お揃いの愛の証
レンタカーを駐車場に停め、美優と彩花は、静かに伝統工芸館の展示室へと足を踏み入れた。
館内には、加賀友禅の鮮やかな色彩、繊細な金箔細工、そして九谷焼の力強い絵付けなど、金沢の工芸技術の粋が並んでいた。二人は、一つ一つの展示品を熱心に見つめる。
彩花: 「美しいですね、美優。この繊細な作業を、何代にもわたって受け継いでいるなんて、私たち警察官の『真面目さ』にも通じるものがあります。」
美優: 「そうだね、彩花。規律と伝統を守り続ける職人の精神。この静かな空間にいると、署内の喧騒を忘れることができる。」
展示品を前にした二人は、会話を交わしつつも、自然と距離が近づき、二人だけの空間が広がっていく。他の観光客がいるはずなのに、お互いの存在しか目に入らないようだった。
ひととおり伝統に触れた後、二人は販売コーナーへと足を運んだ。
ここで美優が、前回の旅行で心残りだったことを思い出した。
美優: 「彩花。この旅の記念に、何か買わないか? 前回は、お揃いのものを買うのを忘れてしまったからな。今回は、私たち二人の愛の証となるものを手に入れよう。」
彩花は、その提案に満面の笑みを浮かべた。
彩花: 「美優、いいんですか! ぜひ! 寮の部屋に飾れる、誰にも悟られないけれど、私たちだけが分かるものがいいですね。」
二人は、販売棚をゆっくりと見て回り始めた。アクセサリーや食器、小物など、様々な品がある中で、二人が目を付けたのは、加賀水引を使った小さな飾りだった。それは、複雑に編み上げられた、小さな『梅結び』の根付だった。一つは落ち着いた藍色、もう一つは優しい朱色。
彩花: 「美優。これ、どうですか? 梅結びは、固く結ばれた絆という意味があるそうですよ。それに、色違いなら、『恋人同士』だと誰も思わないでしょう?」
美優: 「素晴らしい。固く結ばれた絆……まさに私たちだ。よし、これにしよう。」
二人は、その藍色と朱色の梅結びの根付を購入した。その小包を鞄にしまった瞬間、二人の心に、また一つ、公的な世界には存在しない、秘密の愛の証が増えたのだった。




