えっ? 私って萌えキャ……? ※
私は舞い上がった気持ちが落ち着いてきたのでイスに座り直す。
(嬉しいからってこんなにうろたえてどうすんの……もーっ)
「あのっ、緑ちゃんってさ」
私がはしゃぎたい気持ちを抑えて冷静に接しなきゃと思っていると好宏君から遠慮がちな声がかかる。
「は、はい緑ですが」
「もしかして僕みたいな子ども苦手?」
そんなつもりはないんだけど、彼は私の態度をそっけないと取ってしまったようである。
(ありえないありえない! ましてや岡屋君みたいな子は大好きだし! でもただの子ども好きにしては私の反応はおかしいかな……あっ、そうだ)
私はストレートに好意を伝えられないので、遠まわしな伝え方でズバッと切り出す。もちろん好宏君には伝わっていない。
「岡屋君みたいな萌えキャラは好きです!」
「僕って萌えきゃらだったんだ……」
彼は萌えなんてよくわかっていないだろうけど、何かを納得してしまっていた。
(正直に言うべきだったよね。なんか変な知識を植え付けちゃったかも! どうしよう、いろいろと取り返しつかないよこれ!)
私は好宏君にいらない知識を与えてしまったと、顔を見られないように後ろを向いて頭を抱えていた。彼はよくわかっていないのか首をかしげている。
「そういう緑ちゃんも、もえーって感じなのかな。かわいいし」
私は彼があどけない笑みで容姿を褒めてくれたので時が少しの間止まる。もちろん褒められて嬉しくて仕方がないのだが、自分が責められて当然なのだと語り続ける。
「そそそんな気を遣ってくれなくてもこっちは痛痛しいことをよく理解していますからキモいとかショタ乙って罵ってくれてもいいんだよ。むしろ責めてくれない………………」
「ごご、ごめんなさい!?」
私が異様な雰囲気を出してしまったからか、好宏君が怖くなってきたかは定かではないが謝られてしまった。悪いのは私なのにね。
いろいろあったけど、私はどうにか好宏君が私と遊んで面白かったと思ってもらえるようにドーナツを人差し指で回しながら遊びの提案をする。
「とっ、とにかく遊びませんか! このドーナツで輪投げでもします!?」
「それ僕が持ってきたおみやげ!!」
同じ遊ぶならゲームで遊ぼうと彼に誘われる。
「えと僕、家からゲーム持ってきたよ」
(突然の出来事にとり乱してしまった……! WOW)
私は恥ずかしさで顔が火照ってしまっている。顔から火が出そうな勢いだった。
(絶対変な奴って思われた……)
私は彼からゲームを受け取る。
「あっ、これって怪談ものの……! さっきのはお化けにとりつかれていたということでどうでしょう! ナイスアイディア!!」
「え、何が?」
私は好宏君が私のことを変な人って思っていたかもと心配になったので、思いついた考えはかなり良いんじゃないかってテンパったまま伝える。だが彼は特に気づいている様子はなかった。
私のことを楽しいお姉ちゃんとでも思ってくれたのか、好宏君が微笑んでいる。
「緑ちゃんって面白いね! あはははー」
(まさかの反応!)
そういう反応で来ると思わなかったので私は驚く。
「今までゲームばかりで遊んでくれていたし、そんなに話してなかったから気づかなかったよ」
私ともっと話をしたそうに、彼の目が好奇心で輝いている。その私はというと、ただ面白いお姉ちゃんだと思われては、私の気持ちを伝えづらくなるとブルーな気分になっていた。
「そうですか……面白いですか……」
「僕も面白いことが言えたらなぁ」
きっと好宏君は純粋に楽しいクラスの中心になりたいのだろう。
「岡屋君だっておもしろ……! くはないですが、素朴な雰囲気は天下一ですよ!」
あまり親しげにすると嫌われたとしたら怖いという防衛を私はしてしまう。
「え、えと、ありがとう……?」
遠まわしに褒めた私の言葉に好宏君は困ってしまった様子だった。