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葛藤の上に花は咲く  作者: 優月


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裏返された写真

(彩花に強く抱きしめ返され、美優は少し落ち着きを取り戻した。)


美優: (絞り出すような声で)「……ごめん、せっかくの2人で会える機会なのに。こんな、情けない姿を見せてしまって。」


彩花: (そっと美優の涙を拭い、優しい声で)「大丈夫だよ、美優。私は、この部屋では美優のすべてを受け入れると決めています。巡査長でいる時間が長かったんだから、ここでくらい、全部出していいんだよ。」


美優は、その言葉に甘え、深く息を吐いた。涙を拭い、気を紛らわせるように、初めて訪れる彩花の部屋を見渡した。


部屋は、署内の無機質な雰囲気とは対照的に、穏やかな色合いでまとめられた、普通の大人の女性らしい小綺麗な部屋模様だった。几帳面に整頓された本棚や、趣味の良い小さな観葉植物。彩花の真面目さと、優しい感性が滲み出ている。


ただ一つ、少し違うのは、壁に飾られた写真と寄せ書きだった。


美優の視線は、壁に釘付けになった。そこには、警察学校卒業式の集合写真が掲げられ、その隣には、教官からの寄せ書きが飾られている。写真には、同じ加藤警部補の教場同士だった、美優と彩花が、緊張した面持ちで写っていた。

初々しい、そして厳しい規律の中にいた、二人の始まりの姿だ。


美優: 「ああ、この写真……懐かしいな。あの頃の私たちは、まさか今、こんな関係になっているなんて、夢にも思わなかっただろうね。」


彩花: 「ふふっ。あの頃の美優は、私にとって『手の届かない尊敬する同級生』でしたから。」


美優が視線を棚へと移した、そのとき。


棚の上に、額縁が裏返されている、一つの写真があるのに気づいた。他のものは全て表を向いているのに、それだけが裏返しだ。


美優は、無意識に手を伸ばし、その裏返しの額縁に触れた。


美優: 「彩花、これは……?」


彩花は、一瞬顔を赤くしたが、すぐに諦めたように言った。


彩花: 「ああ、それ……。」


美優がその額縁を手に取り、そっと表に返した。


そこに写っていたのは、あの伊豆温泉旅行の時、浴衣姿で笑い合い、肩を寄せ合っている二人の写真だった。旅館の部屋の縁側で、セルフタイマで撮った、二人だけの「非番の真実」の記憶。


彩花: 「恥ずかしいから、普段は裏返しているんです。でも、美優が来る日だけは、ひっそり表にして、美優の部屋だと思って眺めていました……。」


美優は、写真に写る自分たちの屈託のない笑顔と、その写真が彩花の部屋で大切にされている事実に、再び胸が熱くなるのを感じた。


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