聖域の静かな慟哭
(恩師の肯定という、あまりにも大きな安堵と喜びに包まれた美優と彩花は、普段以上に強く抱きしめ合い、涙を流していた。)
その瞬間、二人の頭をよぎったのは、「ここでは大声を出せない」という、本能的な規律だった。この喜びの感情は、あまりに強く、高揚して大声で泣いてしまうと、間違いなく壁の薄い周りの部屋に聞こえてしまい、要らぬ心配や、疑惑を持たれてしまう。二人の愛の聖域を、再び危険にさらすわけにはいかない。
それでも、こみ上げてくる感情は抑えきれない。
二人は、抱擁したまま、お互いの胸の中で声を殺し合いながら泣き続けていた。
美優は、彩花の肩に顔を押し付け、震える息だけで嗚咽を飲み込んだ。
彩花は、美優の制服ではない柔らかなスウェットの背中を、強く叩くように抱きしめ、自分の喉の奥で、『ひっ、ひっ』という小さな音さえ出さないよう、必死に感情を押し込めた。
涙は、止めどなく溢れ、互いの部屋着を濡らしていく。
(こんなに泣いたのは、あの伊豆の温泉以来かもしれない――。)
二人の抱擁は、ただの愛情表現ではなく、恩師から公認された愛の重み、そして「もう怖がらなくていい」という安堵の静かな慟哭だった。二人は、誰にも知られることなく、この特別な夜の感情を、互いの体温と涙の中だけで共有し続けた。




