グリーン車での密かな乾杯
新幹線が、群馬県の高崎を通過する頃。会話が一段落し、車内の雰囲気に慣れてきた彩花は、朝コンビニに寄った際に買っていた小さなノンアルコールビールを思い出した。
彩花は、鞄からそれをこっそり取り出し、美優に差し出した。
彩花: (小声で、瞳を輝かせながら)
「美優。これ、昇進祝いですよ。ノンアルコールですけど、乾杯しましょう。」
美優は、その遊び心と、彩花の心遣いに目を細めた。
美優: 「粋な計らいだね、巡査長殿。では、極秘の乾杯とさせてもらおう。」
二人は、周囲の乗客に気づかれないよう、缶を小さく持ち上げ、音を立てずにそっと乾杯を交わした。
「おめでとう、美優。」
「おめでとう、彩花。」
グラスのないままの、手のひらだけの乾杯だったが、その喜びは本物だった。
その嬉しさに、彩花は思わず美優の肩に、そっと自分の顔をもたれかけた。ほんの一瞬だけ、制服の硬い生地の上から、美優の温もりを感じたかった。
美優: (ドキリとし、すぐに小声で囁く)
「彩花、見られちゃうよ。ここはコンパートメントじゃないんだ。」
彩花: (顔を上げず、美優の肩に額を押し付けたまま、甘えるように)
「大丈夫ですよ、美優。ちょっとだけなら……。誰も見てません。」
美優も抵抗することなく、ごく短い時間だけ、その重みを受け止めた。公の場での、ほんの一瞬の、禁じられた愛情表現。その刹那には、初めてのデートを思い出すような、初々しさと、罪の意識にも似た甘さが混ざり合っていた。
二人はすぐに姿勢を正したが、昇進の喜びと、秘密の場所での接触の興奮が、静かに二人を満たしていた。




