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デート当日、婚約者の幼馴染が体調を崩してしまった

作者: ぴょる
掲載日:2026/04/17

「リリーが体調を崩したと連絡が……」

「えっ……」


私はリーナ。しがない令嬢である。


そして今日は婚約者のユーリ様と初めてのデート、のはずが……

待ち合わせ場所にユーリ様が来て開口一番がそのセリフだった。


リリーはユーリ様の幼馴染だ。

領地が隣同士でよく交流していた。

リリーは生まれつき体が弱く、よく体調を崩している。

ユーリ様はリリーを気にかけよく見舞いに来ていた。


そして……


「大変だわ! 今すぐリリーの所へ行かなければ!」

「ああ!」


私もリリーの幼馴染である。


---


「デートしろよ!!!!!」


お屋敷中にリリーの声が響いた。


「なんで二人そろって見舞いに来てんの!? デートしろよ! カフェいけよ!! そんでさっさと結婚しろー!!」


「り、リリー、そんなに大声出しちゃ体に障るよ……」

「そうよ、リリー。ああ、顔も真っ青で……」

「誰のせいだと思ってんだ。おえ……」


リリーはぐったりと枕に倒れこんだ。


「せっかく、げほっ、ようやくのデートなのに……」

「大丈夫よ、リリー。デートなんてまたいつでもできるわ」

「そうだよ。今はそれよりもリリーの体調が……」


「ユーリ、このデート誘うのに何か月かかったと思ってんのよ」

「うっ」

「三か月よ三か月! リーナの都合がだのリーナの気持ちがだの言い訳して全然動かなかったユーリの首根っこつかんでリーナの所に向かわせたの私よ!?」


確かにユーリ様からデートのお誘いを受けた時、なぜか横にリリーが立っていた。

デートプランの説明も、そういえばリリーがしていた。


「リーナも!」

「はい!」

「今日の服、一緒に選んだじゃない……! ユーリが好きそうな色とか、雰囲気とか、げほ、私も一生懸命考えて選んだ服なのに……」

「リリー……」

「ようやくこぎつけた二人のデートなのに、私のせいで台無しなんてあんまりだわ……」


先ほどまで叫んでいたリリーは今度はしおしおになって涙を流している。

情緒が忙しそう……


「リリー、泣かないで」

私はリリーの手を握った。

思ったより冷たくて、やっぱり体調が悪いのだとわかる。


「リリーが私のために色々アドバイスをくれたの、凄く感謝してるの。ユーリ様の事もたくさん相談に乗ってくれて……、そんな大切な人が体調を崩したら駆けつけるのは当然でしょ?」


ユーリ様も前に出た。


「そうだよ。優柔不断な僕の背中をリリーは押してくれた。リーナは僕の大事な婚約者で、当然愛してる。でも、リリーだって僕にとって大切な人なんだ」


「……ばか」

リリーが絞り出すように言った。

「二人そろって何言ってんの。ばか。ばかばかばか」


「……ねえ」

落ち着いた声になった。

「お見舞いに来てくれたのは、嬉しかったわ。本当に」

「リリー……」

「でも。私が今一番つらいのは、体調じゃなくて」

リリーはゆっくりと私たちを交互に見た。

「三か月かけてセッティングしたデートが、私のせいで消えたことなの」


沈黙が落ちた。


そうだ。リリーもこのデートを楽しみにしていたのだ。

帰ってきたら話聞かせなさい、と。

どんな雰囲気だったか教えて、と。



「……ユーリ様」

「わかった」

ユーリ様の返事は早かった。


「リリー、ちゃんと薬飲んで、安静にしていて。お医者様の指示に従って」

「言われなくてもそのつもりよ」

「リリー、お土産は何がいい? 王都に最近雑貨屋ができたのよ」

「私の事は考えなくていいからさっさと行って」

「ふふ、わかった」


「楽しまなきゃ絶対許さないわよ!」

「たくさん楽しんでくるわ!」


私はユーリ様と手を繋ぎながらリリーの屋敷を後にした。

まだまだ時間はある。


カフェにも雑貨屋にも行ける。

リリーが提案したデートプランとは少し変わってしまうけど、きっとリリーも喜んでくれるだろう。


リリーに話せるように、今日はユーリ様と思い出をたくさん作ろう。


---


後日

リリーの屋敷にて


「それでね、カフェのケーキが美味しくてね、イチゴのタルトなんかリリーが好きそうな見た目で、ユーリ様も同意してくれて……」


「……」


「カフェから見える景色もすごく綺麗で、今度はリリーとも一緒に行きたいねってユーリ様と話したわ」


「…………」


「雑貨屋ではユーリ様がこれリリーに合いそうって猫の置物を指してて、でも私はガラスの小鳥の方が似合うって思って、ちょっとだけ言い合いになってしまったわ。結局どっちも買ったのだけど。あ、はい、これがそれね。リリーにあげるわ」


リリーは猫の置物とガラスの小鳥を受け取った。


「……リーナ」

「? 何? リリー」


「もっとこう、ないの?」

「何が?」

「こう……二人で将来について語り合うみたいな」


「あ、そうそう! 帰り道にね、ユーリ様が急に立ち止まって……」


リリーは姿勢を正した。

やっと来た。

「なんて言ったの」


「『リリーが元気になったら三人でここに来よう』って」


「…………」


「ロケーションが素敵な橋の上でね、夕焼けがきれいで……」


「そこで言う言葉がそれなの!?」

「え?」


「夕焼けの橋の上で立ち止まって、それ!?」


「え、だって三人で来たいのは本当のことで……」


「そこはね、リーナ」

リリーはこめかみを押さえた。


「二人の話をするところなの。三人じゃなくて」


「……あ」


「わかった?」


「…………実は」

リリーは再び姿勢を正した。


「その後にね」


「うん」


「もう一回立ち止まって……」


「うん!」


「『リーナ、愛してる』って」


「そういうのよ!!!! そういうの!!!!!」

リリーは布団を跳ね除けて身を乗り出した。


「リリー?」


「ああ……よかったわ、本当に」

さっきまでの剣幕が嘘のように、リリーは静かに笑った。

猫の置物とガラスの小鳥を胸の上で抱えて。


「さぁほら、もっと聞かせなさい」

「え、ええ……?」


「まだまだあるでしょ。帰り道はどうだったの? 手は繋いだままだったの? 他にキュンとした言葉は無いの?」

「り……リリー落ち着いて……」


「こっちは三か月待ったのよ! 早く教えなさい!」

「ひええ……」


どうやらリリーにとって、恋バナは薬よりよく効くらしかった。


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― 新着の感想 ―
めちゃくちゃ素敵な「病弱な幼馴染」じゃないですか! そりゃあデートをやめてお見舞いにも駆けつけちゃいますよw
病弱な幼馴染みが婚約者達の共通の幼馴染みって展開は初めて見た。デートしてる場合じゃねぇ、早く見舞いに行かなきゃ!な幼馴染み達に振り回されるリリーさんが苦労人すぎる。早く回復してさっさと嫁に行くか婿を貰…
リリーのデートしろよ!でめちゃくちゃ笑ってしまった。 その後のリリーの献身を見てこっちも早くデートに行けって心のなかでツッコミ入れてました
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