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僕の隣

作者: ハル

 教室から校庭を見下ろせば、短いポニーテールをぴょこぴょこと揺らして走っている彼女がいた。

 一年のテニス部は今日もコートに入れてもらえないらしい。

 おそらく彼女は一生懸命走っているのだけれど、小走りという表現が似合う。

 彼女と僕の母親同士は仲がよく、物心がついたときにはすでに隣にいた。

 いわゆる幼馴染というやつだ。

 それこそ、小さい頃なんかは一緒にお風呂にも入った仲だ。

 彼女が友達とストレッチを始める。

 背中に体重をかけられ精一杯前のめりになる様子は、見ているこちらまで痛くなりそうだった。

 バレエを習っているという藤堂さんは、きっとあんなもの軽がるとこなすのだろう。

 藤堂さんは、クラスで一番可愛いと男子の間で噂の女の子だ。

 その藤堂さんが、クラスでも地味で目立たない部類の僕なんかに告白をしてきたのだから、人生何が起こるかわからない。

 実のところ、今にも教室に戻ってきて、罰ゲームでしたーなんて、あの可愛い顔で無邪気に舌を出されるんじゃないかと思ってしまう。

 藤堂さんの告白はそのくらいさらっとしたもので、まるで今日はいい天気ねとでも言うようだった。

 相当間抜けな顔をしていたのだろう。

 藤堂さんは口元を隠すように手を当て、かすかに聞こえる息遣いで笑った。

 正直に言おう。

 僕は藤堂さんのことを可愛くて、優しくて、それでいて知的な女の子だと多少なりとも想いを寄せていた。

 だけど、その笑顔を見て観念したのだ。

 僕の胸を締め付けるのは、心を躍らせるのは藤堂さんではなく、彼女の笑顔なのだと。

 綺麗な歯並びでにこっと笑う藤堂さんではなく、すきっ歯を気にして慌てて口を閉じて微笑む彼女なのだと。

 校庭ではうさぎ跳びが始まった。

 彼女はというと相変わらずで、一回飛ぶごとによろっと手をついてはまた一回。

 それでも立ち上がることはない。

 ふわふわと髪を揺らしながら、人より短い飛び幅で、少しずつ少しずつ進んでいく。

 彼女が僕の気持ちを知ったら、なんて言うだろう。

 どうしよう?なんて告白した本人に尋ね、爪を噛むかな。

 それとも、付き合ってあげてもいいけどなんて、言ってくれるだろうか?

 少し早口の、消え入るような口調で。

 彼女がようやく一週し終えたようだ。

 誕生日に僕があげたタオルで汗をぬぐう。

 さてこの想い、君にいつ伝えようか。

1000文字小説です。

「恋したくなるお題(配布)」様の「恋 に気づいた友愛のお題」を使用させて頂きました。

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