ある依頼。
・・・そんなある日。
上村巡査長が警察学校の剣道指導補助の際、指導者が一人足りないので、臨時で誰かつれてきてほしいとの要請を受けた。
すぐさま思いついたのは、橋本巡査だった。勤務とはいえ、少しでも一緒にいることができるからだ。署内で確認をとり、上司からの命令として、ある回、二人で警察学校へ剣道指導に向かうこととなった。
指導前日、二人は署内の会議室で打ち合わせをしていた…。
会議室は二人だけ。テーブルには、指導要領の書類が広げられている。二人は制服姿で向かい合って座っているが、周囲に他の職員はいない・・・
上村美優: 「……というわけで、橋本巡査。急な要請だったけど、引き受けてくれて本当に助かった。上司にも、『剣道の精神と礼節を教えるには、橋本巡査が適任だ』と強く推薦したよ。」
橋本彩花: 「上村巡査長、ありがとうございます。まさか巡査長の直々の指名とは光栄です。巡査長のお役に立てるなら、喜んで。警察学校の道場に立つなんて、本当に久しぶりで少し緊張しますね。」
上村美優:「何を言ってるんだ。彩花の『見事な立ち居振る舞い』こそ、訓練生たちに見せるべき模範だよ。私ばかりが『攻め』ばかり教えていたら、訓練生がガチガチになってしまう。彩花には、剣道で培う『心の静けさ』、つまり剣道の『道』の部分を重点的に教えてほしいんだ。」
橋本彩花:「承知いたしました。特に『礼』と、打ち合いの後の『残心』の大切さを、丁寧に伝えたいと思います。
……
それにしても、巡査長が私を指名してくださった時、すごく嬉しかったんです。『どうにかしてでも、美優さんと一緒にいる時間を増やしたい』って、私も思っていたので。」
上村美優: 「(少し声を落として)私もだよ、彩花。指導者不足と聞いて、真っ先に彩花の顔が浮かんだ。署内勤務の合間に、休憩室で数分話すだけじゃ足りないんだ。それに、道場という私たちにとって特別な場所で、一緒に時間を過ごせるのは、何よりも……特別な機会だ。」
橋本彩花: (上村の手元にそっと触れそうになるが、すぐに引っ込める)
「そうですね。それに、私たちの『本当の関係』を誰にも気づかれずに、二人で任務を遂行できるというのも、ちょっとスリルがあって、楽しいです。」
上村美優: 「まったく、彩花は強心臓だな(笑)。でも、間違っても道場で私に『美優』なんて呼ばないようにね。私は巡査長、彩花は巡査。公私の区別は、剣道以上に厳しく、だよ。」
橋本彩花: 「もちろん。心得ています。でも、休憩時間、誰もいない道場の隅で、ちょっとだけ、今の頑張りを褒めてもらってもいいですか?……巡査長としてではなく、私だけの美優として。」
上村美優: (目を細めて、優しい笑みを浮かべる)「……その要望、検討しよう。ただし、指導は全力で。妥協は許さないからね、橋本巡査。」
橋本彩花: 「はい! 巡査長!」
(二人は目と目で通じ合い、仕事と私情が絶妙に混ざり合った空間の中で、指導の成功と、二人で過ごせる特別な一日に期待を膨らませた。)




