「増える職務」
・・・そんなある日、署内での辞令により、二人の関係に、予期せぬ変化が訪れた。
上村巡査長が時々出向いて指導を行っていた警察学校の剣道指導員に急遽欠員が生じたのだ。
適任者の選考が進む中、美優は、迷うことなく橋本巡査を推薦した。橋本の剣道の腕前、後輩に対する面倒見の良さ、そして何よりも職務に対する真摯さは、指導員として申し分なかった。
数日後、橋本巡査に正式に辞令が下る。
これにより、二人は警察学校での剣道指導の際や、往復の車中などで、職務上で顔を合わせ、言葉を交わす機会が飛躍的に増えることとなった。
美優: (署内の廊下で辞令を受けた彩花とすれ違い、冷静な巡査長の表情で)
「橋本巡査、剣道指導員、おめでとう。君の真面目さに期待している。」
彩花: (真面目な巡査の表情で)
「ありがとうございます、上村巡査長。精一杯務めさせていただきます。」
その公的なやり取りの直後、彩花はそっと美優にしか聞こえない小声で囁いた。
彩花: 「美優……! 職務で美優と会えるなんて、嬉しすぎて、また頑張れます!」
美優: (内面で喜びを噛み締めながら、表情は崩さず)
「ああ。だが、気を抜くなよ。職務上の接触は、一層、厳しく監視されるからな。これも、私たちへの『愛の試練』だと思って乗り越えよう。」
「職務」が二人の愛を制限する壁であったはずが、美優の推薦により、今度は「職務」が二人の密やかな接触の機会を生み出すこととなった。
二人は、この新たな環境を、お互いへの愛をより強く、より賢く守るための機会だと捉え、再び真面目な覚悟を新たにするのであった。




