですか?」

 というアップル大尉の疑問は当然だったが、その答えを得る前に、この船のオーナーに引き合わされていた。

 オーナーというのはよく太った老人で、元は金髪だったらしい髪は今ではかなり薄くなっているが、目の光はまだまだ失われておらず、いかにも頭の切れそうな感じがする。

 体が少し不自由で、杖を手にしている。

 チェリー少佐が紹介した。

「さあアップル大尉、これがこのクルーザー船のオーナー、U共和国の大使その人だ」

「U共和国の大使? U共和国って、ヒトリでもハマダラカでもない第3国ですね。そんな人となぜお知り合いなんですか?」

「諜報部の人間が、外国の大使と知り合いではおかしいかい? 世の中とは意外にそういうものだよ。大使とは以前、あるパーティーで知り合った。ジャネットから受け取った通信筒をこの大使が握りつぶし、私にだけ耳打ちをしてくれた。『信用できる竜騎兵仕官を連れてきてくれ』と私に指示したのも、この大使なのだよ」

「ふう、だから俺が今ここにいるわけですね」

 皺のよった丸い指で、大使はアップル大尉を指さした。

「チェリー少佐、胸のバッジから見るところ、これが竜騎兵部隊のご友人かな?」

「そうです、大使」

 何秒も遅れてやっと気付き、アップル大尉は握手のために手を差し出した。

「…竜騎兵指揮所のアップル大尉です」

 握手をしながら、大使はにっこりと微笑んだ。

「よろしく、アップル大尉。こんな場所まで呼び出して申し訳ないが、緊急かつ秘密を要することなのでね。君たちとこうして面会することについては、実は本国からまだ許可を得ていない。私の独断で君たちに会い、話をするんだ。そういう覚悟で聞いてもらいたい」

 一瞬はチェリー少佐と顔を見合わせたが、アップル大尉は咳払いをした。

「大使、覚悟とはどういう意味なのですか? そもそもなぜU共和国が、この事件に乗り出してくるのです?」

 大使はため息をついた。

「実はわがU共和国もかねてから、シルビアがただ一人でヒトリ国内に取り残されていることには心を痛めていたのだよ」

「どうしてです?」

「おやおやアップル大尉、そんな疑い深い顔をしないでくれたまえ。ヒトリとハマダラカが今後も戦争をせず、平和が続くことをU共和国も望んでいるのさ。シルビアの存在がヒトリ、ハマダラカ両国間の紛争の火種であることは疑いない」

「だからいっそのこと、シルビアをハマダラカへ亡命させてしまえと計画したのですね」

「それが最も合理的な解決策ではないかね? そのために私は今回、この仲介を買って出たのだよ。もちろん極秘の作戦だが、公海上でシルビアをこのクルーザー船に迎え、そのままハマダラカへ連れて行くつもりだった。海中でトーマスを見つけ、このクルーザー船まで誘導してくる役はゴースト本人が買って出た」

「なるほど…」

「チェリー少佐が学校の寮からシルビアを連れ出し、潜水服を着せてトーマスに乗り込ませるところまでは、計画通りうまくいった。ところが…」

 ここでアップル大尉は大きくため息をついた。

「そのトーマスを、おせっかいな俺の部下が発見し、司令部へ通報を試みたわけか…」

「幸運にも、その通報は私が握りつぶすことができたがね。さらに運のよいことに、シルビアはすでにこの船にいるのだよ」

「えっ、どうしてですか?」

「事実は小説よりも奇なりというやつさ。一時間ほど前のことだが、名前はチビ介といったかな? 我々は海上で黒いマッコウクジラを発見したのだよ。呼吸口から盛んに潮を噴き上げ、クジラのほうから近寄ってきた。なんと驚くなかれ、その背には二つの人影があった」

「ははあ、ジャネットとベスですね。ではトーマスの追跡をあきらめたのか…。どうしてだろう?」

「いや、そうではないのだよ、アップル大尉。チビ介の背にいたのはベスとシルビアだった。まだ睡眠薬が効いているので、シルビアはいま船室で寝かせてある」

「ベスとシルビアですって? チビ介はどうなりました?」

「さあそれが、ベスとシルビアをこの船に乗せたあと、気がつくとチビ介は姿を消していた。一人で指揮所へ帰ったのではないかね?」

「そうですか。ではジャネットはどこへ行ったのです?」

「ああアップル大尉、それはベスの口から直接聞くといい。耳にしたとき、実は我々もにわかには信じられなかった。ジャネットとは、一体どういう竜騎兵なのだね? こんな無謀な話は私も聞いたことがない」

「大使、ジャネットは何をしたのですか?」

「それはベス本人に質問したまえ。いま呼びにやったところだ…。おやノックの音がする。入りたまえ、ベス。そしてアップル大尉の度肝を抜いてやるといい」

 カチリという音とともにドアはゆっくりと開き、本当にベスが姿を見せたので、アップル大尉はもう一度驚いた。

 いかにも申し訳なさそうに、ベスは顔をまっすぐ上げることもできない。

 そのベスの口から出た言葉に、アップル大尉はさらにもう一回驚かされることになった。

「なんだって? トーマスの潜水服の中へ自分から入って、ジャネットは行ってしまっただと?」



 チビ介から離れるとすぐにトーマスが潜水を始めたので、ジャネットは思わず目を丸くした。

「おや驚いた。私が調圧弁を修理したことに気づいているのか。ただの老クジラと馬鹿にできないものだね」

 穏やかな明るい日、トーマスは海中の旅を続けたが、やがてジャネットは目を見張った。

 はるかかなたに何かが見えてきたのだ。

「あれは何だろう? まっすぐこちらへやってくるぞ」

 はじめは海中を行く小さな黒い点でしかなかったが、接近するにつれて、二匹のシャチの姿へと変わった。

 それだけではなく、その一匹の背にはまたがる人影まであるのだ。

「あれではまるで西部劇のカウボーイのような姿だ。ヒトリの潜水服ではもちろんないな。シルエットに見覚えがある…。ハマダラカ竜騎兵だ」

 しかしシャチを二匹も連れた竜騎兵など、この世に二人といるはずがない。

「間違いない、あれはゴーストだ。なんてことだ…。しかしトーマスを追いかけてきた先でゴーストに出会うなど、一体どういうことなのだろう」

 だがその瞬間、雷に打たれたかのようにジャネットはあることを思いつき、実行したのだ。

 手を伸ばし、ヘルメットの内側でジャネットは日よけを下ろしたのだ。

 サングラスのように色のついたガラス板で、太陽の光があまりにまぶしいときに用いるものだ。

 これを下ろせば、外部からヘルメットの中をのぞき込むのは不可能になる。

「ふう、なんとか間に合った。いいタイミングで思いついてよかった…。とにかく今は、ゴーストに疑問を抱かせてはならない。戦う相手として、やつは手強すぎる」

 ゴーストは顔を近づけ、ジャネットのヘルメットの中をのぞき込もうとした。

 しかし、日よけのおかげで何も見えないことにゴーストは落胆した。

 両目を大きく見開き、ゴーストが表情をくもらせるのを、ジャネットは間近に観察することができた。

「いま気がついたけれど、ゴーストってあの眠り姫にどこか顔が似ている気がする…。だけど気のせいかな」

 ヘルメットの中を見ることはあきらめ、ゴーストはトーマスに関心を移した。

 いかにもうれしそうにトーマスが目玉をぐるりと動かすだけでなく、手を伸ばしてゴーストもなでてやるので、ジャネットは気がついた。

「そうか。ヒトリ竜騎兵部隊にいたことがあるのだから、ゴーストとトーマスは顔見知りなんだ…。よし、ここであのトリックを使ってみよう」

 ゴーストに気づかれないように細心の注意を払い、カタツムリのようにゆっくりとジャネットは右手を伸ばした。

 その手が向かう先には自分の空気パイプがある。

 ジャネットはそれを押し、移動させて、ゴーストの空気パイプにそっと接触させたのだ。

 とたんに金属をつたって、くぐもってはいるが、ジャネットの耳にゴーストの声が響いた。

「…ようトーマス、元気でいたのだな…」

 初めてゴーストの声を耳にし、ジャネットは驚きを感じた。『伝説の竜騎兵』、『シャチに乗った死神』と恐れられているゴーストも、クジラに話しかける声は優しく、暖かかったのだ。

 ゴーストは話し続けた。

「トーマス、よくやった。おまえが運んできたのは私の娘なのだぞ。シルビアだ。長く離れ離れだったが、これでまた一緒に暮らすことができる。おまえのおかげでな」

 目玉をクルクルと動かし、体を押し付けるようにしてトーマスは甘えている。

 ゴーストの言葉が続く。

「シルビアは面倒をかけなかったか? そうか、薬でずっと眠ったままなのだな。弟はうまくやったわけだ。ただ調圧弁はネジをゆるめておく手はずだったが…。まあいい。弟が忘れたのだろう。シルビアがちゃんと到着したのなら、それでいいさ」

 やがてシャチたちに指示を送り、ゴーストは前進を始めた。

 超音波笛による合図を受け、すぐにトーマスも同じように進み始めた。

 ゴーストとシャチの後をついてゆくのだが、速度の遅いずいぶんのんびりした旅になった。

 息をひそめ、ジャネットはそっと手を伸ばした。

 ジャネットの手は、トーマスの背に積まれたランスをつかんだのだ。

 ランスとは竜騎兵が用いる専用のヤリで、長さはジャネットの身長よりも大きい。

 ジャネットはつぶやいた。

「ゴーストはすっかり気をゆるめている。今なら私でも勝てるかもしれない…。油断している敵に背後から襲い掛かるなどフェアではないが、この潜水服の中身がシルビアとかいう娘でないことは、いずればれてしまう。そのときゴーストは怒り狂うだろう。やるなら今しかない…」

 だがゴーストも、まさか鈍感ではなかった。

 ランスを握り締め、超音波笛を不意に吹き鳴らして、ジャネットは、

『突撃せよ』

 の合図を送ったのだが、トーマスは正しく反応し、急発進をしてくれたものの、すんでのところでゴーストにはよけられてしまった。

 ジャネットのランスはゴーストの体ではなく、何もない水中をただ切り裂いただけだった。

 ジャネットはゴーストをしとめそこなったのだ。

 しまった、とジャネットは唇をかんだが、もう遅かった。

 大きく目を開いて驚くゴーストの顔が思い浮かんだが、ジャネットは覚悟を決めた。

「こうなったら仕方がない。最後までやるしかない。一度始まった戦闘は、どちらかが敗れるまで終わることはないのだから」

 一方、あまりに突然の出来事にゴーストの頭の中は当惑で満ちていたが、それが怒りに変わるのに時間はかからなかった。

「これはどういうことだ? なぜ私を攻撃する? あの潜水服の中には誰がいるのだ? シルビアではないのか? そうか、まったくの別人だな。私の娘をどこへやった? シルビアはどこだ?」

 修練を積んだゴーストの体は、怒りに駆られながらも正しく動き、一瞬の遅れもなく自分のランスを手にしていた。

 ジャネットからの二度目の攻撃は、その刃が簡単に打ち返した。

 ゴーストの胸の中は、怒り狂う嵐のようだった。

「ヒトリは、まさかシルビアを殺してしまったのか? そうか、わかったぞ。だから潜水服に隠して、偽者を送り込んだのだな。なんという連中だ。血を分けた弟までが私を裏切ったというのか…」

 ゴーストの心は、急速に冷たく変化していった。

 潜水服の中で、ゴーストは怒りに体を震わせた。

「弟までが私を裏切ったということだ。すべてが最初から、私をおびき出すために仕組まれた陰謀だったわけだ」

 ゴーストの目はギラギラと輝き、冷たい爬虫類のような視線が、ジャネットを震え上がらせた。

「来る! ゴーストが来る!」

 ゴーストはジャネットににじり寄るばかりでなく、潜水服の腰にも手を伸ばしている。

 そこには太いベルトがあり、大小のナイフや爆雷といった恐ろしげなものが並んでいるのだ。

 トーマスに向けて、ジャネットはもっとも単純な命令を出すことしかできなかった。

「走れトーマス。全速力で走れ!」

 ここで、マッコウクジラの体の大きさが少し有利に働いた。

 トーマスのでかい鼻が、ブルドーザーのようにシャチたちを押しのけたのだ。

 そのあとはもう、尾びれの筋肉を使ったフル加速しかない。

 しかしシャチと比べて、マッコウクジラは非常に足が遅いのだ。

 ただ一つシャチに勝っている点といえば、潜水できる深さが大きいことだが、トーマスもそれは考えに入れていたのだろう。

 体を垂直に立て、頭を真下に向けて急速潜行の体勢に入った。

 しかしゴーストが黙って見送るはずはなかったのだ。

 ジャネットは頭をめぐらせた。

「ゴーストめ、次はどう出る? あっ」

 ゴーストの手が動くのを、ジャネットの目はとらえた。

 その手は迷うことなく爆雷をつかんだのだ。

 表面に突き出たピンを抜き、下方にいるジャネットめがけて放り投げるのは、ごく簡単な仕事だ。

 ずっしりと重いので、爆雷は水中を石のようにまっすぐ落下してゆく。

 爆雷はすぐにジャネットに追いついてしまった。

 トーマスは全速降下にかかっていたが、あの大きな体で、敏捷な小魚のようにいくわけがない。

 小さな丸い爆雷は、悪意を隠した妖精のように、何気なくスルリと近づいてくる。

 しかもゴーストはトーマスの左側、つまりジャネットがいる側をめがけて爆雷を落としたのだ。

「しまった」

 泡一つまとわず、爆雷は楽々と追いついてくる。

 一瞬後にはジャネットの真横へやってくるに違いない。

 だがこのとき、トーマスが行動を見せたのだ。

 爆雷の動きはトーマスもしっかりと目で追い、到底逃げ切れないと悟っていた。

 背中と尾びれをねじり、トーマスは突然ひょいと姿勢を変えたのだ。

 同時に爆雷が爆発した。

 爆音のすさまじさと水中を走る衝撃の大きさで、ジャネットは何が何やらわからなくなってしまった。

 潜水服は硬く頑丈なものだが、その内部でジャネットはひどく揺すぶられ、あちこちぶつけて体中に痛みが走った。

 それでも歯を食いしばって目を開きつづけた。

「なぜだ? 周囲の水になぜ赤い色が混じる?」

 だがジャネットは、すぐに真実を悟ることができた。

「そうか、爆雷に追いつかれた瞬間、トーマスはクルリと体を回転させたのだ。私がいる左側ではなく、自分の体の右側を爆雷に向けた。そして爆発が起こり、私をかばって、トーマスは体の右側に大きなケガを負ったのだ。あれだけの近距離では、死に至る相当なケガに違いない…」

 それでもトーマスはまだ泳ぎ続けようとするのだ。

「トーマス…」

 それだけではない。ジャネットは気がついた。

「おや、トーマスがまた体の向きを変えようとしている。なぜだろう?」

 一発で十分な効果があったと見たのか、ゴーストもこれ以上の爆雷を使う気はなかった。

 見上げると、トーマスの血で薄いピンクのもやがかかったような海水を通して、ジャネットはシャチとゴーストの姿を見ることができた。

 苦しいのか海水を震わせ、悲鳴のようなトーマスの叫びがジャネットの耳に届く。

 だがまだトーマスは泳ぎを止めない。

 竜のように体をねじり、ついに真上を向いたのだ。

「どうしたのトーマス? それではゴーストを真正面から迎え撃つことになる。あんたまさか…」

 そんな力がどこに隠されていたのか、思いがけない勢いでトーマスは強く水を蹴った。

 ゴースト目ざして、グイと上昇したのだ。

 本当に、それは突撃という言葉がふさわしかった。

 渦巻く水が、ジャネットのまわりでゴウゴウと急流のような音を立てるのだ。

 シャチにまたがるゴーストの姿も、始めはポツンと小さかったが、どんどん大きくなってくる。

 もちろんゴーストも、トーマスの突撃には気がついている。

 ヘルメットの中で、ニヤリと笑っていた。

 二匹のシャチに指示を出し、ゴーストも全速前進を命じたが、それはジャネットも予想していたことだ。

「やはりな。ゴーストのことだから、もちろん敵前逃亡などするはずがない」

 とがった鼻を下へ向け、二匹のシャチがそろって水を蹴る姿がジャネットの目に入った。

 上昇を続けるトーマスを迎え撃ち、シャチたちは急降下に入ったのだ。

 ジャネットとゴーストは、急速に距離を縮めてゆく。

 自分でも気付かないうちに、ジャネットは再びランスを構えていた。

「きやがれ幽霊野郎!」

 ジャネットは左利きなので、ランスを左手で抱え、潜水服のわきの下にはさんで、しっかり固定することができた。

 右利きの竜騎兵よりも、より遠くへ突き出してランスを保持することができる。

 ゴーストとシャチまでの距離は、もういくらもない。

 だがここで、ジャネットは奇妙なことに気がついた。

「なんだ? ゴーストのやつめ、何をするつもりだ?」

 ゴーストとは本当に狡猾な男だ。

 トーマスと真正面からぶつかると思われたが、自分が乗っているシャチには直前になって別の指示を出し、進路を変えさせたのだ。

 ジャネットは鼻を鳴らした。

「ふんゴーストめ、あのやわな潜水服でマッコウクジラに体当たりするのは、さすがに気乗りがしないのか。もう一匹のシャチにだけ攻撃命令を与えたな」

 ジャネットはすばやく計算を続けた。

「いや、冷静に考えれば、ゴーストの判断は正確だ。トーマスは年寄りで、しかも命に関わる重傷をすでに負っている。お相手はシャチ一匹で十分ということか」

 ジャネットの想像は正しかった。

 ゴーストが連れている2匹のシャチは、それぞれ名をアルファ、ベータといい、ゴーストを乗せているアルファは脇へそれ、残るベータだけがそのままジャネットへと向かってきたのだ。

 だが、いくらハマダラカのシャチでも、やけに片寄って左側へ突き出したランスに対応する訓練までは受けていなかった。

 トーマスが流した血のせいで、海中の視界は相当に悪い。

「やつに衝突するぞ…。なんだ?」

 その瞬間にジャネットが感じたのは、体の左側にかかるズンという強い衝撃だった。

 それは本当に強く、ランスが手から滑り落ちそうになったほどだ。

 とっさにグイと握りなおしたが、金属製の手袋は滑りやすい。

「しまった。ランスをもぎ取られた」

 そのままトーマスとベータは高速ですれ違い、互いに離れていった。

 すでにランスはなく、ジャネットの手の中はむなしく空っぽなのだ。

「くそっ、ランスなしでこの先どうやって戦おう?」

 だがジャネットは思い違いをしていた。

 トーマスがさらに上昇を続け、もう少し進んでからやっと振り返って様子を見ることができ、ジャネットは思わず息をのんだ。

 もぎ取られたと思っていたランスが、なんとベータの口に串刺しのように突き刺さっていたのだ。

 ランスの刃先はベータの頭蓋骨を貫き、心臓にまで達していた。

 さすがのシャチも、もはやヒレ一つ動かすことはなかったのだ。

「いったい何がどうなったのだろう? 私が勝った…のか?」

 ヒトリの竜騎兵がシャチと一騎打ちをして一撃のもとに倒したなど、ジャネットは噂にも聞いたことがなかった。

 それほどの大事件なのだ。

 しばらくは水中を漂っていたが、やがてランスの重みに引かれ、真っ暗な深海へ向けてベータは落ちていった。

 その光景に、しばらくの間ゴーストもアルファも身動きすらできなかった。

 ゴーストの声は震えていた。

「ベータがやられた? ヒトリの竜騎兵にか? しかも一撃でだぞ」

 信じられない光景だが、事実は事実として認めるしかない。

「なんてことだ。あの竜騎兵はそれほど優秀なのか? それともトーマスが優れているのか」

 100年近く生きてきたマッコウクジラが高い知性を持っていることは疑いない。

「だからといって、竜騎兵が左利きであることをとっさに生かせるほどの賢さが、はたしてあるものか?」

 そのようなことは、クジラとの付き合いが長いゴーストでも夢にも思ったことがなかった。

 茫然自失、困惑に似た感情がわきあがるのを感じたが、もちろん今は考え事をするときではない。戦闘の最中なのだ。

 だがここで奇妙なことが起こった。アルファの様子がおかしいのだ。

 ゴーストは首をかしげた。

「なんだってアルファ? 高速で接近する別のクジラがある? 方角は?」

 アルファは反応がよく、すぐにその方向へ鼻を向けた。

「北西からか」

 ゴーストは目をこらしたが、まだまだ距離がある。

 ここからでは何も見えないが、そのクジラが発する音を聞きつけ、アルファはゴーストに教えたのだ。

「…よしアルファ、そのクジラの正体がわかるまで、念のためこの場を離れるとしよう。ヒトリ竜騎兵部隊の援軍だとまずい。トーマスにとどめを刺すのが後回しになってしまうが、仕方がない。なあに、もうトーマスは致命傷を負っているのだ」

 アルファをせかし、ゴーストは水を蹴らせた。

 水中を進みながら、トーマスは赤い血の雲を引きずっていた。

 見ていてジャネットまで胸が痛くなるほどだ。

 すでにトーマスは体力を相当失っている。

 なんとか水面へ達したころ、トーマスが突然まばたきをしたことにジャネットは気がついた。

 なぜか二、三度パチパチと目を閉じたのだ。

「トーマスがウインクをしている。なぜだ? クジラがウインクをするなんて、私は話にも聞いたことがない」

 だがその意味に気がついたとき、ジャネットはぞっとし、体中の血が凍ってしまうような思いを味わった。

「トーマスは…、トーマスは気を失いかけているのだ」

 トーマスが動けなくなれば、とたんにゴーストが襲ってくるだろう。

 今のジャネットにはランスもないのだ。

「トーマス、お願いだからまだ死なないでね」

 ところがこのとき、ジャネットの目のすみに、なぜか遠ざかって行くゴーストとアルファの後ろ姿が見えたのだ。

 だがジャネットには意味がわからなかった。

「なぜだ? ゴーストのやつめ、どこへ行く? なぜとどめを刺しにこない?」

 トーマスが奇妙な行動を取ったのは、このときのことだった。

 閉じかけていた目をはっきりと開いただけでなく、ジャネットに向かって胸びれを伸ばし、軽く数回、ぽんぽんと触れたのだ。

 まるでジャネットを落ち着かせようとするかのような優しいやり方だった。

「どうしたのトーマス? 何が言いたいの?」

 大きな丸い目でトーマスは見つめ返すが、やはりジャネットには意味がわからない。

「トーマスは何かを感じているのか? まさか別の敵が現れたのか?」

 だが敵というのはジャネットの思い過ごしだった。

 そのとき白い波をかき分け、どこからともなく突然現れた黒い体がトーマスと平行に並んだので、ジャネットは目を丸くした。

 明らかにマッコウクジラで、トーマスにも負けない長い大きな体をしている。

 その意味するところは明らかだった。

 このマッコウクジラとともに、ジャネットは長い時間をすごしてきたのだから。

「チビ介!」

 ジャネットと見つめあい、チビ介はくりくりと目玉を動かした。

 だが再会を喜んでいる暇はない。

 もはやトーマスの命はつきかけていた。

 ジャネットは覚悟を決めた。

「これでおしまいか…」

 ジャネットは、潜水服の非常脱出レバーに手を伸ばした。

 これを引くとヘルメットが外れ、ジャネットは潜水服の外へバネのように飛び出すことができたのだ。

 ジャネットを歓迎して、チビ介も体を左右に振って迎えた。

「チビ介、あんた今までどこにいたの? ベスとシルビアはどこ?」

 だがもちろん、マッコウクジラが言葉を話すはずがない。

 ジャネットはうなずいた。

「そうだね。あんたのことだから、二人ともどこかで無事にいると納得するしかないね。ところでチビ介、いずれゴーストが戻ってくるのは間違いない。早く逃げなくちゃ。あんたもそう思うよね?」

 チビ介がブホッと大きく息を吐いたので、それが返事だとジャネットは解釈することにした。

「じゃあそうしよう。だけど…」

 ジャネットの言葉の後半は風にかすれ、聞き取ることができなかった。

 ちらりと振り返ったジャネットの視界の中に、トーマスの姿が入ったのだ。

 トーマスはもうピクリともせず、自らが染めた赤い波の中を漂っている。

 ジャネットは頭を左右に振った。

「ええい辛気くさい。今は死んだクジラのことなど考えている場合じゃない。うかうかしていると、私自身もああなってしまうのだから…。えっ、どうしたのチビ介?」

 チビ介がトーマスのそばを離れがたそうにしていることに、ジャネットは気がついたのだ。

「そうかチビ介、あんたもトーマスの死をいたんでいるのだね。トーマスは私を守ってくれたんだよ。ゴーストが落とした爆雷をわざと自分の体に受けて…。あれあれチビ介、あんたはそんなことを言っているわけじゃないのか。じゃあ、どうしてトーマスのそばを離れないの?」

 突然チビ介が大きく体を振るわせたので、ジャネットはひどく驚いた。

 それどころか、ついにバランスを崩し、ジャネットは海へ振り落とされてしまったのだ。

「チビ介、何よあんた。ゴーストがいつ帰ってくるか、というこの重大なときに…」

 水中で腕を振り回し、わめきながら、やっとジャネットは気がついた。

 チビ介はジャネットを、わざと潜水服のすぐそばに落としたのだ。

「ああそうかチビ介、やっとわかった。たしかにそのほうが賢いね」

 トーマスの体にまだぶら下がっている潜水服に泳ぎ寄り、ジャネットはさっそく手を動かし始めたのだ。

 よく慣れた仕事だから、潜水服を取り外してチビ介に取り付けるのには2分とかからなかった。

 それを着込むには、さらにほんの何秒か。

 これで用意は済んだ。

「さあチビ介、出発しよう。ゴーストが戻ってくる前に、こんなところとはおさらばだ」

 ところがそううまくは運ばなかった。

 水中を高速で接近する黒い影に、このときジャネットは気がついたのだ。

「しまった。ゴーストに気づかれたぞ」

 チビ介に命じ、ジャネットはとっさに方向を変えさせた。

 鼻を下へ向け、シャチが追ってくることのできない深海を目指したのだ。

 シャチの体にむちをくれるようにして、ゴーストが追ってくるのが見えたが、足の遅いマッコウクジラではほかにやり方はない。

 何とか深海へ逃げ込むことができるよう祈るしかなかった。

 ジャネットを追い、もちろんゴーストも急降下にかかっていた。

 深海へ逃げ込まれる前に、ジャネットを倒さなくてはならない。

 ゴーストの心は怒りで燃え盛っていた。

「あの竜騎兵め、なんと運のいいやつだ。あの黒いマッコウクジラは突然、どこからやってきたのだろう…? まあいい。作戦の一環として、トーマスのあとをずっと追跡でもさせていたのだろう。かえすがえす腹が立つほどの強運だが、そういうものをひっくり返すのが生きがいだという、私も因果な性格ではあるがね…」

 超音波笛で指示を送りながら、ジャネットはチビ介の瞳をのぞき込んだ。

「いいかいチビ介? いつものとおりゴーストは、上から爆雷を落としてくるに違いない。だから裏をかこう」

 チビ介はすでに全速力を出していた。

 降下を続け、振り返ると、遠くゴーストのヘッドライトだけがぽつんと光っている。

「そうだよチビ介。深海に入る直前、私たちは180度ターンして、真上を向く。そして、そのまま一気に上昇してゴーストと対決するんだ。爆雷が落ちてくるけれど、気にすることはない。どうせ、深海に達しないと爆発しないように爆雷はセットしてあるから、実際に爆発するのはまだまだずっとずっと下のはず…」

 ジャネットはチラリと深度計をのぞき込んだ。

「それっチビ介。あと一歩で深度計の針が200メートルを超える。今ここで、鋭くユーターンするのだよ」

 もちろんチビ介はジャネットの指示に従い、急角度で体を曲げたのだ。

 深海の水は体を締め付け、まるで毛布のように分厚く感じられる。

 しかしその分厚さをうまく利用して、チビ介は方向転換をしたのだ。

 再び全力で水を蹴り、チビ介は急上昇に転じていた。

 ジャネットの盾とランスはすでに戦闘位置にあり、盾は流線型でジャネットがスピードに乗るのを助け、ランスの切っ先は、恐竜の角のように前方へ長く突き出している。

 ジャネットは思わずつぶやいた。

「…これでもう、ゴーストとは何回目の対決になるのだろう…。あっ、爆雷がやってきたな」

 黒く塗装された金属球が、ヘッドライトを受けてギラリと光っている。

 もちろんこちらへ向かって降下してくるのだ。

「チビ介の手前、ああは言ったものの、ゴーストは本当に爆発深度を深海に合わせているのだろうか。もしもそうでなかったら…」

 その場合のことを考えると、ジャネットは胸が締め付けられたが、結局その心配は無用だった。

 ゴーストは続けざまに数個の爆雷を投下したが、そのすべてが彼女の横を素通りし、おとなしく深海へと消えていったのだ。

 ジャネットがその爆発音を耳にしたのは、何秒も後のことだった。

 その間もチビ介は全速で上昇を続けている。

 ゴーストの姿はもうすぐそこだ。

「それ行けチビ介、行けっ!」

 暗闇から突然現れたジャネットの姿に、ゴーストも多少は驚いた。

 一瞬だが、ランスに手を伸ばすのが遅れたのだ。

 ジャネットはニヤリと笑った。

「そのタイミングでは遅いよ、幽霊さん…」

 過去何回かの対決で、アルファの背に装備品がどのように配置されているのか、ジャネットはすでに理解していた。

 ランスは、アルファの背にまたがるゴーストの右側、数十センチのところに置かれている。

 ジャネットはそれに狙いを定めた。

「そうだよ、チビ介。爆雷を投下した直後であれば、さすがのゴーストもまだランスは手にしていまいと私は思ったのさ」

 それは正しかった。

 ゴーストの手が届く前に、ジャネットのランスの切っ先は、アルファの背からランスを叩き落すことに成功したのだ。

 ゴーストは自分のランスを手に取ることができなかった。

 ゴーストのランスは水中を舞い、深海へと落ちていったのである。

「やっほー」

 ジャネットのヘルメットの中は、時ならぬ叫び声で満ちた。

 今はそんな時ではないと頭ではわかっていたが、感情があふれ出し、どうしても止めることができなかったのだ。

「チビ介見た? あのゴーストに私が一矢むくいたのだよ。いくら名人でも、ランスがなければ何もできない…。どうしたの? あんたも少しは喜びなさいよ」

 だがチビ介は冷静だった。

 目玉をぐるりと動かし、ジャネットの注意を再びゴーストへと向けさせたのだ。

「ちぇっ、またゴーストなの…? あっまずい。ゴーストが追ってくる」

 すでにチビ介はゴーストを引き離し、水面近くへと達していた。

「さあてチビ介、ここからどうするか? 実は私もまだ何も考えていないのだよ。いい知恵はない?」

 すでにチビ介には、マッコウクジラとは思えないほどのスピードがついている。

 これをどう生かしたものか。

 もちろんゴーストはアルファに全速力を出させ、ジャネットを追跡していた。

 あせりとともに、ゴーストの心は当惑で満ちていた。

「くそっ、この私がランスを失うとは、どういうことだ? あの竜騎兵は一体何者なんだ? それとも秘密は、あのマッコウクジラにあるのか? どうも気にかかる…」

 だがゴーストの鋭い目は、チビ介のヒレの角度のわずかな変化を見抜いた。

「ふうむ、あの竜騎兵は深海へ逃げ込もうとしているな。マッコウクジラを操る者としては真っ当な戦法だが、面白みのないやつだ…。よしアルファ、少し作戦を変えるぞ。いったんやつを見逃し、深海へ行かせてやろう」

 体をひねり、不審そうにアルファが振り返るのを感じ、ヘルメットの中でゴーストは少し笑った。

「おまえの考えていることはわかるよ、アルファ。しかしやつが深海へ姿を消し、こちらもまたいつものように爆雷を落とすのでは、あまりにも芸がない。あの竜騎兵は『シャチは深海まで潜ることができない』と高をくくって油断している。ならば目にもの見せてやるさ」

 目玉を動かし、アルファがもう一度ちらりと振り返るので、ゴーストは言葉を続けた。

「心配することはない、アルファ。なにも本当に深海まで乗り込もうというのではない。深海の入口、ギリギリのところで待ち伏せようというのさ」

 だがここで、ゴーストは不都合な事実を思い出した。

「そうだ。私はランスを失ったのだったな。だがナイフがあるさ…。いや待てよ。もっといい武器があるではないか。どうしてこれを今まで思いださなかったのか」

 アルファを水中に静止させ、胸ベルトをつたって、ゴーストは腹部へとまわった。

 そこには、胸ベルトに差し込むようにして、さやが固定されている。

 その中には、ゴーストの身長の3分の2ほどもある剣が差し込まれていたのだ。

 引き抜かれると剣は、ヘッドライトの光をギラリと反射し、ゴーストだけでなくアルファでさえ、思わず目を細めたほどだった。



 深海に身を潜め、ジャネットは一息つくことができた。

「さあチビ介、ここまでくれば少しは安心できるね。深度400メートルでは、さすがのゴーストも手出しができない。上から爆雷を落とすことは可能だけれど、距離があるからまず命中しない」

 手を伸ばしてチビ介をなでてやり、自分も体を休めつつも、ジャネットの頭脳は忙しく動き続けた。

「ランスを失っても、ゴーストにはまだナイフがある。私が上昇を始めれば、すぐさま爆雷の雨を降らせるだろう。何の作戦も立てないまま水面を目指すのは自殺行為だ…」

 目を閉じ、ジャネットは考え始めた。



 そのころ、ジャネットのはるか上方では、ゴーストが深度計をのぞき込んでいた。

「よしアルファ、このあたりでいいだろう。深度200メートルか。ここまで深いとかなり動きにくくなる。おまえもそうだろう?」

 目玉を動かさず、アルファはブルッと体を震わせた。

「やれやれ、ご機嫌斜めだな、アルファ。たしかにここよりも一歩でも深くもぐれば、おまえは生きてはいられない。そういう場所で神経質になるなというのが無理か」

 ここでゴーストは、自分の手の中にある剣に再び視線を向けた。

「この剣を実戦で使うのは何年ぶりだろう? 手首の返し、突き、刃の滑らせ方。私の体がそれらをまだ覚えていればいいが…」



 チビ介が突然おかしな動きを見せたので、ジャネットは表情をくもらせた。

「どうしたのチビ介? まさかゴーストがやってきたの?」

 だがそれはありえないことだと、すぐにジャネットは思い出した。

「シャチがこの深海までやってこれるわけがない。ならばチビ介は何を見つけたのだろう? 新たな敵でなければよいが」

 ヒレを動かしてチビ介はゆっくりと前進し、やがてジャネットの前方には、ゴツゴツした岩だらけの海底が姿を見せた。

「チビ介、この海底に何かいるの?」

 スイッチを切り替え、ジャネットはヘッドライトを明るくした。

 海底は一面に岩に覆われ、ところどころにおかしな形の海草が生えているほかは、生き物の姿などない。

 だがヘッドライトが投げかける丸い光の中にあるものが見えてきたとき、ジャネットは思わず息を呑んだのだ。

「あれは何だろう? 何かが海底に横たわっている…。あそこに光っているのはランスか?」

 だが、こんな深海にどうしてランスがあるのだろう。

 さらに接近し、ジャネットはもう一度息を呑んだ。

 そこに横たわっているのは一匹のシャチだったのだ。

「…シャチだ。だがもちろん死んでいる。この深さでシャチが生きられるはずはない…」

 しかし死因は水圧ではない。

 シャチの口から頭蓋骨の奥深くへランスが突き通っているのを、ジャネットは見て取ることができた。

「そうか、これはゴーストのシャチの一匹だ。トーマスが倒したものだな。それがこんなところへ落ちてきていたのか」

 ジャネットの思ったとおり、これはベータだった。

 胸ベルトやすべての装備品を身につけたままで仰向けになり、白い腹部を見せている。

「おやっ? あの腹部にはなにやらおかしなものがあるぞ」

 チビ介を離れ、ジャネットは海底に両足をつけた。

 数歩あるき、ベータに近寄ったのだ。

 ジャネットの目を引いた物体は、ヘッドライトの光を受け、きらりと輝いた。

「おや驚いた。これは剣だ。さやに収められ、胸ベルトに差し込んである。ゴーストの装備品なのか?」

 柄に手をかけ、ジャネットはするりと剣を引き抜いた。

 刃は長く、ジャネットの身長にも負けないほどだ。

 ヘッドライトを受けて輝くさまは、まるで太陽が突然そこに現れたかのようで、チビ介までが驚いて目を細めた。


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