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葛藤の上に花は咲く  作者: 優月


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息抜き

美優と彩花にとって、週に一度の「夜の勉強会」は、単なる愛の再確認に留まらなかった。

それは、寮内で行われる、最も秘密で、最も安らぎに満ちた定期的な室内デートであり、「女性警察官」という重々しい責務から解放される、唯一の息抜きの瞬間であった。


土曜の夜、扉を閉めた彩花の部屋は、外の廊下の喧騒や、署内の張り詰めた空気とは無縁の、完璧な聖域と化す。


部屋着のスウェット姿になり、互いの胸元の階級を示す小さな刺繍を無視し合う瞬間。それが、「上村巡査長と橋本巡査」の終業を意味していた。


二人は、まず抱き合い、一週間分の『愛の不満』と『仕事の重圧』を互いの体温で溶かし合う。その後は、水族館の後のファミレスのように、ゆったりとした時間を過ごす。


彩花の部屋には、美優が好みそうな渋いコーヒー豆と、彩花が好きな甘い紅茶が常備されていた。お互いが選んだカップで飲み物を手にし、肩を寄せ合いながら、二人は「あのね、今週ね」と、溜め込んでいた他愛もない話をする。

それは、署内では絶対に口にできない、同期や上官に対する正直な評価だったり、街中で見た可愛い猫の話だったり、次の非番でどこへ行きたいかという小さな夢の話だったりした。


美優にとって、この時間は、「真面目であること」を義務付けられた自己から解放される瞬間だった。

彩花の前でなら、疲れた顔を見せても、涙を流しても、「巡査長失格」と咎められることはない。彩花の膝に頭を乗せ、目を閉じる。その温もりが、彼女の張り詰めた神経を優しく弛緩させていく。


彩花にとって、 この時間は、「優しさと笑顔」を貼り付けた対応から解放される瞬間だった。

美優に抱きしめられ、「よく頑張った」と労いの言葉をかけられるたびに、一週間分の緊張が溶け、明日からの業務を乗り切るための「生気」が充電されていくのを感じた。


週に一度、たった数時間の「勉強会」。

…それは、真面目すぎる二人が、この厳しい日常を、恋人として、人間として、健康的に生き抜くため、絶対に必要な、愛のサプリメントとなっていた。

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