叶えるべき6つの願い
密やかな乾杯を終え、新幹線は長野を過ぎ、富山駅へと到着する頃合いとなった。旅の終着点である金沢が近づき、二人の期待は最高潮に高まっていた。
前回の伊豆旅行の時のように、宿での時間を最大限に楽しむための「儀式」を、彩花が切り出した。
彩花: (小声で、ワクワクした表情で)
「美優。宿に入ってから何をしたいか、お互いに3つ言いましょう。今回の昇進祝いの旅で、叶えるべき愛の目標です!」
美優: (笑みを浮かべ)
「よかろう。では、まずは君から、巡査長殿。」
【橋本彩花(巡査長)の3つの願い】
彩花: 「はい! 私の目標、一つ目は――『露天風呂で美優を正面から抱きしめること』。制服を脱いで、階級のない場所で、思い切り!」
美優: 「(少し頬を染めながら)了解だ。二つ目は?」
彩花: 「二つ目は――『昇進おめでとう、という手書きの小さなケーキを、二人でこっそり食べること』。お祝いを、私たちだけの形でしたいです。」
美優: 「良いね。事前に準備してくれていたのか。楽しみだ。そして三つ目は?」
彩花: 「三つ目は――『朝まで、仕事の真面目な話と、愛の真面目な話を、何度も行ったり来たりしながら話し続けること』。あの時の加藤教官の言葉を胸に、美優と本音を全部共有したいんです。」
【上村美優(巡査部長)の3つの願い】
美優は、彩花の願いを聞き終え、手を握り返しながら、自身の願いを語り始めた。
美優: 「私の目標、一つ目は――『長旅の疲れを理由に、君の膝を借りて、何時間も眠ること』。誰にも見られない離れで、君の優しさに甘えたい。」
彩花: (優しく微笑み)「喜んで、美優。」
美優: 「二つ目は――『あの卒業式の写真に写っている、若かった頃の私たちについて、一晩中、照れずに語り合うこと』。原点に戻り、私たちの絆の強さを再確認したい。」
彩花: 「ロマンチックですね、美優。」
美優: 「そして三つ目は――『翌日のチェックアウトのギリギリまで、君の温もりを感じて離れないこと』。昇進で、また次に会える時間が遠くなるかもしれないから、この時間を一秒も無駄にしたくない。」
二人が6つの願いを語り終える頃、新幹線は速度を落とし、車内アナウンスが流れ始めた。
「まもなく、終点、金沢です。」
「巡査部長と巡査長」としての厳格な表情を整えながらも、二人の心は、湯涌温泉の離れの露天風呂へと急いでいた。




