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3rd listening


撫子

「そういえばこの作者、昨日辺りに『私的執筆考』を更新しようとしたんだけと、なんかこれを書き始めた影響で、文体がどっちがどっちだか分からなくなってかなり混乱したみたいよ。思わず崩した文調で書きそうになって、慌てちゃったらしいわ」

東真

「……なんだ、藪から棒に」

撫子

「あら、失礼ね。こっちは長ったらしい前置きであんたが飽きないようにと思って、話を迅速にしようと気を遣ったってのに」

東真

「それを言うんだったら、まず元からそんな話をしなければいいだろう」

撫子

「……あんたってば、ほんとに諦めの悪い性格してるわね……いい加減で自分の置かれた状況を受け入れて、割り振られた役割を全うしようとか考えないの?」

東真

「さっきお前に言われた通り、私は頭が固いもんでな」

撫子

「うーわ、ねちっこいわー……まだそんな小さいこと根に持ってるわけ?」

東真

「悪かったな、心身ともに小さい人間で」

撫子

「……不満通り越して卑屈になっちゃったよこの人……」

東真

「いいんだ……別に私なんて……」

撫子

「つくづくめんどくさいわね……でも、あんたのその卑屈さは今、作者が陥ってる精神状態とリンクしてるのかも」

東真

「……ん? どういう意味だ」

撫子

「お、やっと話に乗ってきたじゃない♪」

東真

「無駄口はいらん。さっさと何のことだか説明しろ」

撫子

「……自分に疑問が出来た途端にその態度ですか……はいはい、ようございますよ。何なりとご説明いたしましょ」

東真

「だからそれが無駄口だと言うんだ。早く話せ」

撫子

「自分がされたら腹立てるくせに、人にはそういう物言いするわけね……まあいいわ。あたしはあんたと違って人間が出来てるから、大人の対応で話してあげる。いい? あんたは意固地に知らぬ存ぜぬを貫いてるけど、あたしもあんたも、これの作者が書いているキャラクターである以上、その影響がモロに出るところがあるのよ」

東真

「……どういう意味だ?」

撫子

「簡単に言うと……そうねえ……健康なニワトリは質の良い卵を産むけど、病気のニワトリはそもそも卵なんて産めないし、産めたとしても決して質の良い卵じゃない。こういう説明だったら分かる?」

東真

「……いまいち要領を得ん……」

撫子

「何せ、あんたは意地でもこの作者ってものの存在を認識しないもんね……つまり、例え話に当てはめるなら作者はニワトリ。あたしらはそれの産んだ卵ってこと。作者の好不調は即ち、あたしたちの好不調でもあるわけ。お分かり?」

東真

「ふむ……理屈は分かった。ただ、どうしてかという部分がまだ判然としない……」

撫子

「どうしてかって、どこら辺のこと?」

東真

「その作者とやらの好不調に、私たちの調子が左右されるというのは理解した。が、そうすると現在、私の調子から推測するにその作者は不調なわけだな?」

撫子

「さっきから何度となく言って聞かせてることをこうも当たり前に再確認されると、呆れかえってもはや腹も立たないわね……」

東真

「腹が立たなかったのなら問題無しだな。では質問を続けるぞ」

撫子

「へいへい……もう好きにして……」

東真

「どうしてその作者とやらは不調になった? 話を総合するに、その不調さえ起きなければ私たち……じゃなくて、私がこんな面倒に巻き込まれることにもならなかったわけだろう?」

撫子

「あんた……その言い回し、絶対わざとでしょ……」

東真

「当然だ。意図的でなかったら、こうも連続して同じ言い回しをするわけないだろうが」

撫子

「この人、認めちゃったうえに開き直りやがったよっ!」

東真

「ふむ、おかしいな。確か腹は立ててなかったんじゃなかったのか?」

撫子

「おかげさまで一度は麻痺した感情がすっかり目覚めてくれたわよっ!」

東真

「そうか。では、それはそれとして質問の答えは?」

撫子

「あたしの感情については右から左かっ!」

東真

「それは表現が適切でないな。閑話休題と言って欲しいものだ」

撫子

「余談扱いか、あたしは……」

東真

「ほら、どうでもいいから早く答えろ」

撫子

「分かったわよ……どうせこの流れだと、まともに受け答えすればするほどあたしが損するだけだもんね。話しますとも」

東真

「そうしてくれ」

撫子

「まあ、この辺りは当人である作者も自身で理解出来てないから推測の域を出ないんだけど、思うに本来の自分が持ってるスタイルと違う作品を連続して書き続けた結果っぽいわね。本意でない作風を無理に追求したもんで、精神が疲労骨折したんじゃないの?」

東真

「ん……理由としては理解できる内容だな。しかし何故その作者は自分のやり方を曲げてまで本意でない作品なぞ書いたりしてたんだ?」

撫子

「うーん……『私的執筆考』なんかで書いてる内容を見る限り、不得意ジャンルに挑戦することで自分にはどの程度の可能性が残されているのかを確かめてみたかったみたいね。でも結果がこれだとしたら、間違い無くただの自爆だわ」

東真

「なんとも……絹ごし豆腐のように脆い精神だな。よくもそんな性質で挑戦などと大それたことを考え、しかも実行したものだ」

撫子

「作者としてはまだ自分に伸び代が残っているかを知りたかったんでしょ。にしても、妙な無理したもんよ。本気なんて出さなけりゃ、本当の自分の限界も知らずに済んで、夢見て生きられたでしょうに……」

東真

「どちらが正解とも言えんさ。自分の限界を直接に目で見て、絶望に身を焼くのも勝手。生涯本気を出さず、自分は本気さえ出せば出来る人間なんだと自己正当化をすることで精神の安寧を図るのも勝手。人の生き方は個人の自由だという原則に変わりは無い」

撫子

「それはまあ、ね……結局は個人の判断でやるかやらないか決めるだけのことだもんね……」

東真

「ただ、その個人の自由に振り回されて、こんな面倒を背負い込むことになったのはいただけないがな……」

撫子

「あんたもほんとにしつこいわね……ま、それはさておいて……」

東真

「?」

撫子

「はい、やってまいりました! 質問コーナーでーす♪」

東真

「……な、何だ……?」

撫子

「えー、このコーナーは頂いたお便りの質問に対し、あたしたちが適切なアドバイスをするという、シンプルかつ有意義なコーナーでーす♪」

東真

「また……聞かされてもいないことを急に……」

撫子

「悩み多き人生……その水先案内人があたしたち♪ 迷える質問者にひとすじの光明を与えてゆきましょー♪」

東真

「人生経験もさほどないくせに、何を生意気な……って、あれ? ちょっと待てよ……」

撫子

「なによう、せっかく人がテンション上げてきてるってのにブツブツと……」

東真

「いや、お前の気分なんぞどうでもいい。今、私の頭に浮かんでいる疑問に比べれば」

撫子

「あんたがあたしのことについてどうでもよくなかった時なんて、過去に一度でもあったかしらね……でも何? その疑問って」

東真

「実は先日、お前に言われてこの番組(という体の文章)を調べてみたんだが……」

撫子

「あら、勉強熱心じゃない。そういう姿勢は良い傾向よ♪」

東真

「茶化すな! とにかく……私なりに調べてみたわけなんだが、この番組(という体の文章)は確か……」

撫子

「確か?」

東真

「今日現在の時点で、ユニーク数が22人しかいないぞ……」

撫子

「……で?」

東真

「で、じゃないだろっ! 大問題だろうがっ!」

撫子

「うっさいわねー、ギャースカと……何よ、ユニーク数を見たら22人でしたってのが何か問題でもあるっての?」

東真

「私の言ったことを聞いても問題が頭に浮かばないとしたらお前の頭が大問題だが、今はそんなことはいい! 繰り返して言うが大問題だっ!」

撫子

「っとに……調子を上げていこうかって時に腰を折るんだから……で、その大問題って?」

東真

「いいか、質問コーナーということは、誰かからの質問があって始めて成立するわけだな?」

撫子

「当然だわね」

東真

「しかしユニーク数は22人……それも4日間の合計でだ。となると現実の人数は5、6人ということになる……」

撫子

「はいはい、だから何?」

東真

「だから何じゃないっ! ただ目を通しただけの人数でさえわずか5人程度しかいないのに、どうやったら質問なんて届くんだっ!」

撫子

「あー……そっちの心配かー……」

東真

「そっちもどっちもあるかっ! 心配の種なんぞそこしかないだろうにっ!」

撫子

「怒鳴らなくたって聞こえてるっての。目の前にいるんだから……まあねー、そこを心配する気持ちは分からなくもないけど、実際には単なる杞憂よ。残念だけど」

東真

「……え……?」

撫子

「あのさ、あんた言うところの絹ごし豆腐メンタルよ? この作者。自分の作品が恐ろしいほど読んでもらえてないことくらいは先刻承知なわけ。ユニーク数以前に、質問そのものが来るはずないってハナから分かってんのよ」

東真

「な……え、じ、じゃあ、なんだってそんな成立しないと始めから分かっている質問コーナーなんてやろうと……」

撫子

「成立はするわ」

東真

「……は?」

撫子

「勘違いしてるみたいだけど、この質問コーナー、読者が対象じゃないの。作者が質問者。そして答えるのがあたしたち。そういう作り。分かる?」

東真

「え……え、ええっ?」

撫子

「そりゃそうよ。来るかどうかも分からない……ていうか、まず来ない読者からの質問なんて当てにするわけないじゃないのさ」

東真

「あう……あ、まあ……言ってることは確かにそう……なんだが……しかし、それだと……」

撫子

「何?」

東真

「それは……質問ではなく……」

撫子

「ではなく?」

東真

「……単なる自問自答なのでは……?」

撫子

「……」

東真

「私たちがその作者が作ったキャラクターだとするなら、それに対して作者が質問し、それに答えるのは単に形を変えた自問自答でしか……」

撫子

「……はーい、どうやら時間計算を間違えちゃったみたいです♪ 残念ですが質問コーナーはまた次回ということで、今回はさようならー♪」

東真

「ちょっと待てーーーっっ!」

撫子

「また次回ー♪」


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