言葉を超える抱擁
加藤警部補との談話室での出来事から二日後。週に一度の「勉強会」の日を迎えた。
この二日間は、美優と彩花にとって、非常に長く感じていた。
二人は、いつものように署内などで通常の勤務を務めていた。・・・いや、務めるようにしていた。なぜなら、この二日間ばかりは、少しでも気が緩むと、恩師の「責めないよ」「微笑ましいよ」「お互いに支え合え」という温かい言葉を思い出してしまい、公の場で泣きそうになるから、であった。制服の硬さが、崩壊しそうな感情を支える唯一の盾だった。
そして、約束の土曜の夜。
美優は、いつものように「勉強会」と称して、彩花の部屋を訪れた。
扉が開き、美優が部屋に入り、ドアを閉める。
「・・・」
お互い顔を見つめ合わせて、沈黙をしていた。その沈黙は、この二日間、公務の中で必死に押し殺してきた感情の重さを物語っていた。
美優の瞳も、彩花の瞳も、既に潤んでいた。言葉にする前に、感情が溢れ出す。
二人は、我慢していた涙を流しながら、一歩も躊躇せず、まっすぐ相手に向かって駆け寄り、普段以上に、強く、深く抱きしめあった。
彩花: (嗚咽を堪えきれず、美優の肩に顔を埋め)
「美優……っ、教官の言葉が……教官の言葉が、本当に、本当に、心に響きました……!」
美優: (彩花を抱きしめる腕に力を込め、震える声で)
「ああ、彩花。あの温かい眼差し……私たちは、許されたんだ。私たちの愛は、間違っていなかった……!」
涙は、これまでの秘密の重圧と、恩師からの肯定という、最高の安堵が混ざり合ったものだった。
その抱擁は、いつもの愛の抱擁とは違った。それは、「これで私たちは、胸を張って、この愛を守り抜ける」という、新たな決意と、深い感謝を共有し合う、二人にとって最高の解放の儀式であった。




