友達
うちの高校の制服は、セーラー服だ。
オーソドックスな紺色の布地に、赤いタイ、プリーツスカート。
つき子さんにはセーラー服がよく似合う。
まるで制服という名の衣装を着たお人形のようだ。
漆黒の髪が艶やかに胸におちて、白い素肌を縁取っている。
他の人より少し長めの、膝上丈のスカートが翻ると、白い太ももがちらりと見えてどきりと胸を打ち、思わず目をそらしてしまう。
高校生活が始まってしばらく、私にも友達が出来た。
のんちゃんとはなちゃんという、ふんわりほんわりした女の子たち。
「香蓮ちゃん……だよねぇ?」
「お昼一緒に食べようっ。」
私が人見知りをして、お昼も机で一人で食べようとしていると、二人がお弁当を持って話しかけてきてくれた。
正直、友達が出来ないかもと不安に思っていたので、のんちゃんとはなちゃんにはとても救われた。
3人で居るとおっとりと平和な雰囲気が醸し出されていて、ほっとする。
「これからも、一緒にお昼、食べようねぇ。」
のんちゃんはそう言ってにっこり笑った。私は嬉しくて、こくりと頷いた。
いくつか、分かったことがある。
つき子さんは来る人を拒まないけれど、深い所では繋がろうとしない。
どこか、一線を引いている。
そしてまた、つき子さんに惹かれて集まる人は沢山居るけれど、皆一様につき子さんを憧れのまなざしで見て、「友達」になろうとする人は少ないと言うこと。
そうだよね。
私は納得した。私だって、つき子さんと友達になろうなんて思えなかったもの。
取り巻きのようにつき子さんに群がる人たちの、卑屈で憧憬に満ちたまなざしはまるで……私を見ているようだ。
——私がおどおどしているのをつき子さんが気にしなかったのは、慣れていたから。
つき子さんの変わらない綺麗な笑顔を見ていると、少し、心配になった。
そしてもうひとつ。
そんなつき子さんに突っ込んで行ける人が居ると言うこと。
「つーーーき子っ!」
どしん。
教室に入ってきた可愛らしい女の子が、つき子さんに駆け寄って抱きついた。
わ……。
その場面を目撃した私は思わず硬直した。
つき子さんにあんなに密着するなんて、という嫉妬心と羨ましさ、そんなに親しい存在が居たこと、そして何より……その子がとても可愛らしかったから。
つき子さんと並んでも、見劣りしない。つき子さんが美人だとしたら、その子は可愛いという形容詞の代表格だ。
ブラウンのセミロングのウェーブヘア、小動物のようにぱっちりした瞳、白く透明感のある肌、しなやかな手足。
いつも微笑んでいるのだろう唇は、ぽてっとして口角が上がっている。
……お似合い。
その姿を見てきゅっと胸が苦しくなる。
つき子さんは鬱陶しそうな顔をして、……だけどどこか優しい雰囲気で、その子を見た。
「真紀。離してちょうだい。」
「えっへへ。ごめんごめん。ね、つき子、この後うちに寄って行かない?」
「生憎だけれど、用事があるのよ。」
「そーっ?残念。今度は付き合ってよ〜?」
その子はぱっと体を離してひらひらと手を振って駆けてゆく。その軽やかな様は子鹿のよう。
つき子さんは可憐な溜め息を零した。
私は、二人を遠くから見つめることしかできなかった。