ニート? ハッ、上等だ!
「……は、なんだと…?」
俺の住んでる離宮に久しぶりに王都からの使者がやってきた。
あー…母上が死んだ以来じゃねぇ? 母上が死んだのって俺が五歳の頃だから…うわ、十年ぶりか。
とてつもなくめんどくさいけど仕方がない、用件が何か聞いてみたんだけど…後悔した。
「ですから…
第一皇子、リチャード・ボウ・アルナードス・ウィンチェスタ殿下がお身罷れになりました。つきましては第二皇子であらせられるアレクシス・レイ・リゼワール・ウィンチェスタ殿下に王都、『クローデリズ』にお越しいただかなくてはならぬのです」
「それは特に構わない、お会いした事はないとは言え兄上だ…その参列に加わらぬということはできない。
私が問題にしているのはその後のことだ」
あー、だから嫌なんだよなー…王都のヤツと接するの。
一応皇子だから普段使ってる一人称と拡張とか変えなきゃいけねぇし。
「その後…と、おっしゃいますと?」
「何故私が王都に残らなければならない。
王都で生活する皇子はただ一人…皇太子のみではないか!」
それに驚いた顔をする使者殿。
ま、そうだよなぁ…普通は喜びこそすれ、嫌がりなんてしない。
でも、俺は絶対嫌なんだよ、皇太子なんか。
だって皇帝になんなきゃいけないんだよ? なるまでもなっても命バリバリ狙われ続けるんだよ?
俺はこの離宮で引きこもってたいの! ニート? ハッ、上等だ! 悠々自適な生活を望んで何が悪い!
「それについては…殿下の父上であらせられる皇帝陛下に直接訴えてくださいませ」
そう言って使者は再び平伏し、国王陛下からの書を差し出す。
あーあーあーあーあー。やだなぁ…
―――――使者Side―――――
「……は、なんだと…?」
怒りをかみ殺したような低い声にぞくりと背筋が震えた。
まだ十五である皇子と対峙しているはずなのに、陛下に報告をするため対峙しているような錯覚すら覚える。
「ですから…
第一皇子、リチャード・ボウ・アルナードス・ウィンチェスタ殿下がお身罷れになりました。つきましては第二皇子であらせられるアレクシス・レイ・リゼワール・ウィンチェスタ殿下に王都、『クローデリズ』にお越しいただかなくてはならぬのです」
「それは特に構わない、お会いした事はないとは言え兄上だ…その参列に加わらぬということはできない。
私が問題にしているのはその後のことだ」
その畏怖を努めて感じさせないように平坦な声で先ほど言ったことを復唱した。
だがそれに打って返すかのような速度で皇子は返答する。
「その後…と、おっしゃいますと?」
「何故私が王都に残らなければならない。
王都で生活する皇子はただ一人…皇太子のみではないか!」
通常ならば喜ぶべきであろう。
アレクシス殿下の御生母は皇帝が気まぐれに手を出した者であった。
故に、後ろ盾となるような親族はおらず…このような機会がなければ国政にかかわるようなこともされずこの離宮で一生を終えることになっていたはずだった。
それを喜ぶことなどなく、怒りを表すとは…
「それについては…殿下の父上であらせられる皇帝陛下に直接訴えてくださいませ」
この方は捨て置かれていたがために「皇太子」としての資格がないのだと思っていらっしゃるのだろう。
しかし、それは違う。
何人もいる皇子、皇女殿下のうち、父であらせられる現皇帝陛下に最も似ていらっしゃるのはこの方だ。
そして皇帝陛下もそれを見抜かれておられる。
……この方の御世はいったいどのようなものになるのだろうか。




