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葛藤の上に花は咲く  作者: 優月


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愛を燃料に

・・・翌日からも、上村美優巡査長と橋本彩花巡査の勤務は、容赦なく多忙を極めた。


立て続けに発生する事件、増え続ける書類仕事、そして住民からの様々な要請。一瞬の気の緩みも許されない現場は、二人の精神と肉体を常に限界まで追い詰めていた。


署内で二人が顔を合わせるのは、あくまで「巡査長」と「巡査」としての公的な場に限られる。視線が交われば、昨夜の「勉強会」の記憶が脳裏をよぎるが、すぐにプロの顔に戻る。



しかし、もう以前のような、「愛する人に会えない」という絶望的な孤独感は、二人にはなかった。


週末の「夜の勉強会」という、確かな約束が、二人の心の中心に、揺るぎない灯火として存在していたからだ。


上村美優は、 責任の重圧からくる疲労でデスクに伏しそうになるたび、彩花の部屋でのあの静かな抱擁を思い出す。


(彩花の柔らかな腕、安心感のある体温、そして「大丈夫だよ、美優」という優しい声……)

…その記憶が、美優の「巡査長としての責務」を再び奮い立たせる。夜遅くまで続く書類仕事も、次の「勉強会」で彩花に「今週も頑張ったね」と労ってもらうためだと思えば、不思議と乗り切れた。彼女にとって「勉強会」は、精神的な燃料補給の場となっていた。


橋本彩花は、 署内を駆け回り、多くの市民と接する中で、理不尽な言葉や心ない態度に傷つくことも少なくなかった。


(美優が裏返して大切にしている旅行の写真、そして、自分の部屋の壁に飾られた警察学校の卒業写真に写る、あの頼もしい美優の姿……)

…その光景が、彩花の「警察官としての誇り」を再確認させる。そして、次の「勉強会」で美優に「今週あったこと、全部聞いてほしい」と語り合うことを想像するだけで、どんな困難も乗り越えられる気がした。彼女にとって「勉強会」は、心のデトックスの場となっていた。



一週間に一度、土曜の夜。美優は、誰にも怪しまれない時間を見計らい、彩花の部屋を訪れる。


「勉強会」と称されたその時間は、寮の部屋という場所ではあるが、二人にとっては「あの伊豆の離れ」と寸分違わぬ、二人の愛の聖域だった。


そこでは、階級も、職務も、世間の目も、すべてが一時停止する。


二人はそこで、静かに抱き合い、言葉を交わし、互いの存在を確かめ合う。時に涙を流し、時に甘い言葉を囁き合い、また、時には黙って寄り添い、次の一週間を生き抜くための「愛の燃料補給」をするのだ。


「夜の勉強会」という、秘密の約束。

それが、真面目に職務を全うする二人にとって、厳しい日常を生き抜くための、最も大切な支えとなっていた。

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