正直な「あなた」
橋本彩花: 「ねぇ美優、この間、子供たちに交通安全教室をした時のこと、覚えてる?あの時、美優が子供たちに『困ったことがあったら、いつでもお巡りさんを頼ってね』って話してた顔、すごく優しかったよ。私も、そんな風に、誰かの安心になれる警察官でありたいって、改めて思ったんだ。」
上村美優: 「彩花……。ありがとう。彩花も、いつも優しい笑顔で、地域の人たちと接してる。彩花みたいな警察官がいるから、街の人たちも安心して暮らせるんだと思う。……あ、そういえば、今週末、久しぶりに道場の先生に顔出しに行かない?二人で稽古つけに行こうよ。」
橋本彩花: 「いいね!行こう行こう!たまには竹刀握って、思いっきり汗を流したいな。美優との稽古も、楽しみにしてるよ。」
上村美優: 「よし!じゃあ、それまでには、この疲労を回復させないとね。彩花、これからも色々と大変なことはあるだろうけど、二人で一緒に乗り越えていこうね。」
橋本彩花: 「もちろん。ずっと一緒だよ、美優。」
(二人は微笑み合い、お互いの手の温もりを感じながら、静かに夕日を眺めていた。誰にも邪魔されずに…。
そんな何気ない話をしている中で、ふと上村の顔が曇り、瞳に涙が浮かび始める。橋本はそれに気づき、そっと上村の肩に手を置く。)
橋本彩花: 「美優……どうしたの?急に、顔色が悪くなったよ。何か、辛いことでも思い出した?」
上村美優:(目を伏せて、震える声で)「ううん、何でもない……。ただ、少し、あの時のことが頭をよぎってしまって……。あの、私がまだ新人だった頃に、初めて立ち会った、あの凄惨な現場……。どうしても、あの時の被害者の方の顔が、目に焼き付いて離れないの……。私に、もっと何かできることがあったんじゃないかって、今でも考えてしまう……。」
(上村の目から、一筋の涙がこぼれ落ちる。橋本は上村の手に自分の手を重ね、優しく握る。)
橋本彩花: 「美優……。もう、大丈夫だよ。あの時、美優はできる限りのことをしたんだ。私も現場に駆けつけたから分かる。あの状況で、美優がどれだけ冷静に、そして懸命に動いていたか。美優は、本当に頑張っていたよ。」
上村美優: (首を振りながら)「でも、私には、まだ、足りないものが多すぎて……。もっと強くならなきゃいけないのに、時々、こうして弱い自分が出てきてしまう。こんな私じゃ、巡査長としても、彩花の隣に立つ人間としても……。」
(上村はこらえきれずに嗚咽を漏らし始める。橋本は上村を優しく抱き寄せ、その頭を自分の胸に引き寄せる。)
橋本彩花: 「美優、大丈夫。美優は、もう十分強いよ。でも、強さだけが警察官じゃない。美優が人の痛みを自分のことのように感じられる、その優しさこそが、美優の本当の強さなんだ。泣きたい時は、こうして私がいるんだから、遠慮なく泣いていいんだよ。」
(橋本の温かい言葉と温もりに、上村は堰を切ったように泣き崩れ、橋本の胸の中で声を上げて泣き始める。)
上村美優: 「うっ……ううっ……彩花……、ごめん……。私……私っ……」
橋本彩花: (上村の頭を優しく撫でながら)「うん、分かってるよ。たくさん泣いて、全部出しちゃえばいい。美優は一人じゃない。私がずっと、ここにいるからね。」
(橋本は何も言わず、ただただ上村を強く抱きしめ続ける。夕日が二人の姿を優しく包み込んでいた。)




