6話
あの後流れで柊は輪音と一緒に帰ることになってしまった。さすがに2人きりというのも気まずと感じたため姉である桜を誘い3人で帰ることにした。
「なんで俺と一緒に帰るなんて言いだしたんですか?」
「憧れの桜先輩の弟さんなんだもん。喋ってみたいと思って当然でしょ?」
「憧れかぁ。ちょっぴり照れちゃうな~」
左手で頭を触りながらそう言う桜は本気で照れているようだった。
「なるほど、姉さんは中身はちょっとあほっぽいところがあってもそれ以外がすごいですからね。先輩が憧れても仕方はないのかもしれませんね」
「あほっぽいとはなにごとっ!?」
そう言いながら首を力なくだらりと下げる。
「私は柊君個人にも興味があるのよ。最初のうちからあんな強化魔法使えるなんてすごいわ」
『あんな』強化魔法とは3回重ねがけの強化魔法のことである。普通は身体能力がいきなり8倍になったらその変化に慣れるのはとても難しい。だから入学したての柊がそんなことをできたことは輪音を大いに驚かせた。
「あー、あれは昔から強化魔法使いまくってるから普通よ。それよりうちの弟の真骨頂は術の開発なのよ。私の術だって大半は柊の・・・」
そこで桜が言葉を切ったのは背後から迫り来る何かの音に気付いたからだ。飛来したのは光魔法による攻撃で3人まとめて攻撃できるほどの範囲だった。
しかしその攻撃は柊たちに達する前にあらぬ方向へ方向転換し宙へ消えていく。
「何者?」
「誰かとかどうでもいいんだけど今の防いだのって姉さんだよね。ご苦労」
「ご苦労って・・・」
襲撃者の存在を忘れコントを始める姉弟。
「お前を拐えとの命令があるのさ、七海輪音」
「それは何が目的なの?」
それを気にせず輪音と襲撃者は会話を続ける。
「超能力、お前は魔法ではなく超能力を使うだろ?それが理由だ」
「なんでそのことを・・・」
「それを教える必要はない」
「そんなやつに聞いたって無駄よ。どーせ何も知らされてない下っぱなんだから」
「そうですね。それは姉さんの言う通りだと思いますよ。ここは俺が片付けるから姉さんは先輩を守ってて」
【パワー】×3【ディフェンス】×3、ラピッド】×3
強化魔法3種を3回重ね掛けし8倍の能力を得る。
【ストーミーレイ】
襲撃者の掌から10を超えるビームが放たれる。柊はそれを全て回避し一瞬で襲撃者の懐に潜り込む。柊の回避したビームは輪音たちの方へ行ったのだがそれは桜によって見当違いの方向へ飛ばされる。
渾身の力を込めた蹴りで襲撃者の腹を抉る。しかしそれをものともせず平然と立ち上がる。
「残念、この下は魔装なのさ。強化魔法ごときじゃ俺を倒すためにどんだけ怪我をすることになるやら」
【ライトランス】
光の槍が柊の胸部を貫く。急所に当たることは免れたがそれは大ダメージとなる。
「柊、もういいわ!あとは私に任せて!」
「今の姉さんに任せたらこいつ死ぬでしょ。俺じゃ先輩守れないから姉さんはそこにいて」
【マナフォース】×3【ヒール】
自身の魔法の出力を増強し胸の穴を回復させる。
(次で決めるか)
再び襲撃者の懐に潜り込み、全身全霊の力で腹をぶん殴る。
「BURST!!」
その攻撃は魔装の防御すら打ち破り襲撃者の体を吹っ飛ばした。