勝負だ『光刃』っ!
俺の背後から何かが飛び出し、俺に飛び掛ってくる。
「勝負だ『光刃』っ!」
「あー、うん…確かに俺、いつでも挑戦は受け付ける主義の人だけどさぁ……
流石に早すぎねぇ!? まだアレから三日しかたってないんだぞ!?」
あの弱小盗賊団……えっと、なんていったっけ? ………ああ、『鬼蜘蛛』か。
やつらをあっさり返り討ちにして三日。
俺はいま、ストーカーに追いかけられています。
「うるせぇ! さっさと俺と再戦しろーっ!!」
「だーかーらぁ…俺、『もっと強くなったら』って言ったよな!? なのになんで付き纏うんだよ!?」
かくかくしかじかっつー問題があるからどんなに面倒でも警邏だとか衛兵だとかに訴えらんないんだぞ!? どうしろってんだよ!?
「だって追いかけないとどっかいっちゃうじゃねーか!」
「いやまー、確かにそりゃそうだけどな!? 居場所を探すってのも重要なファクターだろ!?」
「なんのだよ!?」
「一般的な敵か味方かわかんないヤツと主人公の関係性だっ!」
「意味わかんねーよ!」
――――――ってか、ストーカーに突っ込みいれられちまったよ俺!?
「とーにーかーくっ! 俺と勝負しろ『光刃』っ!」
「だが断るッ! なにがどう強くなったんだか言ってみろよ、クソガキ!」
「クソガキじゃない! ヴァルト・リェースって立派な名前だってあるんぞ!?」
「雑魚でクソ生意気なガキはクソガキって相場が決まってんだよ」
「お前もガキだろ!? それで言ったら!」
きゃんきゃんと吠えまくりながら俺の周りをちょこまかしていたそのストーカー少年…じゃなくて、ヴァルトをきちんと見る。
―――――――うん、赤茶色の…言うなりゃ錆色の髪に、同じ色の眼。
年は俺と同じか…一歳二歳年下か。体つきはよくはないが悪くもない。持っている武器は体に似合わない大人用の鋼鉄製の長剣。しかも粗悪品…まぁ、そこは仕方がない。そんなんでもそれなりにぶん回せてる以上、見かけではわかんないけどこの年にしては相当筋力はあるらしい。
顔たちは……まぁまぁ見れなくはない、ってトコか。
「な、なんだよ…?」
「……考え違いでもしているようだから言っておく。―――――一つ目」
ヴァルトの胸元を掴みあげ、体をひねって回転運動の時に発生する遠心力を利用して前方に放り投げる。
「俺は雑魚じゃない」
「ってェ…何しやがる!?」
「――――――――二つ目に」
そして俺はヴァルトを放り投げたのと別方向に跳んだ。
数瞬前にいた場所に真っ赤な光線が突き刺さる。
―――――――魔力による攻撃だ。
「俺はのんびりと悠々自適な旅生活を送ってるわけじゃねぇんだよ!」
いつの間にか、入り込んでしまっていた相手の結界の中で俺は静かに剣を抜いた。
――――――俺自身否定したいし、拒否したいわけだけど俺はこのウィンチェスタ皇国の皇子…しかも今となっては(面倒極まりなくはた迷惑さ100パーセントだけど)皇太子である。
当然、こういう手合いも多かったし…今なお多い。
俺の年齢に不相応な強さは戦わなきゃ死ぬ状況下にあったからだ。
そうでもなけりゃぁ強くなんかなりたくなかったって…
「レクス・レイリー…その命、われらが主の命により貰い受ける」
「誰がやるかっての」
とはいえ…完全に前衛(皇族としてどうなんだとかはいうな。魔法は性に合わなかったんだよ、一応使えるけど)の俺は多少不利だ。
普段は俺の近侍の真似事をしてくっついててくれるリオンがいるんだけど…ないものねだりしたってしょうがないしな。
「こ、『光刃』…――――――!」
「下がってろよ…無駄死にになるだけだ」
さぁて、死ぬわけには行かないからな…
にしても、俺の言い分信じろって…皇帝なんぞなる気ないっていってんじゃん。
どうして信じてくれねぇのかなぁ…
なぁ、義母上とその取り巻き連中?