あの子と遊んでくれって!?
「緑、母さん今からお隣の岡屋さんと出かけてくるから」
私は母親をちゃんと見てない《目線を合わせない》が、理由として本を読んでいるというのはあるんだけどね、何だか動きやすそうな格好をしているなと思う。特にオシャレをしている感じもないのでテニスか何かの運動体験教室に行くんだろうなと予想した。私の母親は結構活動的なのだ。いつもの事か……と生返事で答える。
「だからその間好宏君と遊んであげて」
嫌なわけじゃないが母親に頼まれたことに私は驚いた。聞いてないわけじゃないはずなのに念を押される。
「だからその間、好宏君と遊んであげてって言ってるんだけど」
「岡屋さん家次男の好宏君七歳と!?」
私の問いに、母親に何でそんな聞き方をしてくるのかと聞かれた。
「何で説明口調なのよ、アンタ」
「えっ、うわっ。どうしよう」
何だか少しでも慌てる素振りを見せた私を、母親が呆れ顔で見つめてくる。
「何あたふたしてんの? 今まで何回も預っているでしょ」
私は小学校に入って成長した預かる少年のことを微笑ましいつもりで叫んでいた(実際は何とも言えない感情が……)
「だだだって最近の岡屋君、かっこいいんだもん!!」
「何ぬかしてんだ」
「今の誰にも言わないでよね」
母親からそう言われる。でも私は理解できない。
「どうして? why?」
私が飲み込み悪いせいか私の母親は言葉をオブラートに包むことをやめる。
「キモイから」
私は母親に心配されてしまった。
「子どもに手を出さないでよ?」
「そんなことしないから!!」
私は母親の心配を取り除こうとして、何でだかツンデレ口調で宣言する。ツンデレっぽいということは本心は?
「岡屋君を異性として意識しているわけじゃないんだからね!」
「意識してたらあんた犯罪者予備軍よ?」
私は好宏君のことを意識していなかったといえば嘘になるので少し汗をかいてつぶやく。
「あっ、あぶないところだった……」
「緑葉!?」
母親に出かける直前まで私は無用な心配をかけてしまったが、どうにかごまかして好宏君を連れてきてもらった。
「岡屋くんいらっしゃい、どうぞ座ってください」
「おじゃまします!」
好宏君が可愛らしい声で挨拶してくれた。そして、私がイスをすすめたから座る。
「お母さんが迎えに来るまで何をしましょうか?」
私は好宏君にやりたいことなどないか聞いてみた。それよりも彼は別のことが気になってしまったみたいだ。
「あの、上木さん……体震えてるけど具合悪い??」
好宏君に心配された私は体が震えているのを指摘されたので、喜びを体で表現しているんだとごまかす。
「いえ、久しぶりに岡屋君が遊びに来てくれたから歓喜のあまり……」
「えと……震えてはいないけど僕も嬉しいよ?」
好宏君が困っている感じで嬉しいという気持ちを伝えてくれたので私は尋常じゃないくらい震えてしまっていた。
(やっぱり岡屋くんかっこよすぎる……! そのりりしさに思わず興奮して震えちゃったけど)
私は好宏君がかっこ良く感じ出している。それは別として、私は年上として構うという義務感を考えていた。
(ここはお姉さんとしてちゃんとしっかりしなきゃ!)
「ちゃんと」と「しっかり」は意味が同じような気がするけど……何か考えがまとまらないな私。
「上木さん、どうしたの?」
(うう、眩しい! 眩しすぎるよ岡屋君)
私の様子を岡屋君が心配してくれてしまっている。
「具合悪いの?」
((ナイス気遣い!! 他の七歳児と一味ちがうもの!))
私は好宏君を脳裏で美化してしまって、彼のことをまともに見られなくなる。
「うっ、眩しすぎて直視できない……!」
私が異様な雰囲気を出してしまったせいで、好宏君がそれを感じてしまったみたいだ。
「!?」