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雨中のタクシーシリーズ

雨中のタクシーにて・前編

作者: 時流 幌

 初めて挑む推理小説で

お目汚しになると思われますが、

どうぞ最後までお楽しみください。


 短編2本分で終わらせる予定なので、短編シリーズという形に

しました。間違っているというご指摘がある方は、メッセージ

でご指摘をお願いします。


 ザーザー……

 

 雨が降り続ける。

 冬真っ只中の寒い時、

 俺は駅前の乗り場でタクシーを待っていた。

 昼時とあって人はまばらだった。

 既に15分は待っていて、 

 傘を持ち、水に濡れた手がかじかみ痛みさえ感じる。

 

 しばらくすると目の前に、青い車体に緑色の線が横に入ったタクシーが

 止まってきた。

 ドアが開き、俺は傘をたたみ、その中に入っていった。

 

 

「お客さん何処までですか?」

「あぁ○×駅に行ってくれ」

「結構遠いですね、時間かかりますよ」

 俺を土地勘が無い者だと思ったのかそう訊いてきた。

「構わない」

 

 どれ位走っただろうか急に運転手が話しかけてきた

「雨、ひどいですねぇ。ワイパーもあんまり役に立ってませんよ」

 そう言われて外を眺めた。

 雨のせいで、外を走る車の明かりがぼやけて見えるだけだった。

「全くそうですね。困ったもんです」

 それきりだった。

 

 又かなり時間が経った。

 雨は弱くなり窓からは外が見えていたが、まだ天井を雨粒は叩いていたのだった。

 しかし音はしなかった。

「静かですね」

 そう切り出した。

「えぇタクシーは皆そうです防音になってるんです」

「しかしこの窓。厚すぎやしませんか?防音目的にしては」

 窓をたたきながら俺は言った。

「ばれましたかこの辺りじゃ強盗が多いですからね。強化ガラスになってるんですよ。

 いやー高かった。」

 と笑いながら運転手は言った。

「強盗といえば―先日この辺でなんかありましたよね―何でしたっけ?」

 そう訊くと、運転手は少し考えた素振りをして、こう言った。

「あぁ確かこの辺で一家全員殺害事件がありましたよ」

「思い出しましたよ!でも確か一人生き残りがいたような気が」

「そうですよ!そんな物騒なことがあってから。ガラス変えたんですよ」

「そうですか」

「そういえば通りかかりますよ現場に」

「なんですって!?」

 ○×駅への道にそんなもの無かったはずだが?

「ほらココですよ」

 その家は2階建ての普通の民家だった。

 玄関には規制線が無かった。事件から1年も経っているのだから当たり前だが。

 黙っている俺に運転手が話し出した。

「事件では家族以外の指紋も検出されず、窓も破られておらず犯人の進入経路も不明

 ヒントは生き残った一人の証言だけです。凶器の包丁も見つかっていません。

 謎ですね」

「良く知ってますね。因みに私見を述べさせてもらうと

 見たところこの民家は人通りが少ない裏通りからも侵入できますし

 事前にドアの合鍵を作ったり、ピッキングしたり色々痕跡を残さないように

 侵入することも出来るのではないですか?」

 俺がそう言うと、

「そうだとすると・・・妙なんですよ。

 動機がない。被害者の家族には恨みを買うようなこともないそうで。

 どうしてでしょうね?」

「それは―」

 俺が言いかけると運転手は、

「つまり!犯人は、外部犯ではなく生き残りであると、そう結論付けることができる

 ということです」

 と割り込んできた。

「無茶苦茶だ……そんなことは有り得ない!怪我を負っていたんですよ」

「そんなもんは偽装できます。そしてそうならば、生き残りが怪我しか

 していないということも説明できます」

「そうですか、俺はならこう考えます。犯人は殺人そのものが動機だった。

 だから金はとられなかった」

「そういう考え方もできますね」

「そういえばあなた。何故事件のことについてそんなに詳しいんですか?

 凶器が包丁であることも、生き残りの怪我が腕であることも。

 それはあなたが犯人だから知っていたのではないですか?」

 そう俺が言い切ると、

「……」

 黙りこくってからこう言った。

「当たり前ですよ私は―

 担当捜査官だったんですから」

 

 

 ?

「もっとも今は() ですがね。

 私はね、この事件が解決できないことが悔しくて。

 しかし、組織の中でできることは限られていますからね

 やめてしまったのですよ」

「……」

「逆に。私のように捜査官でもない人が何故それらのことを知っていたのか。

 それはつまり、あなたが犯人だということです。○×駅は空港に近いですからね

 高飛びでもする気ですか?」

「……」

「どうなんですか?はっきりして下さい!」

 運転手は語気を強めてそう言った。

「こうなっては仕方がありませんね。実は私が―」

 

「生き残りなんです。その事件の」

 俺はそう言った。それから、

「大体あなたが本当に捜査官だったのかそんなことは

 証明できません。つまり、あなたが犯人である可能性もあるということです。

 まだこの辺で犯人を捜しててよかったです。よく言うでしょう

 ”犯人は現場に戻ってくる”、と」

 と言った。

 運転手は一瞬微笑を浮かべた。意図は分からなかった。

 ~続く~

 どちらが犯人なのか推理してお待ちください!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 謎がなかなか解けません(自分が・・・) しっかりしてておもしろいと思います! [一言] 後編も待ってます!
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