出会い、もしくは世界を変える選択
この世界ではモンスターと呼ばれる、異形の怪物達が跋扈している時代。
そんな時代で、冒険者と呼ばれている者がいた。
「ったく、こんな森の奥にまで逃げやがって」
「ガ、ガァッ…」
冒険者はモンスターを倒し、それをギルドと呼ばれる国が管理する冒険者専門の公的機関だ。
この物語の主人公である彼は、これで生活している。
「まぁこれだけ倒したんだ、ある程度は貰えるだろう」
そう言う彼が来た道には、無数の小鬼の死体が広がっていた。
(戻るには少し面倒だが、まぁ今日の内には着くだろ)
帰る頃には夜になるかもしれないが、目印もある上に風呂にも入りたいし、温かい寝床に着きたい。
その一心で、歩み進めようとした時だった。
「…誰だ」
(何だ、この魔力の大きさは…)
この世界には魔法が存在し、その源である魔力も当然存在している。
なのだが、今感じている魔力は信じられない程に大きい。
(とんでもねぇ奴なのは、間違いなさそうだ)
腰に据えた剣に手を掛け、身構えているとガサゴソと音が鳴る。
静かな森の中では、誰でも気が付く騒音になる。
「出てこい、そこにいるのは分かってる」
「ご、ごめんなさい…殺さないで…」
「き、君は!」
音を鳴らしながら出てきたのは、白人の少女だった。
この世界での白人は、強力な魔法を扱い、その力は一国の軍隊にも匹敵すると言われている。
その強さ故、道具として扱われニ十年前に絶滅したと言われている。
(絶滅していなかったのか、いやそれよりも)
主人公が驚いたのは、絶滅したはずの人種が生きていることにもだが、真っ先に思ったことが一つ。
(明らかに細すぎる…)
骨を皮で包んだだけと言われても納得してしまう程の細さ、白人特有の色白さも相まってか、かなり貧相に見えてしまう。
「わ、私、白人じゃないから…」
「……(相当、怯えているな)」
恐らく、生き残った両親か同じ白人から何をされたのかを聞かされて来たのだろう。
魔法の動力源、他国を侵略する為の駒、或いは慰め者、一重に強力な魔法と言っても、白人はその珍しさ故に、コレクションと称して奴隷にしたがる者もいた。
とても胸糞の悪い話ではあるが、今は絶滅した人種として、そのように扱われている白人はいない。
(全員死んじまった、ってオチだが…)
もし仮に、この白人の少女が他の誰かに見つかれば、確実に死んでしまった白人達と同じ目に遭うだろう。
それは避けねばならない。見た所、12歳前後だ。こんな年端も行かぬ少女を、そんな目に遭わせるのは趣味ではない。
「あ、あの…」
「嬢ちゃん、行く宛は」
「……ない、です」
「…まぁ、そうだよな」
こんな森の奥を布切れ一枚で歩いているのだ、いくら強力な魔法が扱えると言っても、食べる物が無ければ生物である限り、死んでしまう。
だからと言って、このまま自国に連れて行くのはどうなのだろうか。
主人公は生まれてこの方、白人を見たことが無い。
故に、誰がこの幼い少女に狙いをつけるか皆目、見当が付かない。
(うーん、一体どうしたものか…)
助けてはやりたいが、助けた所で何が出来るのか。
何をしてあげれて、何をしてあげれば良いのか。
頭をこれでもかと捻らせ、悩ませる。
「あの…」
すると、気まずいのか、それとも他に何か用があるのか、少女は声を掛けてきた。
「どうした?」
「…もう、行っても良いですか」
「……いや待て」
「で、でも私、白人じゃありません!だから、だから見逃して―――」
「俺の家に来い、飯もあるし風呂もあるし、寝床もあるが、どうだ」
「……へ?」
「へ?じゃなくて、はいかいいえだ」
やつれた白人少女を見過ごせる程、主人公は人が悪くない。
「良い、んですか…?私、魔法も使えないし、何も出来ないですよ…?」
不安そうに尋ねる少女に、主人公はこう返す。
「大丈夫だ、俺も戦うこと以外は何も出来ん!」
「…ぷふっ、何ですかそれ」
「何だとは何だ、これでも必死に生きてるんだぞ?」
「だってそれ、自分で役立たずって言ってるようなものじゃないですか」
「悪いかよ」
「いえ、悪くないです」
「…そっか!」
ようやく見せた笑顔の美しさに惹かれながらも、主人公も最大限の笑顔を返した。
これが白人少女と、浮浪冒険者の初めての出会いだった。
13行目~18行目 変更 2026.3.25




