新たな出会い、もしくは危険な出会い
「こ、これは!」
(いくら信用出来るって言っても何も無しは、まずい!)
誤魔化せる言い訳を考えようと思考を巡らせるが、そんなものは見つからない。
今ここで、白人だとバレるのは危険だ。
暫く時間を過ごした後に、相談を掛けようと思っていたテスターにとって、これは誤算だった。
「……私達は、あんたの事を息子同然だと思ってる」
世界一美味亭を営んでいる店主と、その奥さんはテスターを幼少の頃から知っている。
「……」
「でもね、これは別問題だ」
「…分かってる」
「テスター、白人がどういう存在かは知ってるよね」
「知ってるけど、俺はこいつを利用する気はない」
ただ目の前に困っている人がいたから助けた、それ以上もそれ以下もない。
「もし見つかれば、あんたが信用している王様も目の色が変わるかもしれない」
「……」
「この国どころか、いくつもの国を巻き込むことになる、それは分かってるんだろうね」
「分かってる、でも俺は…!」
「なら、言うことは無いさね」
「…え?」
「ほら、帰った帰った店仕舞いだ」
「良いのかよ」
「良いも何も、覚悟を決めた男に野暮なことは無しだ」
「マダム…」
「その子のことは誰にも言わない、けどバレても私達は匿わない」
「……ああ、それで良い」
厳しい話ではあるが、この世界において白人と呼ばれる人種は、それだけの存在であることを認識して欲しい。そして覚えておいて欲しい。
この世界で一国の軍隊に匹敵する力を、一人の人間が匿うことの意味を。
「で、どうするんだい」
「当面は家に居て貰うつもりだ」
「あんたが外に出てる間は、どうするんだい」
「……留守番して貰う」
「何だい、覚悟を決めてる割には何も考えていないんかい」
「けど、白人を匿ってくれる人間に心当たりが…」
「それなら、良い当てがあるじゃねぇか」
「そんなの、どこに―――あっ」
目の前に、白人だからと差別せずに受け入れてくれた人達がいるではないか。
「私らで面倒を見るよ」
「……!」
「それは良いが、お店はどうするんだよ女将さん」
「店なんて若い子達に任せれば良いさ、あとはその子次第さね」
「……私は」
(ピュアがもし、そうしたいなら俺は…)
理由は分からないが、テスターの胸が苦しくなる。
「スターが一緒なら、どこでも良い」
「…!ピュア、お前…!」
その一言に、どこか嬉しくなる。
「なら決まりだな」
「あんたも来な、テスター」
「俺も…?」
「どの道、空いてる部屋が二つある」
「バカ息子共が、出て行って空いてんのさ」
二人には息子がいるが、両方とも軍に入隊し今は別々に住んでいる。
「だからって、俺は俺の家が」
「どうせ、ろくに片付けられてないんだろ?」
「ぎくっ」
「年頃の女の子を、そんな男の部屋には置いておけないさね」
「…分かったよ、俺もマダムとマスターの家に住むよ」
ピュアの出した条件は、テスターと共にいる事。
テスターも、ピュアが近くにいないと心配なのもあり、渋々承諾。
「そう言えば、自己紹介して無かったさね」
「…?」
「私はマダム・アライ、世界一美味亭の女将さ」
「俺はマスター・アライ、世界一美味亭の店主だ」
こうして二人は、マダムとマスターの家に引っ越すこととなった。




