「聖域」へのカウントダウン
まず、二人は旅行の日程を2週間後の「非番の金曜日」と、翌日の「昇進特別休暇の土曜日」に充てることを決定した。
この2日間は、誰にも邪魔されない、完全な「オフ」となる。
美優は、早朝の時間を狙って北陸新幹線の切符を手配した。
今回は、少しでもプライバシーを確保し、道中の緊張を解くため、奮発してグリーン車に乗車することにした。
日程確定の翌日、美優が人事課に休暇申請を提出。
そのさらに翌日、彩花も人事課に申請を提出した。
・・・休む日は同じでも、別々に出し、少しでも「二人で同時に休む計画性」を怪しまれないように、という細心の心遣いだった。
日程が確定すると、手配係の彩花が動き出した。
美優とのショートメールのやり取りは、もちろん極秘。
* 彩花から美優へ:
「作戦コード:北陸の聖域。『離れの件』、無事確保しました。チェックイン14時、チェックアウト12時、約束通りです。」
* 美優から彩花へ:
「さすが愛しい巡査長殿。作戦成功、感謝する。あとは現地でのレンタカーの手配、頼む。」
・・・
そして、旅行1週間前。いつもの週末の「勉強会」の日がやってきた。
部屋のドアが閉まると、美優と彩花はすぐに昇進祝い兼旅行計画の最終調整に取り掛かった。彩花は、宿のパンフレットと、新幹線の時刻表、そして金沢市内の地図を広げた。
彩花: 「美優、最終確認です。金曜の朝、始発に近い新幹線で金沢に向かい、午前中のうちにレンタカーを借りて湯涌温泉へ。これなら、約束の14時のチェックインに余裕で間に合います。」
美優: 「完璧だ。早朝の駅で会う時だけは、少し緊張するがな。だが、あのグリーン車の密室で、私はまず、君に一週間分の愛の抱擁を要求する。」
彩花: 「ええ、もちろん! でも、宿に着いて、離れの露天風呂に二人で入った瞬間が、本当の解放です。見てください、美優。」
彩花はスマホで、予約した宿の露天風呂付き離れの画像を美優に見せた。木々に囲まれた静かな露天風呂と、広々とした和室の画像。
美優: (画像を見つめ、息を呑む)「……伊豆を越えたな、彩花。あの風呂に浸かりながら、誰にも邪魔されず、君の昇進を祝える。これ以上、何を望むというのだ。」
彩花: 「昇進の喜びも、仕事の愚痴も、全部あそこで洗い流しましょう。そして、土曜のチェックアウトまで、ひたすら二人の時間を楽しみ尽くす。今回は、二人の『巡査部長と巡査長』の新たなスタートの旅です。」
二人の表情は、既に北陸の温泉郷へと向かっていた。愛の聖域の再来を前に、美優と彩花の気持ちは最高潮に高まっていった。




