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あの子のこと、意識してなっ……あれ? また別の日―― ※

「あの緑葉ちゃん」

 ​好宏君が改まった感じで何か言いたそうなので私は優しく聞き返す。

「​なんです?」

​ 彼が言いたいことは私に名前で呼んでくれないか尋ねることだった。私は嬉しさを表現するのを遠慮して体を硬直させた。


​「僕のことも名前で呼んでくれたら嬉しいなぁ、なんて。だめかな?」

​ 私は嬉しくて仕方がないのだ。でも私は顔を赤らめてしまい、心臓の鼓動の早さのせいで考えがまとまらない。

(​ななな名前!? ​そ、そう来ましたか……!​ な、なんかこれ凄く恥ずかしんだけどっ)


​ 私は何とか名前を言ってあげようかとよ」「よ」「っよ」と声を絞り出すのに苦労する。

「​YOS​HIH​IRO​!」

​ 何とかロボット口調というか、棒読みで私は彼の名前を呼んであげることが出来た。

(​あってるけど……何でカタコトなんだろう)

 ​どうやら彼も外人っぽいと思ったようである。


​「これからもよろしくね、緑ちゃん」

 ​私は好宏君のまぶしい笑顔を正面から見てしまったら、骨抜きになって何をされてもいいという感じになってしまうだろう。照れた表情が目立たないように少し横を向いて肯定する。

「ええ、よろしくですし、よろしくされたい!」

​ 私は自分の頑張りを自画自賛してガッツポーズを作る。

(​この調子、緑葉!)

​ うやむやになったはずのことを好宏君が思い出して改まって私に聞き直してきた。

「​あっ、そういえば敬語の理由。あれ、どういうことなの?」

​「うっ、あ、​あれはですね……」​

 

​ 内心冷や汗ものなのでぎくっと感じながらやばいなって思う。その後でとっさに思いついた嘘をそれらしく教えた。

「​実は異性とは結婚するまで敬語で話すようにという家訓がありまして……」​

「そうなの!?」​


「緑葉ちゃん家、すごいねー」

​ 好宏君が自分の家との違いにとてもビックリしている感じだ。

(​信じてる! そんな純真なところが大好きだよ好宏君!)

​ 私はそんな天真爛漫な性格の彼を好意を持って見つめている。

(​あ、すきだい……よしひろ……)​

 好宏君の名前の読み方を考えてみたらこんな感じになるのかと私は口に出してしまった。


​「よしひろすきだい! なんて……!​!」

​ 彼がぽかーんとした表情で私を見ている。私は何ともいえぬ空気をどうにかしようとごまかしてしまう。

「​一文字変えるだけで違うものになる。言葉は奥深いですね!」

​「そ、そうだね」

 ​彼が気をつかってくれたのか(?)​肯定してくれた。そういう所も大人びてるよ。


​(口に出すとか私はばかなの!? ​ばかですばかやろおおお)

 ​私は気持ちを表に出さずに心のなかにとどめておこうと思っていたのに声に出してしまったので自問自答しながら照れもあってかノリツッコミまでしてしまっている。

「​すみませんっ、自室でしばらく宿題をしてくるから少し一人でいてください!」

​「あ、​わかった……」​


 好宏君の返事を聞こえたか聞こえなかったかくらいの勢いで一度二人で話していた部屋を後にした。ドアが閉まるまで彼は平常心で座っている。しかし、ドアが閉まって一人になった途端、彼は近所のお姉ちゃんに「好き」という言葉を言われたと頭の中が真っ白になって全身が火照り、顔も赤面してしまっていた。


挿絵(By みてみん)



​ ついつい好宏君の顔が見れなくなって、私は照れた表情を見られたくなくてドアを閉めた。でも冷静になったら逃げた理由がわからなくなる。

(​……。​なぜ逃げたし)

 ​私は結局荷物も持っているし、自分の部屋に向かうことにしながら逃げた理由を分析し始めた。


​(子どもに好きっていうくらい普通なのに! 何であんなに動揺したの私!)

​ いくら可愛くても私は好宏君のことは恋愛対象に考えたことないし、と軽口を一人でつぶやく。

「​まさか岡屋君に本気で恋ですかー? ​なんちゃってあはは――」​

 私は一度冷静になる。

「​……まさかね」

 ​あれ? 彼のことを恋愛対象として意識していないはずなんだけどなと思った。


         ◇                ◇

 

 ここは緑葉の自宅、私はたまには楽をしたいのか疲れていたのか見た目では判断しにくい母親から(ソファーに寄りかかってテレビをだらだら見始めたため)今日の食事を頼まれる。

「緑葉、スーパーでお弁当買ってきてー」

 私は一応今日の食事か確かめた。

「もしかして夕ご飯、お弁当?」

「うん」


 だるそうな母親から代わりに作ってくれてもいいのよと聞かれる。

「文句あるなら作ってよね」

 私はほんの少しだけイラッとした。

「文句なんて言ってないよ!」

「料理できる子はモテるわよー?」

 それを聞いて、私はあの子のことを思い出す。


「…………」

「どうかした」

 私は恥らってもじもじしてしまった。

「六才の男の子でも?」

「はよ弁当買ってこいや」


 


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