もう1人の同居人
「全く…昨日は酷い目にあったよプンプン!」
(かなさん、多分それ僕のセリフだな)
「病院代の振り込み今日までだからなあ、窓口が閉まらないうちにさっさと銀行に行かないと___」
ガタガタガタ!!
台所から食器棚が揺れる音がした。
「地震か!?」
「あーやくん、それならスマホが鳴るはずでしょ?」
これは、まさか……
遡ること数ヶ月前
「あーやくん、この家借りようよ!」
「えぇ、う~ん……」
「駅チカでぇ、マンションでぇ、マンションでぇ、それにぃ…でへへへ!」
「事故物件……」
首都圏でオートロック付きでマンションの最上階なのに家賃が10万円である理由。それはこの部屋は、”出る部屋“だからなのだ。
「ほらかなさん、不動産屋さんからしたら売れ残りの物件を処理できるからいいのかもしれないけれど、自分たちの生活に悪影響が出たりしたら__」
「関係ない関係ない!変なこととか超常現象が起きても科学的根拠を基にスルーすればいいじゃないの!」
その後は先述の通り。彼女の印鑑砲が炸裂し渋々…いや、喜んでこの家に住むことになった訳だ。
最初の内は、
バン!
「うわあああベランダの網戸が勝手にぃぃぃ!!」
キィィ……
「うわあああトイレのドアが勝手にぃぃぃ!!」
このように、とにかくビビりまくっていた僕たちだったが
ガタガタガタ!!
「あ、今日は食器棚かあ」
「みたいだね、あーやくん」
最近はほぼ気にすることなくスルーしている。
しかし、どれだけスルーしてもこういったことが後を絶たない。向こうも向こうでお化け屋敷のお化け役の人のように、しっかりビビってもらえるまで粘り強く音を立てたり不気味な現象を起こしているのかもしれない。それに呼応して自分たちも徹底的にスルーをする。すると向こうも……というような無限ループへと陥っている。
「かなさん、今度金縛りとかされたらどうしたらいいかな…」
隣の布団で寝ている今にも寝そうな様子のかなさんに目を向けた。
「んぇ……まあ寝たいけど寝れないときに縛って貰えるんならさ……いいんじゃね?」
(なんだよ、縛ってもらうって)
「でも金縛りって確か、ホルモンバランスとかストレスとかで睡眠の状態がおかしくなったときに起こるんじゃなかったかな……しらんけど……」
そういってかなさんは布団にくるまり寝てしまった。
(金縛りをマッサージチェアか何かと思っているような言い回しだったが、いざ本当に縛られたらなんと言うのだろうか…)
翌朝
「あーやくん聞いて聞いて!!」
そのときのかなさんはやけに騒がしかった。
(まるで散歩行く直前のワンちゃんみたいだな)
「昨晩ね、私ね、金縛りにあったの!!」
「なるほど縛ってもらえたのか」
「ほんとによぉく眠れたの、すごいよね!」
かなさんは笑顔で幸せそうに話しているが、話の内容自体は全く笑えない。
「これ、挑発してるとか思われるんじゃ__」
「ふん!やれるもんならもっと大胆にやってみろってことよね!」
(これ、大丈夫なのかなあ……)




