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5757  作者: 華月 ゆき
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委員会

 高校生活が始まって数日、クラスでは委員会決めが行われた。

 クラス委員から始まり、図書委員、美化委員、体育委員など……クラス委員以外はそれぞれ二名ずつ配属される。

 積極的ではない私は何の委員会にも属さないだろうな、と頬杖を付いてぼんやり思っていた。


 「クラス委員?……わたしが?」

 つき子さんは柳眉を顰めた。

 なかなか決まらないクラス委員に、つき子さんは先生から指名されたのだ。

 先生が真っ先に指名するって言うことは、つき子さんは頭もいいんだろうなあ。

 つき子さんがクラス委員になったら、きっとクラスは助かるだろう。

 つき子さんのことを知っている訳ではないのに、そう思わせる、期待を思わず抱かせる雰囲気がつき子さんにはあった。

 「申し訳ないけれど、ご期待には添えません。」

 つき子さんは学校からの帰りが遅くなると困ること、忙しい身辺を説明してきっぱりと言った。

 ああ、と私は残念に思う。

 先生はふむ、と黒板を見直して、つき子さんに向き直った。

 「そう……それじゃあ、美化委員はどう?委員会の集まりも少ないし。」

 「それなら、構いませんけれど。」

 つき子さんは軽く顎を引いて答えた。

 つき子さんが、美化委員。

 他に誰か居ない?と先生がクラスを見回す中。

 「わ、私っ!」

 気付いたら、私は手を挙げていた。

 皆の視線が集中する。

 私は居たたまれなくなって今すぐ取り消したかったけれど、思い切って最後まで言った。

 「私、美化委員、やります……!」


 「災難ね、お互い。」

 つき子さんは口元を微かに緩めて言った。

 向かい合った机の向こうにいるつき子さんが、美しくてまぶしくて、私はどきまぎしている。

 本当に、私立候補しちゃったんだ……。

 自分にこんなに行動力があったなんて。

「でも、そんなことを言ってはいけないわね。あなたは立候補したのだし。」

 つき子さんが居るから立候補しました、なんてとても言えない。

 私はその事実を改めて認識してもじもじと俯いた。

 つき子さんはそんな私を気にすることもなく、口を開いた。

 「ああ、自己紹介がまだだったわね。私は——」

 「し、清水さん、でしょう……?」

 私が思わず言うと、つき子さんは目を丸くした。

 「驚いたわ。あなた、記憶力がいいのね。私、まだクラスの人の名前、覚えられていないもの。」

 それは、相手がつき子さんだから。

 そうも言えず、私は誤魔化すように笑った。

 で?というようにつき子さんは私を視線で促す。

 そ、そうだ。私も、自己紹介しなきゃ……。

 自分の名前はあまり言いたくなくて、いつも言い淀む。

 「わ、私は……櫻宮香蓮(さくらみやかれん)……。」

 自分でも、名前負けしていると思う。花を想わす響きの名前は私には似合わない。

 いつもこの名を口にすると、相手は意外そうな顔をする。

 けれどつき子さんは馬鹿にすることもなく、

 「そう、櫻宮さん。素敵なお名前ね。よろしく。」

 初めて、私に向かって柔らかく微笑んだ。

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