1st listening
注意・この作品は以前に連載していた「剣客少女シリーズ」のセルフパロディ的作品です。前述した作品を読まれていない方にはまるで意味が分からない内容となっておりますので、どうかご容赦ください。
佐々撫子(以下、撫子と略)
「はーい、ついに始まりました♪ 剣客少女の時間、略して剣少時間♪」
紅 東真(以下、東真と略)
「……」
撫子
「パーソナリティーはあたし、佐々撫子とー?」
東真
「……」
撫子
「ちょっと、黙りこくってないであんたも合わせて名乗りなさいよ」
東真
「……どこだ? ここは……」
撫子
「は?」
東真
「だから……ここはどこかと聞いてるんだ」
撫子
「あー……そこから話すの?」
東真
「そこからも何もあるかっ! そこが一番の問題だろうがっ!」
撫子
「ちょっ、バ、バカ、マイクに向かって怒鳴るんじゃないわよ! 音が割れちゃうでしょ!」
東真
「そんなこと知るかっ! 大体お前が来いと言うから付いてきてみればこんな……」
撫子
「しーっ! 東真、しーっ! 落ち着きなさいってば!」
東真
「落ち着けるかっ! こんな……訳の分からん服まで着せられて……どうやって落ち着けというんだお前はっ!」
撫子
「自分で着ておいてそれを言うかね……って、いいから、とにかく静かに!」
東真
「うるさいっ! お前のほうこそよっぽど声がでかいだろうがっ! それにこの服は着ろと言われたから着ただけだっ! おかしいか! 悪いのか! 頼まれて親切心で着たというのに、文句を言われなきゃいけないのか私はーーーっっ!」
撫子
「あーっ! も、もう曲にいって! なんでもいいから曲! 早くっ!」
[森田公一とトップギャラン「青春時代」演奏中]
約三分後、演奏終了。
撫子
「あ、はい、えーと……森田公一とトップギャランで青春時代でしたー♪ 1976年にリリースされ、わずか半年でミリオンセラーを記録した名曲ですねー♪」
東真
「……知った風に……渡された原稿を読んでるだけのくせをして……」
撫子
「うっさいわねーあんたは……そういうことは言わぬが花って知らないの?」
東真
「何も知らされずにいきなりこんなところへ連れてこられた私には、花なんぞ感じる余裕も無かったがな……」
撫子
「もーう、だから曲かけてる間に説明したでしょ? いい加減に機嫌直しなさいよー」
東真
「分かっている。事情はとりあえず呑み込めた。調子が上向かない作者……とやらだったか? それのために時間を稼ぐのが私たちの役目。そういうことだな?」
撫子
「さっすがベニアズマ♪ そういうことは理解が早くて好きよ♪」
東真
「お前……また人の名前……」
撫子
「あー、もうゴメンゴメン! 言いません! もう二度と言いませんから!」
東真
「……まあ、分かればいいが……」
撫子
「ほんっと、めんどくさいなー……これじゃ迂闊に黒霧島の話すら出来やしない……」
東真
「本格芋焼酎がどうかしたかっ!」
撫子
「してません! どうもしてません! すいませんっ!」
東真
「大体、女子学生がなんで黒霧島の話なんかする必要性があるんだ! 未成年なら未成年らしい話題で話をしろっ!」
撫子
「分かってるわよ……じゃあ、おふざけはこのくらいにして本題に入る?」
東真
「それをお前が言うか……まあ、本題に入ることには賛成だ。いくらなんでも無駄な前振りが長すぎて頭がクラクラしてきたところだからな……」
撫子
「それは叫びすぎで酸欠起こしてるだけだと思うけどね……と、また話が横道に逸れないうちに本題といきますか♪」
東真」
「ふむ……」
撫子
「簡単に言うと、このラジオ番組(という体の文章)は、平たく言えば作者のリハビリらしいのよ。夏からずっと続いてるスランプ……って、この言い方はこの作者、好きじゃないんだったわね……えー、不調をどうにか改善しようっていう、なんていうか、気分転換? 的な? そういうものらしいわ」
東真
「そこまではさっき曲がかかってる間に聞いた。問題はその気分転換とやらに何で私たち……いや、お前は乗り気のようだから構わんだろうが、何で私まで巻き込まれなきゃならんのかということだ。大体、見も知らん奴の気分転換なんぞに付き合ってやるほど、私は別にお人好しじゃないぞ」
撫子
「そこはまあ、あんたの言い分も分かんなくはないけどさー……でも、久しぶりの出番よ? 活躍のチャンスよ? ふいにするのは勿体無いと思うじゃん」
東真
「知るか。私はお前と違って下らん自己顕示欲は持ち合わせていない。出番があるとかないとか、そんなことはどうでもいいことだ」
撫子
「へーへー、さすがは主役さまは余裕があってよろしゅうございますねー。あたしらみたいに脇で動いてる人間の苦労なんて知りもしないくせに……」
東真
「それがまさに自己顕示欲そのものだろう。まったく、お前ときたらいつまで経っても目立つことしか考えんのだから……少しは大人になれんのか」
撫子
「あたしは学生なんだから子供でけっこうですよー。ていうか、あんただって純花によく食事のことで窘められてんじゃないのさ。そんなに人を子供扱いすんなら、自分だってもっと大人らしく生活習慣を改める努力でもしたらどうなの?」
東真
「うっ……いや、それは別にだな……大人とか子供とかそういう事情とは関係の無い話であって……」
撫子
「自分に都合の悪いことだけ言い訳すんなっ!」
東真
「……」
撫子
「大体ねー、前々からあんたには言いたいことは山ほどあったのよ。いっつも色々あって言いそびれてたけど、今日こそはハッキリ言わせてもらうからね!」
東真
「な、なんだ……?」
撫子
「あんたさー、仮にも主役よね?」
東真
「まあ……な」
撫子
「主役ってのは普通、作品の中心で全体を引っ張るのが役目よね?」
東真
「う……む」
撫子
「だけど」
東真
「?」
撫子
「あんた弱すぎ」
東真
「……」
撫子
「普通さー、主役ってこう、みんなが束になっても歯が立たないような相手に真っ向から向かっていって、楽勝とはいかなくても辛勝くらいするもんじゃないの? それがあんたときたら一作目ではバッテン書くみたいに右袈裟、左袈裟と切られて、仰向けにぶっ倒れたでしょ?」
東真
「……」
撫子
「かと思えば二作目はさらに最悪じゃん。一戦目でサックリお腹刺されて秒殺。雪辱戦には駆けつけて来たけど、そこでも傷口が開いちゃって、ろくに戦えず。あれ? 主役ってもっとこう頼りになる感じじゃ無かったっけ?」
東真
「……」
撫子
「どうなのよ」
東真
「……」
撫子
「なんか言いなさいよ。黙ってないで」
東真
「……それは……」
撫子
「うん?」
東真
「まことに……我が身の力不足を痛感し、申し訳無いとしか言葉が無く……」
撫子
「違ーーーうっ!」
東真
「……は?」
撫子
「あ、あんた、なに普通に謝ってんのよ! それじゃまるきりあたしが悪者みたいになっちゃうじゃないのさっ!」
東真
「し、しかし……自分の不甲斐無さはよくよく理解しているつもり……」
撫子
「だからそうじゃなくてーーーっっ!」
東真
「……?」
撫子
「そこは普通『お前だってほとんど役に立ってなかっただろうが!』ってツッコむとこでしょうがっ! あんたが素直に謝って一体、誰が得すんのよ! てか、あたしが一人損だわっ!」
東真
「そうは言われても……力不足であったことは事実その通りであったわけで……その点については私も頭を下げるより他に無く……」
撫子
「やめてーーーっ! あたしの印象がどんどん悪くなっていくばっかりだから、ホントにもうやめてーーーっっ!」