羨む場所、希望の場所
二人が乗る車が、少し賑やかなエリアに差し掛かった時、車窓に特徴的な、煌びやかな外観の建物が映り込む。
橋本はそれをちらりと見たが、すぐに目を逸らした。
しかし、上村はその様子を見逃さなかった。
上村美優: 「……(咳払いをして)そういえば、彩花。さっきの、あの建物……。ああいう場所って、私たちには縁がないけど……なんていうか、『日常から完全に離れた空間』っていうのかな。ああいう場所で一晩過ごすのって、どんな気分なんだろうね…」
橋本彩花:(上村の意図を察し、少し頬を染めながらも、冷静を装って)
「た、確かにね…。あの、『完全に二人だけの、密室』という感じは、私たちの普段の生活からは程遠いというか……。女子寮では、どうしても壁越しに人の気配があるから、ああいう『何の気兼ねもない時間と空間』は、ちょっと羨ましいかもしれないな…なんて。」
上村美優: 「そうだよね。『公務』から完全に離れて、周りの目も気にせず、心からリラックスできる時間……。それが、『たった二人だけ』の時間だったら、どれだけ心が安らぐだろうって。私たち、いつも制服を脱いでも、どこかで気を張っているところがあるからね。」
橋本彩花: 「うん……。特に美優は巡査長になったから、私なんかよりもっとね。だからこそ、私たちに必要なのは、あの、ただ寝るだけじゃなくて、『二人の関係を深めるための、特別な場所』なのかもしれない。心も体も、深く安らげるような……。」
上村美優: 「そうだね…。『気持ちが通じ合っているからこそ、安心して全部を預けられる場所』。そういう場所と時間が、私たちには必要かもね。」
橋本彩花: (前のめりになって、笑顔で)
「だから! やっぱり、温泉旅行しかないよ、美優! 露天風呂も二人きりで貸し切りにできる旅館を探して、誰も知らない、私たちだけの『完全な非日常』を過ごそうよ!」
上村美優: 「そうだね! 露天風呂でゆっくり温まって、浴衣に着替えて、美味しいものを食べて……『特別な場所』なら、きっと私たち、心ゆくまでリラックスできる。あそこよりも、ずっとずっと素晴らしい時間になるよ。」
橋本彩花: 「うん! 決まりだね! その一泊が、私たちにとって、何よりも大切な『絆を深める時間』*になる。
…ああ、考えるだけで、もうニヤニヤが止まらないよ!」
上村美優: (嬉しそうに笑い)
「本当だね! よし、あの旅行を目標に、明日からまた真面目に、誇りを持って職務に励むぞ! 彩花!」
橋本彩花: 「おー! 頑張ろう、美優!」
(二人は繋いだ手を再度強く握りしめ、温泉旅行への期待を胸に、真っ直ぐ家路を急いだ。)




