核心
(加藤警部補の「上村の周りにはいつも橋本がいた」という言葉に、緊張が高まる美優と彩花。二人が言葉を返そうとした、その次の瞬間。)
加藤警部補は、穏やかな表情を崩すことなく、しかし、刑事として一線を走ってきた鋭い洞察力で、核心を射抜く言葉を二人へと言い放った。
加藤警部補: 「上村、橋本。お前達、お互いに恋愛感情持っているだろう? 付き合っているのか?」
談話室の静寂を切り裂く、そのストレートな問いかけに、美優と彩花は、一瞬にして全身の血の気が引くのを感じた。
顔を赤らめ、驚愕と、すべてを見抜かれたことへの恐怖で、口を開くこともできない。
気づいていたのだ。 恩師の加藤警部補は、二人の関係を。
加藤警部補も警官だ。しかも教官になる前は30年以上にわたって刑事として一線を走り、何十人も自供させてきた経験を持っている。二人の制服の下に隠された、あの切実な愛情と、公務中の連携の中に垣間見える密やかな絆を見抜けないわけがない。
美優と彩花は、懸命に言葉を返そうと口を開く。
しかし、加藤警部補は躊躇無く、そして、これまでにないほど優しい眼差しを二人へ向け、言葉を続けた。
加藤警部補: 「別に二人を責めるわけではないよ。同性同士だから、警官同士だから、階級が違うから、といって付き合ってはいけないなんて、私はこれっぽっちも思っていない。」
その言葉は、二人がこれまで最も恐れ、最も戦ってきた「規律」と「世間」の壁を、いとも簡単に打ち砕いていくようだった。
加藤警部補: 「警察学校の卒業生や在校生だって、人間だ。そんな感情や恋愛、付き合いをしてはいけないなんて言えるわけないんだよ。私の前では、もうそんなに警戒しなくていい。」
(二人は、息を飲む。美優の目には再び涙が滲み、彩花は言葉を失いながら、美優の手をぎゅっと握りたがっている。)
加藤警部補: 「……良いじゃないか、上村、橋本、良い関係じゃないか。見ていて微笑ましくなるよ。お前たちが、あの頃と変わらず、お互いを支え合って、真面目に職務に励んでいるのが、私には一番よく分かる。」
それは、二人の秘密の関係が始まって以来、初めて、他人から肯定された瞬間だった。
二人が愛を育むことが、誰にも咎められないどころか、「微笑ましい」と受け入れられた事実に、美優と彩花は、ただただ感極まるしかなかった。




