眼鏡っ娘はこの感情を認めていいのか? 好宏君の本気度すごい! ※
ゔ――――――――、私は靖宏をまだ大人版好宏君と意識してしまっているので靖宏の顔を見れない。
→ 靖宏の考え
(俺を見て顔を赤くした……。え、何。もしかして上木って俺のこと好きなのか?)
好意を持たれるのは悪い気がしないが、俺はそんな事ないはずと考えを整理し始めた。
(いやいや、そんなまさか)
「やっ、靖宏」
私はとりあえず自分の気持ちもまとまっていないので靖宏にそれを伝える。
「べっ、別に好きとかそういうのじゃなくて! ほんのそこそこ気になっているだけで! 恋じゃないから! 多分! まだ!」
まだ恋をしているとか好宏君にそう思っているなんてあり得ないはずだよねと私は一人納得しようとしている。
(マジか――――――――!)
靖宏は思いを伝えられたかもと感じ、好宏君は少しでもモヤモヤした気分を抱えた。
私は自分の思いと、自分の考えがぐちゃぐちゃになって自分でも何を口走ったかわからなくなって、走り去った。
「そっ、それじゃ」
靖宏は呼び止めたのだが。
「あっ、おい!!」
靖宏が緑葉の気持ちを察してこう感じる。
(えっ、何。今の? 告白されたのか俺)
靖宏の横で好宏君がビンを手にとった。靖宏が、弟の好宏が塩辛の瓶詰めを投げてこようとしている所に気づいて止める。
「せめて買ってから! せめて買ってから投げろ! な?」
とりあえず弟の好宏の怒りを俺は抑える。実際投げられたら怪我してしまいそうなので後で話しあわないといけないなと思った。
「お兄ちゃん、緑ちゃん好き?」
七才児らしくストレートな物言いで弟に聞かれた俺は、少し言いよどみながらも答える。
「え。あっ、いや普通か?」
好宏が真剣な表情で訴えかけてきた。
「僕は本気で緑ちゃんのことが好きになっているんだよ! ううんっ、愛してるんだ!」
自分の方が、本気度が高いはずというのを証明するために好宏が何らかの表をズボンのポケットから取り出した。
「人生設計も立ててる。年齢差を考えていろいろ試行錯誤した結果が昨日やっと完成したんだよ! お兄ちゃんより僕の方が緑ちゃんを想ってる!」
俺は好宏の年齢に似合わない大人びた行動よりも、「七才児が愛とか」とツボに入って吹き出してしまう。
「ちょっ、おま、あんま笑わせんな……!」
笑いをこらえている俺を見て、好宏が怒ってしまった。
「お兄ちゃんのばかー!」
今さらながら弟が本当に好きになってしまったのかを確認する。
「てかっ、好宏って上木のこと好きなのか?」
好宏が嬉しそうに元気よくうなづいた。
「うんっ」
好きになった時の言葉を思い出して、好宏は笑顔になる。
「きっかけ一つで世界が変わったんだよ!」
そのきっかけは「よしひろ」「すきだい」と言われたあの事のようであった。
「きっかけ一つねぇ……」
靖宏は緑葉に「好きとかそんなんじゃっ」と言われた場面を思い出して意識するようになる。
「………………」
買い物帰りにそういう話をしていたので、黙っていてもお互いのつないだ手から何かを感じ取れた。
私は走って帰ってきたので無駄に体力を消耗した。
「あー、つかれた」
お帰りの挨拶もそこそこに、テレビを観ていた母親に片手間な感じで質問される。
「お帰りー、何かあったの?」
買ってきたお弁当を机に置きつつ、応える。
「靖宏に会ったの。スーパーでね」
興味のある話題だったのか、少しソファーから体を乗り出して食い気味に話の続きを促してきた。
「何だか無駄にドキドキしちゃって」
もちろん靖宏のことを大人版好宏君だと意識したのである。
そんな事は知るはずもなく、緑葉の母親は良かった、ウチの娘は健全だった……! と思いつつ抱きしめる。
「えっ、ちょっ、何?」
緑葉は急に母親が抱き寄せてきたので、「気持ち悪っ」と思った。