指導
(警察学校の剣道場。
板張りの広い空間に、竹刀の打ち合う音と、気合の声が響き渡る。
上村巡査長と橋本巡査は、道着に着替え、面を装着した凛々しい姿で、訓練生たちを指導していた。)
上村美優: 「打ちが甘い! もっと腰を入れろ! 一撃に全てを込めろ!」
(上村は、訓練生一人ひとりの姿勢を厳しくチェックし、竹刀でその弱点を的確に突いていく。その剣さばきは正確で力強く、訓練生たちは畏敬の念をもって彼女の指導に耳を傾けていた。)
橋本彩花: 「はい、そこの訓練生! 打ち終わった後、残心ができていませんよ。相手への敬意、そして自分自身への反省。それが剣道の『礼』です。もう一度、しっかりと構え直して!」
(橋本は、上村とは対照的に、穏やかながらも芯の通った声で、訓練生たちの精神面を指導する。彼女の言葉は、慌ただしい打ち合いの中にも、静かな心を持つことの重要性を伝えていた。)
公私混同することなく、二人はそれぞれの持ち味を活かし、真剣に訓練生と向き合っていた。その息の合った指導は、警察学校の教官たちからも評価されるものだった。
・・・
(指導を終え、二人は制服に戻り、教官室隣の応接室で一息ついていた。
そこに、警察学校時代の教場で恩師でもある加藤警部補が温かいお茶を持って現れる。)
加藤警部補: 「上村巡査長、橋本巡査、今日は本当にご苦労様でした。おかげで訓練生たちも、大いに刺激を受けたようだ。特に、橋本巡査の『残心』の指導は、今の若い者には響くものがあったでしょう。」
橋本彩花: 「加藤警部補、もったいないお言葉です。私など、まだまだ未熟で……。」
上村美優: 「いえ、警部補。橋本巡査の指導は本当に的確でした。私が『攻め』の部分を教えがちなので、橋本巡査の『道』の指導は、非常にバランスが取れていました。」
加藤警部補: 「いやいや、二人とも謙遜しなくてもいい。私が教えた生徒たちが、こうして立派に成長して、今度は下の者を指導している姿を見るのは、本当に嬉しいものだ。まるで自分の娘を見ているようだ。」
(加藤警部補の言葉に、二人は少し照れたように顔を見合わせる。)
橋本彩花: 「警部補には、警察学校時代から本当にたくさんお世話になりました。特に、私が初めて面をつけた時、嬉しくて稽古終わりに道場で一人で素振りをしていたら、『彩花、そこまで!頑張りすぎは怪我の元だぞ』って、温かいお茶を持ってきてくださったこと、今でも覚えています。」
上村美優: 「私は、警部補に『お前は真っ直ぐすぎる。時には柔軟さも必要だ』と言われた一言が、今でも心に残っています。あの頃は意味が分からなかったのですが、巡査長になって、色々な人間関係の中で、その言葉の重みを痛感しています。」
加藤警部補:「ははは、私も昔は若かったからな。でも、二人とも、本当に素直で真面目だった。だからこそ、こうして立派に警察官として、そして指導者として活躍できているんだ。……そういえば、二人とも、非番はうまく取れているのか?たまには、ゆっくり休んで、美味しいものでも食べに行くんだぞ。」
(加藤警部補の温かい言葉に、上村と橋本は再び目配せをする。
・・・非番で温泉旅行に行く約束を胸に秘めながら。)
上村美優: 「はい、警部補。ありがとうございます。何とか都合をつけて、ゆっくりリフレッシュするつもりです。」
橋本彩花: 「はい! 巡査長と二人で、美味しいものを食べに行って、しっかりと英気を養ってきます!」
(三人の笑い声が教官室に響く。恩師との温かい交流は、二人の絆をさらに深める、特別な一日となったのだった。)




