制服の上の静かな涙
・・・加藤警部補からの、温かい肯定の言葉を受け、上村巡査長と橋本巡査は、警察学校を後にした。
談話室を出る瞬間は、いつもの「上村巡査長」「橋本巡査」の姿に戻っていた。顔は引き締め、姿勢は正し、公的な挨拶を交わす。二人の秘密は、再び制服の下へと押し込められた。
しかし、業務車両に乗り込み、美優がハンドルを握り、車が静かに走り出した瞬間、その緊張は一気に緩んだ。
加藤警部補に「バレないようにな」と釘を刺された以上、車内で声を上げて泣くことはできない。しかし、二人の心は、恩師の「責めないよ」「微笑ましいよ」「お互いに支え合え」という言葉で満たされ、激しく揺さぶられていた。
運転席の美優は、前方を見据える真面目な顔のまま、そっと目頭に力を入れた。堰を切らないように、感情を堪えている。
助手席の彩花もまた、窓の外の景色を眺めているふりをしながら、下唇を噛みしめ、涙をこぼさないように必死だった。
加藤警部補の言葉は、この数ヶ月、二人が背負ってきた孤独と不安を、一瞬で溶かしてしまうほど強力だった。
あの指導員からの評価を受けた際と同じように、美優のシフトレバーに置かれた手の上に、彩花の手がそっと重ねられた。
今回は、数秒で離す必要はなかった。二人の手が触れ合っているその瞬間が、「教官が味方になってくれた」という、確かな安堵と感謝を共有する、唯一の手段だったからだ。
美優: (極めて小さな声で)「……大丈夫、私たちは、間違ってなかった。」
彩花: (同じく、震える声で)「はい、美優。この愛を、胸を張って守っていけます。」
制服の上の静かな接触と、言葉にならない深い感情の交流。二人は、加藤警部補からの温かい言葉という、新たな大きな支えを得て、涙をこぼさないように、しかし心は解放された状態で、帰路についていた。




