お互い意識しはじめちゃったかな?
母親に言われた通りスーパーマーケットに行ってお弁当を買うことにした私。
(料理が得意ってわけじゃないし、たまにはお手軽でいいかも)
私はお弁当コーナーで割引されているお弁当を見つけた。
(あ、二十パーセント引き。ラッキー)
そこで近所の級友に出会う。
「お、上木じゃん」
私に声をかけてきたのは実は好宏君の兄だったりする。
「岡屋家長男で私と同い歳の靖宏じゃない」
昔からの知りあいなので呼び捨てだ。私の言い方に靖宏が微妙に戸惑っていた。
「なんで説明調? この間、好宏のことを預かってくれたんだってな」
弟を預かってくれてありがたかったと靖宏からお礼を言われる。
「俺も部活やっててすぐ帰ってやれねえから助かるよ。母さんもお礼言っといてって言ってたしな。さんきゅー」
「えっ」
好宏君に好かれたい私は恋愛妄想がオンになってしまう。
(お母様に気に入られた!? ま、まさか……!)
妄想している時の表情を靖宏に見られたくなくて顔を背けていたので首を傾げていたのかもしれない。
「…………?」
とりあえず私は差し障りのないことを聞く。
「靖宏も買い物?」
律儀に靖宏が返事をしてくれる。
「おう、好宏と一緒にな」
靖宏が、私が恋心を抱いているかもしれない(むしろ認めた方が楽!?)好宏君と一緒だというので彼の姿が脳裏に浮かんだ。
(好宏君と一緒……?)
脳裏に浮かんだ好宏君が私に呼びかけている。
『緑ちゃーんちゃーんちゃーん』
私は思わず待ち構えてしまうようなポーズを取る。
「!? えっ、どうした!?」
あまりに靖宏が驚くのでそうしてしまった理由を話した。
「緊張のあまりつい身構えたというか……」
「うおいっ!! 俺の弟は猛獣か!」
文房具コーナー付近から靖宏のところに戻ってきた好宏君が(偶然そこから来たのが見えた)私に気付いた。今日も笑顔が素敵。
「あ、緑ちゃん」
私は靖宏の前では、はしゃげないのでどうリアクションしていいかからずにテンパる。
「よ、YOSHIHIRO君!」
「何でカタコトだよ」
私は好宏君のことをやはり格好良いとしか思えない。靖宏の前でそんな事を言ったら何か距離を置かれそうな気がするのでグッと我慢。
「食いたいモン持ってきたか?」
「うんっ」
好宏君の手には何かの缶詰がある。
「イカの塩辛!」
7才の子どもとしてこのチョイスはどうなんだろうなっていう同意を求めているのか、靖宏が私に尋ねてくる。
「またかよー、上木どう思うよ?」
なるほど、好宏君が文房具コーナー付近から出てきたのはこれを持ってきたからだったのか、文房具と缶詰がある列は同じだもんね。
「くっ、渋くてステキとか思いましたっ」
「は?」
靖宏の聞きたい返事と違ったからか、聞き返されてしまった。
「今日はカレーなんだよ」
靖宏も微笑ましそうに弟を見ている。とても嬉しそうに好宏君が教えてくれたので私は目をあわせて同意する。
「おいしいですよねカレー」
「うんっ」
子どもらしく好宏君が自分の好物を教えてくれた。
「僕、カレー大好きなんだ!」
私は好宏君の好きな食べ物が知れて嬉しかった。
「YOSHIHIRO君はカレーが大好きなん、で……」
二人して同じ言葉を私と好宏君が思い出す。
『よしひろ』
『すきだい』
靖宏がわからないのも無理ないが、私と好宏君はお互い顔を見合わせたまま赤面してしまっていた。