希望への「ふたり」の約束
(美優の昇進話も、都市公園でのランニングも終え、帰り道になった。
今度は上村が運転し、橋本は助手席で非番の日を満喫したような顔で外の景色を眺めている。)
橋本彩花: 「あー、楽しかった! 体動かして、美優とたくさん話せて、最高の非番だったね!」
上村美優: 「そうだね。私も、ようやく昇進話も出来たし、いい汗もかけたし、リフレッシュできたよ。…ありがとう、彩花。」
橋本彩花:「いいえ…」
彩花は、シフトレバーに載せていた美優の左手にそっと右手をのせる。
二人の貴重なひとときが車内を包む。
橋本彩花: 「...ねぇ、美優。ふと思ったんだけど、私たち、こうして日帰りで遠出するのもいいけど、思い切って一泊の温泉旅行とか、行ってみない?美優の昇進祝いも兼ねて?」
美優は彩花の突然の提案に驚く。しかし、すぐに笑顔を彩花に差し伸べる。
上村美優: 「温泉旅行?… いいね、彩花! それ、すごくいい! 毎日制服でピリピリしてるから、たまには浴衣でゆっくり過ごしたいね。」
橋本彩花: 「でしょ? そうと決まれば、どうやって行くか考えなきゃ。車で行って、途中で美味しいご当地グルメを楽しむのもいいけど、電車で、周りの目を気にせず二人で駅弁を食べながら行くのも、なんか情緒があって素敵じゃない?」
上村美優: 「うーん、悩むな。車だと、彩花の好きな温泉旅館を遠くまで探せるけど、電車だと、より旅行感が増すんだよね……。でも、行き先は彩花に任せるよ。彩花が選んでくれた場所なら、どこでも楽しいに決まってる。」
橋本彩花: 「えへへ、ありがとう、美優。じゃあ、私がとっておきの場所を探しておくね! 絶景の露天風呂があるところがいいな……!」
上村美優: (少し声を落として)「……でも、彩花。私たち二人、ちゃんと非番を合わせられるかな? 最近、署も忙しいし、私が巡査長になってしまうことで、急な呼び出しが増えたら……」
橋本彩花: 「あ……そうだよね。そこが一番の難関だ。連休はまず無理だろうし、連続した非番を申請するのは、ちょっと気が引けるけど……」
上村美優: 「でも、諦めないよ。上司に事情は話せないけど、どうにか『家族の用事』とか都合をつけて、上手く申請を出してみよう。彩花も、タイミングを見て、頼んでみてくれない?」
橋本彩花: 「うん! もちろん! 『必ず行く』って決めちゃえば、きっとスケジュールも動かせるよ。よーし! 私も明日から、勤務調整の表を穴が開くほどチェックする!」
(二人は目配せをして、嬉しそうに笑い合う。橋本はつないだ上村の手に頬を寄せた。)
橋本彩花: 「ねぇ、美優。こうして『いつか行く旅行の話』をしてるだけで、なんだかすごく幸せ…。まだ何も決まってないのに、もうウキウキしてる。」
上村美優: 「本当にね。ただの帰り道が、急に夢と希望に満ちた道になったみたいだ。私たちの秘密の楽しみが増えたね、彩花。……このワクワクする気持ちをバネに、また明日から頑張れそうだ。」
橋本彩花: 「うん! 温泉まで、少しの辛抱だよ、美優!」
(二人は繋いだ手に力を込め、次の非番の楽しみを胸に、静かに車を走らせる。)




