食事と解毒
・・・どのくらい時間が経過したのだろう。
部屋に備え付けの内線が静かに鳴り、夕食の時間が訪れたことを知らせた。
美優: (彩花を優しく揺り起こしながら)
「彩花、もう夕食の時間だ。膝枕での休息はこれで終わり。また夜、いくらでも甘やかすから。」
彩花: (寝ぼけまなこで)
「んん……美優の膝……最高でした……。はい、行きましょう!」
通された個室の食事処。そこには、伊豆の旬の食材が並んでいた。二人は席に着くと、献立を眺め、自然と顔を見合わせた。
美優: 「どうする、彩花。今日は少しだけ、酒で憂さを晴らすか?」
彩花: 「いえ、結構です、美優。私たち、お酒を飲んで陽気になるより、二人でじっくり話して、心を解毒する方が得意でしょう? 今日は、この美しい料理と、美優との会話で十分酔えますから。」
美優: 「さすが彩花だ。私の最高の相棒は、やはり『真面目な酒飲み』にはなれないようだな。」
結局、お酒は頼まず、二人はひたすら料理に集中した。新鮮な刺身、地元の野菜を使った煮物、そして焼き魚。一切の雑念なく、その一品一品を味わう。
「これ、本当に美味しい」「この出汁は一体どうなっているんだ」
と、思わず舌打ちをするばかりで、その集中力はまるで、難事件の現場検証に臨むかのようだった。酒に頼る必要のない、純粋な食事の歓喜と、その場を共有する愛する人への満足感で、二人の心は満たされていった。
個室での夕食を終え、部屋に戻ると、仲居の仕事は既に終わっていた。
広縁に続く座卓は脇に寄せられ、代わりに一組の布団が並べて敷かれていた。
二人が、今夜を共に過ごすための、たった一つの、温かい寝床だ。
彩花: (その布団を見て、再び顔を赤くし)
「あ……布団が引かれている……。」
美優: (その光景に視線を注ぎながら、強い意志を込めて)
「ああ。だが、まだ寝るには早い。彩花、寝るよりも先ずは、私たちの三つ目の誓いを実行しよう。」
美優が言葉にするまでもなく、彩花の瞳も、同じ目的を捉えていた。




