正直な「ふたり」
上村美優巡査 と 橋本彩花巡査。
二人は簡単に言ってしまうと同性愛者・・・だけど、その本当の関係は、素直で優しく、お互いを思い、真面目に付き合っている、・・・そういう関係だ。
女子寮では、少し離れた部屋に住んでいる二人。それゆえ、二人がこの部屋で手をつなぎ、時には抱きしめあって、喜怒哀楽いろいろな話をするこの時が至極な時間となっていた---
(涙を流し、抱擁し合う2人。上村は橋本の胸から顔を上げ、涙を拭っている。橋本は優しく上村の頬に触れている。二人は再びソファに座り直し、しっかりと手をつなぎ合っている。)
上村美優: 「……ごめんね、彩花。制服、濡らしちゃったね。」
橋本彩花: 「気にしないで。美優が、頑張り屋の皮を一枚脱いでくれるこの瞬間は、私だけの特権でしょ。優秀な巡査長の弱みを知ってるのは、私だけで十分だよ。」
上村美優: (微笑んで)「ありがとう、彩花。本当に、この部屋と、彩花の存在に救われてる。女子寮じゃ、やっぱり壁も薄いし、私たちがこうして話せる場所なんて、ここしかないものね。毎日、この時間が至極に感じるよ。」
橋本彩花: 「私もだよ。今日はどんな理不尽な市民に怒鳴られたとか、あの交通違反の書類が山積みでどうしようもないとか……制服を着ている間は我慢しなきゃいけない『喜怒哀楽』を、ここで美優と分かち合える。それが、私が警察官を続けられる秘訣なんだ。」
上村美優: 「分かる。あぁ、そうそう、彩花。昨日の非番、やっぱりランニングに行ったんだね? 私、自室の窓から彩花がジョギングウェアで出ていくのを見たよ。」
橋本彩花: 「うん。美優も非番なのに残務処理してたでしょ?美優の部屋の明かり、遅くまでついてた。だから私は、美優がいない間にこそ、思いっきりストレス発散しなきゃって思って。走り終わった後、こっそり買ってあった大福、食べちゃった。カロリーは明日美優に付き合ってもらって消費するつもり。」
上村美優: 「もう、彩花ったら! でも、彩花が笑って、ちゃんとリフレッシュできてるなら私も嬉しい。私は非番も、ついつい道場の先生のところに行ってしまうから、たまには彩花みたいに思い切って羽を伸ばすのも大切かもしれないね。」
橋本彩花:「美優は真面目すぎだよ。でも、そこが美優の良いところ。……ね、美優。美優は巡査長に昇進して、この一年でまた一段と遠い人になってしまった気がしてたけど、こうして泣いたり、私を頼ってくれたりするのを見ると、私たち二人の関係は何も変わってないんだなって安心する。」
上村美優: 「変わるわけないよ。立場が上になっても、私が愛しているのは、彩花だけだもの。仕事では優秀な警察官であろうと努めるけれど、彩花と二人きりの時は、ただの『美優』でいさせてほしい。……私の、一番大切な人。」
(上村はつないだ手を持ち上げ、橋本の手に口づけをする。橋本は上村を見つめ、静かに微笑む。)
橋本彩花: 「うん。ずっと、私が美優の『彩花』でいるから。さあ、今日はもう制服のことは忘れよう。明日まで、この温もりをチャージしておこうね。」
(二人は改めて抱き合い、お互いの存在の大きさを確かめ合っていた。)




