「したいこと」
美優: 「よし。『キスより話!』の原則に戻ろう。彩花。ここで、お互い素直にならなきゃ、このコンパートメントに鍵をかけた意味がないだろう。」
彩花: 「そうですね、美優。私たち、日頃は『本音』を制服の中に隠しすぎですもんね。」
美優: 「ああ。だから、旅館に着いてから戸惑わないように、ここで『宿でしたいこと』を、素直な気持ちで3つずつ言い合おう。もちろん、『美優』と『彩花』として、だ。」
彩花: 「っ……! 3つですか。か、かなり真面目な『自己開示』ですね。…
…分かりました。正直に言います。」
(彩花は一度大きく息を吸い込み、美優の目を見つめた。)
彩花: 「では、私から言います。旅館で私が美優としたいこと、
・・・
一つ目。露天風呂で、背中を流し合いたい。署のシャワー室ではできない、ゆっくりとした時間を。」
美優: (目を細めて優しく頷く)「うん。それは私もしたい。」
彩花: 「二つ目。夕食後、浴衣姿で美優の膝枕で眠りたい。疲労が溜まっている美優に、私が寄りかからせてほしいんです。」
美優: (美優の頬が緩む)「それは私には『極上のご褒美』だ。受け入れよう。」
彩花: 「そして三つ目…
(恥ずかしそうに、でも真剣に)
…誰もいない離れの部屋で、抱きしめ合いながら、私たちが出会ってからのすべての気持ちを、一晩中、言葉にし合いたい。私たちが、どれだけ真面目に、そして深く愛し合ってきたかを、確認し合いたいです…」
美優: 「彩花……! 『抱きしめ合いながら、すべての気持ちを言葉にする』。私もそれを一番望んでいた。ありがとう、彩花。今ので、私の『3つのしたいこと』の半分は、もう満たされてしまったよ。」
彩花: 「ふふっ。じゃあ、残りの半分、美優の番ですよ。美優が、旅館で私としたいことは何ですか?」
美優: (美優は彩花の手を握り返し、熱のこもった眼差しで告げる)
「では、私の3つだ。
一つ目。彩花が選んでくれた浴衣姿で、お互いの写真を撮りたい。私たち二人だけの、誰にも見せない『非番の思い出』を残したい。」
彩花: 「わあ、美優が写真なんて、珍しい! 嬉しい!」
美優: 「二つ目。露天風呂で温まった後、肌を寄せ合って、お互いの体に残った仕事の痕、剣道の稽古でできたアザや、硬くなった手のひらを、ただ優しく撫でてあげたい。お互いの頑張りをねぎらいたいんだ。」
彩花: (感動で胸がいっぱいになる)
「美優……っ、それが一番、心に沁みるかもしれない……。」
美優:「そして三つ目。…これは彩花の三つ目と少し似ているかもしれないが…。私たちはいつも、『真面目でなければ』という戒めの中で生きてきた。だから、あの離れの部屋で、すべての制約から解放された、
ただの『女性』として、『恋人』として、彩花を心ゆくまで愛したい。
心も体も、深く、強く、結び合いたい…。」
(美優の直球の告白に、彩花は感極まった表情で頷いた。)
彩花: 「美優……。私も、すべてを美優に預けたい。私たちにとって、この旅行は、愛を確かめ合う、大切な、真面目な旅になるね。」
(二人は深く頷き合い、その約束を胸に、外の景色には目もくれず、愛おしい会話を続けた。)




